NHKはなぜ、反知性主義に乗っ取られたのか

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  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492223666

作品紹介・あらすじ

NHKでいま、何が起きているのか。その時、歴史は動いたのか。失われた法治を取り戻すには、どうすればよいのか。反知性主義が横行する時代を探る。

上村教授は、NHK経営委員会委員長代行として籾井勝人NHK会長のさまざまな放言に対して、圧力に屈せず「放送法に反する」と直言し続けた。
2015年2月、NHK経営委員を退任した会社法の権威が、経営委員会における籾井会長などとの論戦や出来事を「反知性主義」をキーワードに明らかにしていく。
「反知性」が支配する組織運営や意思決定の「病原」を探る歴史的証言。

同時に、法制審議会委員として経験した「会社法改正」審議や、法学部長として経験した大学改革をもとに、重要な意思決定や組織運営が、法・ルール・規範を無視し、「空気を読む」ことにだけ長けた反知性主義的ガバナンスに日本が支配されていることもNHKをめぐる動きの背景として明らかにする。

「籾井会長は経営委員会が指名したのですから、私にも経営委員の一人としての責任があることは間違いありません。(中略)本書のような書物を出版することで、問題のありかをすべてさらけ出し、NHKの今後のあり方を検討するための素材を提供することこそが、私にできる責任の取り方と考えるほかはありませんでした。」(本文より)

「私は、籾井会長の存在を許す現在の風潮、そこに見られる反知性主義的な空気にも本書で触れました。実は籾井会長問題はNHK問題だけを意味してはいないと強く感じたためです。そこでは、長年積み上げられた学問やその道の専門家の意見に敬意を払わず、報道の自由や学の独立に価値を見出さず、事あるごとに多数決を振りかざして少数意見を尊重しようとしない、きわめて反民主主義的な現在の政治状況があります。」(本文より)

感想・レビュー・書評

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  • 2017/06/13読了
    反知性主義について読む流れで。

  •  少し前に、発言がいろいろと問題になった元会長を中心に、NHKの裏側で起こっていたことが実名で書かれていて、正直面白い本だ。が、論点が多すぎて、“とっ散らかり感”が凄くて、少々読みにくいのが難点だ(編集者に何とかしてほしかった)。

     著者は「コーポレートガバナンスを専門にしていますが、形だけではだめということをつくづく知りました」と述懐しているが、サラリーマン社長の大手企業ってだいたい形式主義。「報告書に求められるから」とか、「ルールで決まっているから」とかで、何より形式を整えたがる。

     たいして本を読まないような経営者も多い(本を読むのが経営者として有能かどうかは別として)のだが、なぜか本を出したがるから不思議だ(出版社からも声がかかるせいもあるけど)。
     
     ビジネス書の世界では、プロのライターが書くことが多いので、出版が実現してしまうのだが、その手の経営者の本は、きまって説教臭い。反知性主義というより、無知性主義かな。

  • 2017/04/25 初登録

  • NHKの内部にいた著者が見た感じた、NHKのそしてNHK会長の問題について書かれた本。

    なぜNHKはNHK会長に相応しくない人を会長としてしまったのか?
    その会長を罷免する権限がありながらなぜ実施しないのか?等について書かれている。

    色々と問題はあるが、やはり選考に対する最大の問題はNHK会長を選ぶ権限がある人でも最後最後しか面談などで人となりを見れない事だと思う。
    そして面談する時には、時間的な問題で不合格にする事は出来ない事も問題だと思う。
    確かに著者の言う通り、その道で名を成した人が、わざわざ給与が下がる上に複数から段階的にふるいにかけられ、絞られていく方式の選考方法を是として受け入れるか?という点はあるが、経歴だけではわからない、その人の本質を見抜く為にはそれをしなくてはいけないと思う。

    放送法、権限や組織体制を無視した振る舞い、人を味方と敵の2つに決めつけ、一度敵と判断されればもう味方に戻る事はないという決めつけとそれに伴う行動。反対意見が出ると大声で怒鳴りつけるなど、問題点を様々指摘しているが、こんな財界の大物になっても、そんな器の小さい人がいるんだと感じた。

    この問題はNHKに限らず、国家がどんどん保守化、右傾化している事つまり安倍政権が国会軽視で政治を進めている事も一因になっていると言う、ガバナンス専門家である著者の指摘は、今度日本の保守化傾向がより一層強くなるのではないか?

    日本に限らずイギリスのEU離脱、アメリカのトランプ旋風、イスラム過激派のテロなど世界中が右傾化、保守派が進んでいるように感じる。

  • 内容はともかく、雰囲気はなんとかの遠吠えな感じでした。大手商社の副社長だったから任命したら大外れ。こんな人がのさばるのも安倍政権のせい。もう少し、感情を殺して冷静に書いて欲しいものです。
    そもそも、NHKが不偏不党という認識を私は持っていません。TBS社員の不祥事は報道するけど、NHK局員の不祥事は報道しない。まあ、TBSも同じことをしていますけど。これが現実のバランスなのかと。財源も、ゴロツキをやとってなかば恫喝同然に契約させて、「契約の自由」との整合性はどうなのでしょう。まあ、最高裁が認めてますけど。
    NHK=不偏不党で、考えなしに無条件に信じてしまうのが、一番危険な状態だと考えます。

  • やや個人的な感情が走り過ぎている感じもあるが、「少数意見を大切にする姿勢は大切」「語学ができ大企業の要職についていたことは、その人を評価するには不足」等の指摘は愉快。

  • 安倍政権は「報道の中立」ということをよく主張する。ならばNHKはどうなのか。現会長の籾井氏の問題点について書かれてある。しかしなぜこんな人が前職の三井物産で副社長までなったのであろうか。

  • 人の話を聞けない。議論ができないので建設的なコミュニケーションができない。不都合になると怒鳴りだし、理解できないのを相手のせいにして、自分の考えは変わらないと言い放つ。
    籾井会長の存在は、NHKの統治機構に大きなバグが潜んでいる事を明らかにした。著者自身がNHK経営委員として籾井氏を承認した立場だからこそ、の憂慮。私見であるが私憤ではないことは抑えた文章からひしひしと伝わる。
    上村氏が問題提起しているのはNHKだけの話ではない。「アベノミクスは歴史に責任が持てるのか?」現政権の「成長戦略」とやらは、なんぞや?と考えさせられるのだ。

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著者プロフィール

早稲田大学名誉教授

「2023年 『法と経営研究 第6号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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