資質・能力[理論編] (国研ライブラリー)

制作 : 国立教育政策研究所 
  • 東洋館出版社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784491031804

感想・レビュー・書評

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  • 何度も読み返したいと思える1冊。
    図書館で借りましたが、購入しました。

  • 言葉が踊る能力論をきっちり整理。
    良書!

  •  現在の教育界のトレンドは生徒による学びということである。ただし、実際にやってみるとかなり難しい。理想的な展開にはなかなかならない。そこでつい教員が補助線をいれるのだが、それを引きすぎてしまう。
     本書はそういう失敗を解決することはできないが、すくなくとも教員がどのような見通しをもって教室に臨むべきかを考えさせてくれる。理論編と自らうたうように、基本的な方向性を示すものであって実践的なヒントには乏しい。
     それでも迷える教員たちには一種の指標は示せる。教員が全部生徒に任せるのがよいとは言っていない。どのような哲学をもって運営するのかを考えなくてはならないと思った。

  • 資質・能力を重視した教育の重要性を、これまでの研究実践を交えて理論的に説明してある。大変わかりやすい。

  • 本書は、p4「資質・能力を使って教科等の内容を学ぶ」という構造で書かれている。
    目次は以下のとおりである。
    第1章 いま、なぜ資質・能力の育成が重視されるのでしょう?(問題の所在)
    第2章 世界で始まる資質・能力教育とは?(基本概念の整理1)
    第3章 そもそも資質・能力とは何でしょうか?(基本概念の整理2)
    第4章 なぜ21世紀に求められる資質・能力を育成することが必要なのでしょう?(仮説:文献研究)
    第5章 21世紀に求められる資質・能力とは?(提言:文献研究)
    第6章 今後の課題
    ーーーーーー
     第4章では、日本の教育が従来おこなってきた「知・徳・体」は階層モデルではなく、相互に行き来することによって学びを生成する同時進行的な学びの要素であることが示される。わたしたちが学習の結果として問題解決に対して選択する方略はp98「ピアジェが考えたような段階的な方略の変化ではなく、Siegler(1996) が提唱するオーバーラッピング理論のように『重なり合う波』のような形で」変化を起こすからである。これは p99「何かを覚えたら、直ちにそれを活用できるようになるものではない」証拠にもなる。したがって「一度できたはずのことができなかったり、徐々にできるようになったり」しながら進むプロセスを包摂した学習論が構想されなければならないことが理解できる。p166「単純な教授は、創造はもとより、現実に活用できる知識・技能の学習も保証しない」ことをふまえ、学校ではどのような教授がのぞまれているのか。
     以上を満たす学習論として、本書は教審諮問(2014)「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」で言及された「アクティブ・ラーニング」を評価するとともに、それは「単に子どもを『活動的に』するものではなく、その活動を通して学習が深まるものとなるべき」と提言する。かつて日本では「活動中心主義」と呼ばれる授業が一世を風靡した時代があったが、活動から「何を学ぶことになるのか」「学習成果で子どもが世界をどう理解できるようになるか」という視点に欠けたため、系統主義的な学習法に収斂した経緯がある。本書はその改善のために概念学習を提案する。「概念を学ぶことで他の概念も理解しやすくなり、現象の不一致や例外がすっきりと理解できるようになる」ため、深い学びが得られると考えられるためである。
     その概念自体もコンテンツとして教授するのではなく、「それを『使って』学習者自身が活動することを通じて」学習されることを勧めている。そして、知識・技能の習得をゴールにすると「できれば終わり」になりかねないため、その場で学んだことを発展的に使いつづける「到達したら次のゴールが探せる「目標創出型」のゴールを教育目標におく」ことを示唆する。
     ところで、アクティブ・ラーニングの一形態として多く活用される活動に「プロジェクト学習」がある。効用には枚挙に暇がないが、本書では事前に「定まった問題を強調的に解決する『問題解決型学習』を経験させる場合とさせない場合とで、プロジェクト学習の最終作品に質の違いが生じる」と指摘していることには知る価値があるだろう。かたや、2008年の中等審答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について」では、習得と活用・探究は「決して一つの方向で進むだけではなく、例えば、知識・技能の活用や探究がその習得を促進するなど、相互に関連し合って力を伸ばしていくものである」という指摘もあることも留意したい。
     また、学びの形態として、地域学習についての引用も以下のとおりなされている。p156「学校内外での学びのつなぎは『サービスラーニング(社会奉仕学習)』という言葉が既にあるように極めて大きな影響を学習に与えると言われてきました。特に学習成果を学校外の人々に公開したり、課題の依頼を受けたりした実践では、子供が社会的な動機付けや責任感によって授業に夢中になり、時には『休憩時間は遊ぶ』という決まりを教師が作らなければならなくなるほどでした。(CTGV, 1998)」
    第4章を総じると、これからの学校教育は生徒の概念学習をあらゆる方策で支援し、自発的な学習態度を涵養することをめざすべきであるとしているように思う。
    Cognition & Technology Group at Vanderbilt (CTGV). (1997). The jasper project: Lessons in curriculum, instruction, assessment, and professional development. Mahwah, NJ.: Laurence Erlbaum Associates.
    Sieger, S. (1996). Emerging minds: The process of change in children's thinking. New York: Oxford University Press

  • 1944円購入2018-03-09

  • 中身は読みやすく、またよくまとまっている。一般書としても良い。

  • 理論編というだけあって、教育用語の定義付けが序盤は目立つ。特に、能力と資質の使いどころについての留意は口説いくらいなされていた。そこから、生きた知識の習得(質の高い知識と書かれていた)のための必然性が、まさにアクティブラーニングだと感じる。膨大な量の研究論文。演繹、帰納といった弁証法ではなく、如何に自らの主張に根拠を持てるかというシンプルな能力育成が必要だと言うだけあって、その量は膨大だ。しかし、膨大な差し込み説明故に理解が滞る。これは俺の頭が悪いからなのか…。
    とにかく、プールに入らなきゃ泳げるようにはならない。この説明が最も正鵠を得ていると思う。知識を活用させながら覚えさせる。泳げないけど、泳がせて泳げるようにする。自分の授業はどちらかといえば、丘の上の泳法講義だったなぁ。アクティブにはほど遠く、また、それに近づくための知識も技能も、あまりにも不足している。が、泳げなくても泳がなきゃ泳げるようにはならないんだよなあ。
    わざわざ抽象を具体化してもらわなければ理解出来ないような現状に、嫌気がさす。自分の不勉強が白日の下にさらされる一冊。

  • 登録番号:01019780

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著者プロフィール

1949年6月に「教育に関する実際的,基礎的研究調査を行う機関」である「国立教育研究所」として発足、2001年には中央省庁等改革の一環として、
目的及び業務を「教育に関する政策に係る基礎的な事項の調査及び研究に関する事務」と改め、「国立教育政策研究所」として再出発しました。
組織についても、教育課程や生徒指導・進路指導に関するナショナルセンターとしての教育課程研究センター、生徒指導・進路指導研究センターの他、
社会教育実践研究センター、文教施設研究センター、幼児教育研究センターを設置してきています。
これまで本研究所では、様々な政策課題に関するプロジェクト研究、全国学力・学習状況調査、OECD/PISA・TALIS・PIAAC、IEA/TIMSS等の国際共同研究、教育課程や生徒指導・進路指導、社会教育、文教施設等に関する専門的・実証的な調査研究を展開し、政策立案の資料等として多方面で活用されてきました。
特に、国の教育課程の基準である学習指導要領の改訂に当たっては、本研究所が実施、関与する各種の調査研究活動の成果が、政策形成の基礎として活用されています。

「2022年 『「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料 高等学校 理数』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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