アンソロジー 舞台! (創元文芸文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488803117

感想・レビュー・書評

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  • 舞台をテーマにした5作の短編。
    舞台を見る人なら、いろいろとわかる!と思うことあって楽しく読めると思う。

    『ここにいるぼくら』
    2.5次元舞台に出演することになった主人公。しかし、その役はシリーズもので、彼はいわゆるキャス変だった。
    いやー、2.5のキャス変は私も経験あるからわかるなー。(見る側だよ、もちろん)演者側からの立場として読んでて面白かった。

    『宝石さがし』
    バレリーナと衣装デザイナーの話。
    舞台の衣装って、いろいろなことを考えて作られているのと同時に、演者にとってはその役になるために、舞台に立つ上ですごく大切なんだなって感じた。2人の関係性がとても素敵だった。

    『おかえり牛魔王』
    本音を我慢している派遣社員の主人公と新しくやってきた空気を読まない派遣社員。新しく来た派遣社員はアマチュア劇団で指導をしていた。
    その劇団にいる女の子がよかったなー。普段は大人しいけど舞台ではガラッと変わる感じ。演劇を通して本音で生きることの大切さを感じた。

    『ダンス・デッサン』
    役者の主人公はいつもアンサンブルで出演していた。ある日名のある役に抜擢されるが、自分でいいのかと葛藤する。
    舞台は非日常。私も舞台を見て明日からも頑張ろうっていつも思う。

    『モコさんというひと』
    舞台を見る人なら一度は経験あるんじゃないかと思う、チケット譲渡。このお話はチケット譲渡で出会ったモコさんが最近SNSで推しについて投稿しないのを不思議に思っていた主人公が、再びモコさんからチケット譲渡してもらうことになった。

    チケット譲渡って、基本はその一度きりの関係のことが多い。そんななかでモコさんのような人と出会えるって素敵だなと思った。

  • 【収録作品】近藤史恵 「ここにいるぼくら」/笹原千波 「宝石さがし」/白尾悠  「おかえり牛魔王」/雛倉さりえ「ダンス・デッサン」/乾ルカ  「モコさんというひと」

    どれも舞台に引きつけられる人たちの話で悪意を持つ人が直接的には出てこないのがよかった。
    演じるほうの覚悟も描かれていて、トップスターでないからこその葛藤と矜持がいい。トップスター側も、互いへのリスペクトと舞台への愛情が感じられる話ばかりで、これが現実ならいいのにね…… でも、舞台を見る側としては、そういう人間性を信じたいところもある。

    「ここにいるぼくら」【2.5次元×俳優】メインキャラの一人が病気で無期限療養に入ることになり、代わりに2.5次元の舞台にでることになった琴平。2.5次元を知らなかったため、“キャス変”が、いかに大きな波紋を呼ぶか、気づかず引き受けたが、いつもと勝手が違い、なかなか舞台を自分のものにできないでいた。

    「宝石さがし」【バレエダンサー×デザイナー】国際結婚し、義母の会社でデザイナーとして働く恵、その友人でバレエ教師のゆり、その娘で海外のバレエ団で挫折を経験したバレエダンサー美玖。美玖の日本での公演のため、恵が衣装をデザインすることになる。
    「おかえり牛魔王」【派遣社員×アマチュア劇団】空気を読まず、定時で颯爽と職場から消える美しい派遣社員・桐ヶ谷。派遣社員のとりまとめ役となっている岩間は彼女の事情を知る。
    「ダンス・デッサン」【ミュージカル×劇団員】劇団に所属し、日々ミュージカルの舞台に立つ瀬木。アンサンブルに満足していたが、名前のある役をすることになり、葛藤する。
    「モコさんというひと」【2.5次元×観客】2.5次元の観劇を生きがいにする真美。モコさんという人とSNSで知り合ったが、コロナ禍を経て変わってしまったように感じる。

    本筋とは関係ないが、「宝石さがし」で、美玖が選んだ曲が、ファニー・メンデルスゾーンのMelodie Op.4 No.2とあるのを見て、先日たまたまファニー・メンデルスゾーンの名前を耳にしたばかりだったので、不思議な感じを受けた。

  • 舞台やミュージカル、2.5次元舞台を
    観劇したことのある方ならきっと
    誰でも共感できるはず。

    私は舞台に立ったことはないし、
    裏方として支えたこともありません。

    ただ観客として、観劇しているだけです。
    演じる側の覚悟や裏方としての覚悟を
    描いた作品もあり、当然ながら
    相当な覚悟が必要なんだなと感じました。

    色々な舞台やミュージカルなどを
    様々な側面から実力派の作者さんが
    描いていてとても楽しめました。

    1人の観客としては、観劇の予定があるだけで
    生きていける理由になる。
    その為に、仕事を頑張ろうと思える。

    改めて、舞台というもののキラキラ感や
    躍動感を感じることが出来ました。
    観劇して感激できる、それが舞台。
    また観にいきたいなあ!

    個人的にはラストの「モコさんという人」が
    1番お気に入りです。
    私も舞台を観劇する側なので、
    感情移入をたくさんしました。

  • 2.5次元、ミュージカル、バレエ、アマチュア劇団…とった舞台演目にまつわる五編を収録したアンソロジー。2.5次元舞台に抜擢された売れない中堅役者の葛藤を描く近藤史恵の作品は若干物足りなさはあるものの、抜群の安定感と言えよう。同じ2.5次元を題材に、演者ではなくファン同士のチケット売買をミステリーチックに描く乾ルカの作品は本書の変わり種。ラストにおけるとある人物のSNS投稿に思わず涙腺が緩む。他新鋭三名の作品は文体や世界観に馴染めず、尚且つ筋運びにまどろっこしさを感じる部分もあり、個人的には今ひとつだった。

  • 舞台に関わる人間達を描いたオリジナル短編アンソロジー。2.5次元舞台に出ることになった小劇場俳優、服飾デザイナーと人生に迷うバレリーナ、派遣仕事の傍らアマチュア劇団の指導に関わる女優、ミュージカル劇団でアンサンブルに甘んじるダンサー、2.5次元舞台ファン同士、とそれぞれ丁寧に舞台制作現場や人間関係が描かれていて、とても良いアンソロジーだった。バレリーナの話の他にもアマチュア劇団の演し物がホフマンの「くるみ割り人形」だったり、ミュージカルダンサーのダンス描写もバレエがベースで、バレエファン的にもなかなか楽しかった。

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著者プロフィール

1969年大阪府生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。1993年『凍える島』で「鮎川哲也賞」を受賞し、デビュー。2008年『サクリファイス』で、「大藪春彦賞」を受賞。「ビストロ・パ・マル」シリーズをはじめ、『おはようおかえり』『たまごの旅人』『夜の向こうの蛹たち』『ときどき旅に出るカフェ』『スーツケースの半分は』『岩窟姫』『三つの名を持つ犬』『ホテル・カイザリン』等、多数発表する。

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