武器としての「資本論」

著者 :
  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492212417

感想・レビュー・書評

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  • 貨幣を経由した商品交換の良いところは、後腐れのないところ!家族の間では、後腐ればかり。。。

    現代のキャッシュレスの流れは、全ての履歴が残ってしまうので、資本論に逆行!!

  • 資本主義社会における、資本の営みは剰余価値の追求であり、イノベーションの創出や生産の海外移転もそれにあたる。我々が享受する低価格の商品や、新製品の利便性は、その営みの副産物に過ぎず目的ではない。

    毎日自分を追い立てる仕事の根元に、気付かされる一冊だった。

  • これ以上無いぐらいの平易な文体で『資本論』のエッセンスを抽出した良著。『資本論』を文脈通り読み解く(そんなことが凡人にできるかはさておき)のには別の入門書を当たった方がたぶん良さそうであるものの、身近な例や時事問題にも触れながら話が進んでいき、それでいて原典もかなり引用しているのでとても勉強になった。

    新自由主義の名を借りてやってくる資本の側からの「実質的包摂」から逃れるためにはじゃあどうすればいいの、というところで話が「人間としての感性」のような情緒的なところまで下りてくるのは、この手の本ではあるあるではあるように思う。ただ労働者の側にもはやそれしか取り分が残されていないと読むならもはや薄ら寒い思いがした。(ちょうど読んだばかりのオードリー若林のエッセイに影響されてすぎてるか。。)

  • 好きなことやろうよ的な価値観はネオリベによって維持が難しくなった。まちづくりとして,共同体としてこのネオリベの文脈の中で生きつつも,その中では違った価値体系を作る,ということはそもそもいびつなことだったんだな。競争から距離をおくということでもあるし。でも,居心地はいいし,幸せ。どうやって作るんだろう。
    でもきっと,またこの価値観に回帰するんじゃないかなと思ってる。だとしたら自分は先にその中で生きていてもいいのかも。そして多分その回帰を早めるためにはネオリベの文脈の中でこの価値観の組織を作り,競争に勝つ必要がある。

    教育の商品化を止めるにはどうすればいいか?
    いかに子どもに学びたいから学校に行くと思わせるか。主体性を育むか?
    なぜ、学ぶんだろう?
    学ばなきゃいけないのか?

    今の社会がどう言う流れでできたのか,と言う必然性が理解できた。そして,歴史を見ることでではこの後どうなるのかと言うことが予測できるようになる。そう言う点でこの本はとても読む価値があったと思った。等価交換の廃棄,人間の尊厳の再建と言う点で,ローカルなコミュニティを作っていくことはとても価値があることだと思った。

  • 「生産性を高めよう」
    とする社会の流れ。

    「市場価値を高めよう」
    と声高に叫ばれるこの時代。

    資本主義の歴史を知らないまま、
    こんな受け売りの言葉を盲目的に信じていいのか?

    “商品化されていない人間の基礎価値”を歴史から見出し、自分に与えてあげる。

  • 真っ赤で扇動的な表紙とは裏腹にやさしく「資本論」について教えてくれる一冊。著者の意見も色濃く反映されているとはいえ、どちらかというと参考書に近いトーン。ポイントごとにわかりやすく、資本論の要点を学ぶことができる(たぶん)。

    「階級闘争」に賛同するしない関係なく、現代社会を考える一つ新しい視座を得ることができたので星4つ。とはいえ最後は多少駆け足な感じで、現代の経済のあり方に即した考察がもう少しあってもよかったかも。

    追記:
    ・何を「必要」とみなすか、はコロナ禍でどう変わったのか、変わっていくのか気になる
    (・八代亜紀のくだりがなぜ太字になっていたのか気になる)

  • 資本論について全く不勉強であったので、本書はポイントが非常にわかりやすかった。自分が新自由主義に知らず知らずに毒されている事を客観的に理解できた。ただこれは資本主義の流れに完全に飲み込まれているということであり、階級闘争を自分事として考える必要性に気付かされた。

    以下、気になったフレーズ:

    ウェーバーの官僚制約的支配と人格的支配:資本家は労働者に、あるいは上司は部下に命令して従わせることが出来るが、それは後者が前者を人間として尊敬しているからではない。

    ネオリベラリズムの価値観に支配されている。それはすなわち資本による労働者の魂の「包摂」が広がっているということ。


    教育の荒廃の最大の原因は教育の商品化である。


    工場法:これをしなければ資本が搾取する相手である労働者がいなくなってしまうから、この法律が定められたのだ、とマルクスは言う。働き方改革も同じようなもの。


    特別剰余価値とは、高まった生産力によって商品を廉売することによって得られる利益、イノベーションによって獲得される期限付きの剰余価値であり、ある商品の現在の社会的価値と未来の社会的価値との差異から生まれる、と定義できる。よって技術革新の目的が特別剰余価値の獲得にあるため、無駄なPDCAが繰り返され、ブルシットジョブが山積。


    フォーディズムとトヨティズム
    資本が労働者を取り込んだ体制
    相対的剰余価値の生産への労働者階級の形式的包摂が実質的包摂に近づいていく。


    かつて日本を侵略戦争に駆り立てた農村における過剰人口を吸い上げ、使い尽くした時点で、莫大な剰余価値を生んでいた労働力のプールがなくなってしまった。これこそが高度成長が終焉した本質的な理由ではなかったか。アジアでも日本と同じ事が起こり終焉を迎えるだろう。

    労使協調型で、経営側が主導して戦闘的な労組と対抗させるために作られた組合が、第二組合。これによって資本側を否定するようなラディカルな組合の力を弱体化させることに成功したが、結果として資本側は労使協調型組合の存在をむしろ積極的に認めざるを得なくなり、組合にお伺いを立てないと経営問題を決められなくなった。

  • 資本論を読み解いて見えてくる現代の階層。
    労働者の始まりを知ると見えてくる商品価値。
    結局、労働者の力がなく資産家との関係性がおかしなところまできているのが現代。
    そしてその選択肢しかないものに終わりがあるのか?が生きている間に突きつけられるだろうかと考えさせられる。
    新卒が市場価値より安いのは、何もできないという状態を生産できない人より選ぶ仕組みの結果なのだろう。

    日本の食文化の維持や発展がもしかしたら、この立場を考えるきっかけかも知れないと思えてくるしめ。
    美味しいものを食べたい。なのか、贅沢いうなの範囲が狭くなっているのか。
    気がついたら、という状態はどこまで人間でいられるか。
    感性をもって生きているかとなってくる。

    階層社会の次が社会主義を夢見つつの資本主義の完成と考えると、
    なかなか稀有な時代に生きていると本書より考えさせられる。

    自論として作るものが強い。労働者の構造から離れるしかないとはみていたが、
    今の時代は労働者も資本を持つ暮らしをの流れなので、まだまだこの構造の中で生きていくのだろうな。

    という想像がかき立てられておもしろかった。
    資本論自体は小難しいが付いてはこれる内容。
    ただフォント選びが本読みとして読みづらいかな。わかりやすくしようとして読みづらい選定に見える。

  • ●なぜ毎日窮屈な服を着てぎゅうぎゅうづめの電車に乗って会社に行かなければならないのでしょうか。資本論はこの疑問に答えてくれます。私たちが生活の中で直面する不条理や苦痛が、どんなメカニズムを通じて必然化されるのかを鮮やかに示してくれます。だからこそ「これを読まないわけにはいかない」と感じて、みんなが一生懸命資本論を読むと言う世界が訪れてほしいと思う。そこまでいけば世の中は大きく変わります。
    ●労働過程を丸ごと資本が形作ってしまった状態を、マルクスは「実質的包摂」と言う概念で捉えたわけです。
    ●様々な新自由主義改革によって、肥え太ったのは誰か。資本家の側です。反対に労働者たちは、戦後獲得してきた権利を次々と失っていきました。

  • けっこうすらすらと読めました。
    むずかしいところもあるのだけど、わかりやすい文章で、初めて知ったことや理解できたこともあって、とてもよかった。
    『資本論』はたぶん読めないけど。

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著者プロフィール

1977年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。一橋大学大学院社会学研究科総合社会科学専攻博士後期課程単位修得退学。博士(社会学)。思想史家、政治学者、京都精華大学教員。著書に『永続敗戦論─戦後日本の核心』(太田出版/講談社+α文庫)、『武器としての「資本論」』(東洋経済新報社)など。

「2022年 『撤退論 歴史のパラダイム転換にむけて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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