ルービンシュタイン ゲーム理論の力

  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492314845

作品紹介・あらすじ

超一流の経済学者は経済学をどう考えているのか。
経済学のあるべき使い方がわかる。経済学に関わるすべての人に贈るアドバイス。

現実に役立つかどうかは、経済学を評価する重要な基準ではない。

超一流のゲーム理論が教える、ほんものの洞察力。
優れたモデルは、感性を豊かにする。

社会を見る眼を深く鍛える本。

著者の人生にひきつけながら、
ゲーム理論、交渉、合理性、ナッシュ均衡、
解概念、経済実験、学際研究、経済政策、富、
協調の原理などの基礎概念が語られる。

感想・レビュー・書評

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  • ゲーム理論のネーミングのセンス。広めるには、キャッチなコピーだった。一つの物語であり、寓話と言い切るところが潔い。人間関係を扱うからこそ、科学性はむつかしい。合理的であり、非合理な存在としての人。ザクッと読んだ感じなので、再読したい。

  • ゲーム理論の大家であるルービンシュタインが、経済学に批判的な目を向けながらもいわゆるウィットと皮肉を交えて「経済学」を語った本。経済理論を語った本でもなく、経済学から出された結論を社会に当てはめた本でもない。

    「本書は巷に溢れるハウツー本の類ではない。経済学を使って将来を予測したり、何か有益なことをしたい、そのために本書を読もう、と考える読者がいるとしたら、ぼくは他の本を読みなさい、と勧めるだろう。一方、経済や人間関係を考えるうえで、何が本質なのかということを考えたければ、本書はお勧めだ」
    と訳者は言う。

    「本書の主たる目的は、経済理論を数理的な言語で記述された物語や寓話の集まりと見なすという私の考え方を読者のみなさんにお伝えすることです。私にとって、これらの寓話の実生活に対する関係は文学の実生活に対する関係と似ています」と著者であるルービンシュタインも日本語版の序盤で述べる。
    著者は、経済理論に人間的な温かみを与えようとしているというのだ。経済学は予測の理論であったり、政策決定の理論であるよりも、文学や哲学に近いものであるという。そこに著者は惹かれたのであり、経済学の魅力であるというのだ。

    著者はテルアビブ大学にも籍を置くが、同じくテルアビブ大学に籍を置いたことがあるダニエル・カーネマンの行動経済学に深い共感を示す。カーネマンの業績は、人間がちっとも合理的でないことを示す、現代においては誰もが理解をしておくべき知見である。

    「ジャングルの物語」と「市場の物語」で二つの仮想の経済理論を並べることで、現在の経済理論を相対化するやり方は、確かに経済学を文学にも例える著者らしいやり方で、面白い。

    また、学際的研究には数多くの落とし穴があるとして、次々と挙げていくのは皮肉的である。
    第一の落とし穴: 学際領域に踏み込むと、学問的とは言い難い、個人的なものが露呈してしまう。
    第二の落とし穴: 私たちは専門誌に掲載された論文に過度に気を取られ、書き手である研究者の個人的な利害に関してはほとんど注意を払わない。
    第三の落とし穴: 実際のところ、私たちは自分たちの取り組んでいることについてはきりとはわかっていない...
    第四の落とし穴: 学際領域においては、研究発表は簡潔なものでなければならない。詳細を述べる余地はない。私たちは一般論を語るが、それ以上のことは滅多にない。
    第五の落とし穴: 学際的な世界は宇宙のようである。止まることなく拡大していく傾向がある。
    第六の落とし穴: 学際的な研究の魅力に惹かれて、学生が早すぎる段階で取り組むと、学際分野の積み重ねをしっかりと支える幅広い研究の基礎を築けなくなってしまう。
    第七の落とし穴: 基礎的な分野に関する深い知識を持たずに学際的な研究に取り組んでいると、まやかしではないかと疑われてしまう。
    著者自身も第七の落とし穴にはまってしまったのではないかという落ち付きで。

    面白かったと言われると、どうだったんだろう、という感想。何かを壊そうとする意志があるが、そのためにはよほどの工夫が必要となるが、それが成功しているのかどうか読者の手にゆだねたので、よろしく、と言っているという感じがした。


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    『ファスト&スロー (上): あなたの意思はどのように決まるか?』(ダニエル・カーネマン)のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4152093382
    『ファスト&スロー (下): あなたの意思はどのように決まるか?』(ダニエル・カーネマン)のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4152093390

  • 著者の専門であるゲーム理論を使うと世の中はこんなふうに見える、というコラム集。体系的な本ではないので、あまり気張らずに読んだ方が楽しめるし役に立つ。見た目が、そういった軽めに取り組んでよい本のようには見えないのがちょっともったいないかも。

  • 経済学を信用してはいけないという経済学者によるお話し。

  • まず本書でゲーム理論を学ぼうとしたらケガをする。ゲーム理論について知りたいのなら、他の本を読むべきだ。また、経済学の入門者も避けた方が良い。現在の経済学を前提とした上で、痛烈な批判をするからだ。著者は経済学者であるが、ほぼ自己否定をしているようだ。そんなわけで、経済学を少しは分かっていないと、何を批判しているのかさえ理解できないだろう。特に前半は著者が何を言いたいのかさっぱりと分からなかった。それなりに読者を選ぶ本である。後半は、経済学を批判した上で経済学と現実の人々の振る舞いの関連性を説明する。ここまで読むと、何となく著者の言いたいことのごく一部を理解できたような気がした。私は、経済学とは哲学や心理学に近い学問だと捉えたのだが、どうだろうか。もう少し勉強してから再チャレンジしたい本である。

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著者プロフィール

アリエル・ルービンシュタイン
テルアビブ大学、ニューヨーク大学経済学教授
1951年生まれのイスラエルの経済学者。テルアビブ大学、ニューヨーク大学経済学教授。専門はゲーム理論、限定合理性の研究。1982年にEconometrica誌に掲載された論文“Perfect Equilibrium in a Bargaining Model”(「交渉モデルにおける完全均衡」)で交渉理論に重要な貢献をし、そのモデルは「ルービンシュタインの交渉モデル」と呼ばれるようになる。マーティン・オズボーンとともに著したA Course in Game Theory(1994)はゲーム理論を学ぶ者にとっての古典的教科書となった。
米国芸術科学アカデミー、米国経済学会の外国人名誉会員であり、1985年にはエコノメトリック・ソサエティのフェロー(終身特別会員)に選出、2004年にはその会長を務めた。

「2016年 『ルービンシュタイン ゲーム理論の力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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