中村天風と植芝盛平 氣の確立

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  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (197ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492041178

感想・レビュー・書評

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  • できるということは、正しいということである。逆に言えば、正しいことならば必ず誰にでもできる。天地の理に合っているならできる。したがって、それができないということは、天地の理に合っていないということになる。

    困難にぶつかったときに、すぐに逃げて帰っては先に進めない。そのままじっと我慢していれば、やがて困難は通り過ぎる。そこには新しい関係がひらけていくことだろう。  次に、また困難にぶつかる。それを通り越すと、また次の困難……これを繰り返すからこそ、人間とは成長し、伸びていくのである。  ところがこの困難を避けてしまう人が多い。言い訳や弁解をしているうちは人間は伸びないというのは、まさにこれなのだ。  疑われても、馬鹿にされても、じっと自分が正しいと思ったことを続けていれば、いずれはわかってもらえる。それが私の一生であり人生だ。  だから、人が疑おうがどうしようが、まったく平氣である。天地の理に反することだけはしないように、自分で氣をつけていればいいのだから。

  • 藤平光一の二人の師匠である中村天風と植芝盛平についての回想録。

    師匠というものをことさら神格化することなく客観的につづった内容はとても興味深く面白かった。

  • 死ぬと尻の穴がゆるみ便が出る。だから生きている間は尻の穴を締めているのが正しい状態で、リラックスしていると自然に尻の穴は固く締まっているそうだ。これが私には納得いかない。リラックスすると尻の穴は緩むと思うのだ。しかし、これは私の思うリラックスが違うのだろう。
    天地の理がいちばん心に残った言葉だ。できるものはできる。できないものは、天地の理に反しているのだ。
    心が体を動かす。天地の理に反さずに心を育てて正しい道を歩んでいきたい。

  • 中村天風と藤平光一のつながりを知りたくて読んだ。合氣道の創始者 植芝盛平なる人物についても知る。「心が体を動かす」という心身統一の法と合氣道による氣の使い方を上手に体得し、誰にでも分かるようにしたのが、藤平光一であることを理解した。合氣道の深みを知った。

  •  中村天風と植芝盛平。著者の二人の師を軸に、著者が心身統一合氣道を確立するまでに至った道のりを自伝的に描いた本。

     著者が氣について説いた他の本も読んだことがある。それらとの違いで言えば、本書は著者の歩んできた道程が描かれており、その中に著者の教えを理解するヒントがいっぱい詰まっている。著者の氣の教えを理解する上でも本書は非常に有益といえる。

     また、本書は師弟論として読んでも興味深い。
     本書に対する感想・コメントで「中村天風に偏りすぎている」というものを見かけた。確かに、本書の中では中村天風についてはほとんど肯定的な話しか書かれていないのに対し、植芝盛平についてはかなり否定的なことも書かれている。正直「何もそこまで言わいでも…」と思うことがなかったと言えばウソになる。
     が、この愛憎半ばする書き方こそ、著者の偽らざる師・植芝盛平への思いだったと思わずにはいられない。

     著者の書きぶりを見ていると、「名選手は必ずしも名監督に非ず」という言葉が頭をよぎる。
     著者は合気道の使い手としての植芝盛平については掛け値無しに評価している。
     一方で、植芝盛平の教え方については、自らの実感にてらしても、どうしても得心がいかなっかようである。例えば、力を抜くべきなのに、力をいれさせるような教え方をしているのはあべこべではないか、と。著者が言いたかったのは「先生の今の教えは、先生ご自身の体の使い方を正確に表現したものではありません。本当はこういうことをおっしゃりたいのではないですか」ということだと思う。
     が、植芝盛平にはそれが伝わらなかったようである。「弟子は師匠に口出しすべきものではない」という価値観からすれば著者の言は不遜でしかないし、「奥義(あるいはコツ、勘所といったもの)は秘匿すべきものである」という武術家的な価値観からすれば「そんなことを得意げにぺらぺら喋るな、隠しておけ」という風に映るだろう。あるいは、合気道のとらえ方、氣や技を説明する"文法"そのものが、それこそ英語とアラビア語くらい違っていて、著者の言うことが全く理解されなかった、ということもあるかもしれない。アニメ「攻殻機動隊S.A.C」でタチコマが「人間は言語という不完全で不自由なツールを用いてしかお互いの情報を交換できない」みたいなことを言っていたが、もしかすると二人がその高度な身体実感をやりとりするのに、言語という媒体そのものがボトルネックになり、それが二人の間にコミュニケーションの齟齬を生んだのではないだろうか…不遜ながら、読んでいてそんなことを思ったりもした。

     この点、中村天風はクンバハカの説明に疑義を呈されたとき、説明を改めたとある。
     おそらく、著者にとっては目指すべき道・目標が一番大事で、師は遥かに先を進んでいたとしても究極的には同じ道・目標を目指す同志という感覚があったのではないだろうか。だとすると、著者にとっては自分の考えをきちんと受け止めてくれた中村天風の方が素晴らしい師匠、ということになる(一方で、植芝盛平を神格化する弟子達に苦言を呈しつつ、否定的な話も書いたことにも合点がいく)。

     植芝盛平について否定的な記述もあることから、植芝盛平を貶していると取るのは、私は違うように思う。師と共に同時代を生き(裏で悪口も言われたりして嫌な思いもし)た直弟子としては、ロクに知りもしないのに無批判に師を持ち上げるのが許せない、という思いも強いのではないか。これは「俺が一番師匠のことをよく知っている!」という、弟子の「師匠語り」という最大の愛情表現ではないだろうか。

     本書の話は「藤平史観」とも言うべきものだから、当然語り手が変われば同じエピソードでも違った意味づけがなされることになろう。その意味で記述の全てを無批判に受け入れることはできないが、植芝盛平や中村天風といった稀代の天才、そしてその天才の列に連なる著者について知る上で、非常に参考になる書であることは間違いない。

  • 中村天風と植芝盛平という二人の巨人の高弟であり後継者と目された著者にの回想を読むうち、自然と合気と天風の教えが頭に入る素晴らしい回想録

  • 最近、特に合気道が気になります。

    神秘のベールっちゅうか。実際のところどうなんだろうと。

    名のある格闘技関係の人が口をそろえて言うのが、塩田剛三はホンマモン。誰も塩田剛三を貶す人は(少なくとも戦闘力において)いないようです。

    その塩田先生が常に達人と紹介するのが、現在の合気道の創始者植芝盛平。

    中村天風は言うまでもなく、東郷平八郎や松下幸之助などの錚々たる日本の根幹に関わってきた人が師と崇めている超人。

    その二人に師事したのが、著者の藤平光一です。

    先述の塩田剛三と並んで、合気道の巨人。昨年なくなりました。

    なんで、この二人(中村・植芝)を並べて一冊の本にされたのか。真意はどこなんでしょうか。

    はっきり言って、完全に中村天風に偏向しているような内容です。

    植芝盛平がちょっと困った性格で、ずっと自分(藤平)の悪口を言い続けていたとか。自分が掴んだ合気道の極意は自身の研鑽によって得た(盗んだ)もので、植芝本人は、むしろ反対の理論を教え続けたとか。大本を押し付けられるのにも閉口したようです。

    で、その辺を暴露するたびに、でも、師として尊敬してます、恨んでるわけではないです、とかフォローしてるあたりがあざといというか、カワイイというか。明らかに恨み節やん。

    加えて、植芝は若いころはめっちゃ弱っちかったとか書いてます。

    あまつさえ、大師匠であり神域にあると語られる大東流合気柔術の現実的な再構築者、武田惣角さえもその実力に疑問を呈しています。どんだけぇ~。

    最後の方は自分の強さアピールもどんどんエスカレートしてくるし。ちょっと鼻白む?

    最初の方は淡々と書かれていて好感を持てます。

    戦争では最前線で隊長として、戦った。実際に怖かったことなど、本心を吐露しています。人間的です。

    別にこの方がどうこういうつもりはありません。実際に非常にわかりやすく合気道の理論などを書いてくれています。って、自分もフォローしてるかな。

    でも、これが実感なんですよね。

    あと、佐川幸義や岡本正剛あたりのことがちょっと出てきたりすると個人的には楽しかったかな。

    合気道のことがますますわからなくなる、面白い啓蒙書。

    ※あれ、これ塩田剛三のことかなと思われるような描写がさらっと出てきます。

    植芝道場に毎日通って来ていた軍事探偵の男が、戦争が激しくなるとぱったりと来なくなった、と。軍事探偵として中国に渡った塩田のこと・・・?

    (文中敬称略)

  • クンバカへの批判を認めたところがポイント@天風

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