東京在住のシングルの統計から探る今後の課題や社会変化の予測についてまとめられた一冊です。地域在住シングルについても全く重なるとは言えないまでもここから類推することは出来るでしょう。
子供や家族が近くにいなくて(存在そのものがない場合もあり)社会福祉的サポートも必要なくて今は周囲とのつながりが大してなくとも暮らしに困っていないシングルが、将来的に孤立して様々な困り事が増えるかもという懸念は私の身近にもリアルに体感としてあります。
(そういう身内や親戚もいる。その人たちが自分をケアラーとして今は認識してなくても将来的に自分がケアラーになる可能性が高いという危機感も私にはあります)
本書で要と思われた提言は「弱い紐帯」と「役割のない個人の、役割の担い手としての個人への進化」、「特段の目的が無くても誰でも利用できる豊富な居場所の確保」でしょうか。
終章の最後半にリンクワーカーという職業が出てきますが、今後はこのような役割を担う人が社会を維持する上で重要になってくるのでは、というかもっと必要なのではないかと思いました。行政にもろもろ頼るだけではもう心許ないように思います。
図書館に勤務する立場から見ると、本書の中に出てくる人にとっての図書館という居場所の重要性を再認識させられた思いです。
かなり以前に「司書はカウンセラーでもある」という言葉も聞いたことがあり、正直図書館にそこまで求められてもなと思ったこともありましたが、20年前から見ると明らかに高齢者の利用が増えたのを体感しており(単身赴任者という「シングル」も)、今後はそういうケア的ことが正式な(?)ニーズとして社会から求められるかもしれないと感じました。
一つ意外に思ったのは本書に出てくる東京在住ミドルシングルは、決して地域と関わりたくないと思っているわけではなかったということです。
コミュニティへの入りにくさやどう関わっていいかという戸惑いがあって関わっていないだけであり、状況や必要や求めがあれば関わっていきたい気持ちもあるという事実が明らかになった点です。
誰しも他人との何の関わりもなく一人で一生涯生ききることには困難さを感じるのではないでしょうか。
これからの社会は「緩い紐帯」が更に重要になるのでしょうか。