[新訳]大転換

  • 東洋経済新報社
4.26
  • (21)
  • (16)
  • (9)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 418
感想 : 32
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (632ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492371077

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 新訳、ですって。はたして、それに価値があるものなのかどうか?栗本慎一郎にそそのかされて、経済人類学なるものに手を染めたのは、若気の至りというのは、少し言い過ぎかもしれませんが、結局は経済学なんて無能で、何の役にも立たないんだと諦観してしまったのは、あまりにも性急だったかもしれません。マルクス主義経済学とケインズ経済学という相容れないものに惹かれて・・・・その両方でも片付かない現代の問題は、いったいどうするのだという問いに誰も答えてくれないで、ただ誤魔化している情況の時に、ポラニーの語り口は魅力的でしたが、切り口は面白くてワクワクしたものでしたけれど、実際にはあまり役に立った覚えはありません。その後も、さじを投げたにもかかわらず、ガルブレスやシュンペーターやスーザン・ストレンジなどと、気ままに興味を示してきましたが、やはり大学で講釈される死体の分析などというものは、それだけでしかないということです。つまり、1929年の経験があって人類の英知を集めた様々な試行錯誤の研究が行われたにもかかわらず、何故79年を経て去年のリーマンショックやサムプライムローンの問題で世界的大恐慌が再び起こったのか、ということです。ひょっとして、株式や金融に携わる人々、経済学者はもちろん独占資本家やありとあらゆる関連する者たちが、いま現在の資本主義の動向をとらえられなくなっていることの証左であるのでは?あっ、ひとつ断っておきますが、私は大学などという強制された制度へは行っていません。授業中に5分間に一度くらい笑わせてくれるものや、受けたい教授の講義を全国から寄せ集めてくれるのなら行きたかったのですが、それは無理というもので私の方から拒否しました。国公立や有名私大4つを受験してすべて合格しましたが、私の方から不合格を突きつけてあげました。そのかわり私自身がプロデュースして、私自身の大学を作りました。関心のある分野の、現代において最高の教授陣を揃えて、たったひとりの自主講座です。とまあ恰好つけていますが、要は独学ってことですね。決まった授業時間や試験もなんにもないのですが、やったからには完璧に近い形にしないと気が済まないので、機会をつくって他流試合というか、各分野の詳しい人と話したりして自分の力量を試していますが、今のところひどくガッカリしたということはなかったので、概ね成果は出ているのかなと思っています。考えてみると、これって、偶然にも安藤忠雄がやったことと同じなんですね。

  • グローバル化とともに拡大する自由。しかし、自由の拡大に見合うだけの幸福感を手に入れているか。実感としてはいつも余裕なく急き立。てられ、人と人の関係もぱさぱさな殺伐とした味気ないものになりつつある。

    カールポラニーは、共同体の牧歌的結びつきを解体していく市場経済を「悪魔のひき臼」(イギリス詩人ウィリアム・ブレイクの言葉を引用)と呼んだ。

    そしれ、われわれにとってのもうひとつの大きな重圧、猛烈に速い「変化のスピード」。市場のスピードにあわせて、組織も人間も変化することを求められる。それでいて、人は「不動の価値」を求める、愛や宗教・・・。変化を求めながら、変化しないものを求める・・というそう反する欲求に精神を引き裂かれている

    (Refer from 悩む力)

    文明が進むほど、人の孤独感が増し、救われがたくなっていく・・
    「自我」「自由」「マネー」「働く」「知性」・・・
    苦悩する人間、激流のなかで本質を見抜こうとする姿勢、そこに生まれたマックス・ウェーバーの社会学と夏目漱石の文学に学ぼうではないか。

  • 【本学OPACへのリンク☟】
    https://opac123.tsuda.ac.jp/opac/volume/349217




  • 東洋経済新報社 カールポラニー 「 大転換 」

    自由主義経済(市場主義経済)を批判した国際経済学の本。訳者の解説や註解も充実しているが、かなり重厚な本

    自由主義経済により、人間が市場により処理され、環境が破壊され、貨幣不足から企業が清算し、人間と社会が破壊されるという論調


    自由主義経済により、経済のなかに社会が取り込まれている現実を見ており、人間や社会は自由を喪失していることを 批判している


    著者の結論は、政治主導や計画経済を道具として使うことを 複合社会における自由としたもの。人間の自由が確保された社会のなかに経済を機能させるということだと思う



    「十九世紀文明は崩壊した」から始まり、十九世紀文明下の四制度(バランスオブパワーシステム、金本位制、自己調節的市場、自由主義的国家)が 機能不全であることをテーマとした衝撃的な内容


    市場の自己調節を自由にすることにより、市場が労働・土地・貨幣を商品とみなして支配し、人間が市場により処理され、環境が破壊され、貨幣不足から企業が清算し、人間と社会が破壊されるという帰結


    著者の結論は、複合社会における自由の確立〜豊かな自由を創造する意志により、権力と計画化を道具として使うこと


    ファシズム、社会主義、ニューディールなど社会的な大変動の源泉は、自己調節的な市場システムを打ち立てようとした経済的自由主義のユートピア的試みによるものと批判


    ファシズムの根源は市場経済システムの機能不全にあるとし、ファシズムは、民主的制度の破壊を伴う市場経済の改革であった〜人間の自由と平等、人間相互の連帯は破壊されるとしている


    十九世紀より前の時代に、生産と分配が秩序が維持された行動原理
    *互報〜対称性に助けられて機能
    *再分配〜中心性をもつ場合に機能
    *家政〜閉ざされた集団で機能


    十九世紀文明
    *1815年から1914年まで100年間の平和という現象を生み出した〜バランスオブパワーの成果
    *十九世紀の歴史は、市場の拡大とそれに対する社会の抵抗という二重の運動
    *十九世紀文明の崩壊は自己調節的市場とそれに対する社会の基本的な要求との葛藤〜社会が経済システムに優位に立つ

     
    ロバートオーウェン
    *人間は市場社会に存在する悪を取り除かなければならない
    *悪を取り除くためには、何らかの強制が必要〜それは人間の自由には限界があることを意味












  • 経済人類学の始祖カール・ポランニーの名前を知ったのは25年以上前、栗本慎一郎を通じてだが、その代表作である本書を読んだのはつい数年前のことである。労働、土地、貨幣という本来商品化に馴染まない生産要素の商品化が社会の存立基盤を掘り崩し、社会の自己防衛としての対抗運動を生み出す。それがファシズム、社会主義、ニューディールという三つの形態をとって表れた今世紀初頭までの歴史を描いている。

    市場経済へのこの三つの対抗運動はいずれも国家主導によるものである。資本主義の暴走に歯止めをかけ、社会を防衛できるのは最終的には国家しかないのだ。これはいかにも逆説的だ。なぜならポランニー自身が指摘するように、資本主義は国家(正しくは近代国民国家)と手を携えて発展してきたからである。つまり資本主義とは国家の嫡出子であると同時にその鬼子でもあったわけだ。してみるとその矛盾がもっとも先鋭化するのは、それが自らを生んだ国家のコントロールを超えて肥大化していくグローバル資本主義と化す時であるのも当然である。この点で本書は今まさに最もアクチュアルな課題に関わってくる。ピケティの本が随分売れてるようだが、本書を読んでからでも遅くはない。

    ポランニーにとって「大転換」とは市場社会の崩壊であり、以後経済システムが社会に命令することを止め、経済システムに対する社会の優位が回復されるはずであった。「産業文明を新たな非市場的基礎の上に据え直すこと」にいささか楽観的に過ぎる展望を語って本書は閉じられる。ソ連崩壊の半世紀前に書かれたという時代的制約は止むを得ないとしても、いったん市場が社会を覆い始めると、逆に社会が市場の自己調整機能に依存するようになり、単なる市場への対抗運動だけでは社会の優位は回復されないことを銘記すべきである。「スピーナムランド法」(18世紀末の一種の救貧法)によるベーシックインカムの保障が逆に賃金の下落を招き、その反動で堰を切ったように自由放任に流れて行った歴史を知るポランニーはそのことを理解し得たはずだ。

    この関連で回顧的余談になるが、岩井克人が『ベニスの商人の資本論』の中で、パンダの親指のように進化の過程で退化したものを研究しても、現在の課題解決に直接役に立たないという趣旨の経済人類学批判をしたのに対し、栗本慎一郎が『意味と生命』の中で、岩井の「不均衡動学」こそ経済学と物理学の直結によるケインズ理論の復活であり、まさしく「ザ・リバイバル」だと猛反撃していたのが懐かしい。この点は経済人類学のアキレス腱であるに違いない。

  • 本書の要旨の一つである「市場は社会に埋め込まれている」という議論は、後世そして現代に至るまで強い影響力を与えている。
    政治経済学を学ぶものにとっては必読の作品の一つ。

    議論が多岐にわたりかつ複雑であるため、全ての内容を把握するのは私には無理だった。個人的には、労働者階級が国民国家形成に与えた影響力が、その後の市場経済のあり方に変化を与えたという主張は面白かった。

  • 総合政策学科 森川美絵先生 推薦!
    修士課程にいた時に感銘を受けた本です。現代日本社会、近代社会における私たちの暮らしについて、広い視野で捉える・理論化するとはどういうことか、学べます。その後の議論に大きな影響力を持った本です。社会科学の専門領域は問わずに読めます。

  • PK2a

  • NDC(9版) 332.06 : 経済史・事情.経済体制

  • [新訳]大転換
    (和書)2013年12月15日 19:30
    カール・ポラニー 東洋経済新報社 2009年6月19日


    「大転換」についてはあまり良く知らない。柄谷行人さんのいう交換様式がポランニーさんから来ているということを大澤真幸さんの本を読んでいて偶然知ったことから図書館で借りてみました。この本を読んだことはいきなり正解だったなと思った。

    柄谷行人さんは交換様式への対抗運動としての交換様式があるということを言っている。ぼくはこう解釈してみた。交換様式によって指摘されているのは支配についてなのだ。そして支配とは格差(階級や超越的)をつけることであるということである。対抗運動とは格差の解消(支配の解消、超越論的)を目指すことでありそれは平等を意味しているし支配の解消ということで自由も意味している。

    僕はこういうふうに単純に考えてみた。

    「大転換」は非常に良かった。僕が今まで読んできた数少ない本の中だけれど最高に近い良い本だった。最近、アナキズムやリバタリン社会主義などの本に共感を覚えたり、特にチョムスキーなどに興味を覚えていたがそういったものが保護主義というものとつながり世界のダイナミックは動きにどう関係しているのかを解明している。素晴らしい本だった。

    解説など読んでみるとこの本の評価が飛び抜けていいらしいが図書館でポランニーさんの本をあと4冊ほど借りてきてしまった。それらもあわせて読んでみたい。

全32件中 11 - 20件を表示

カール・ポラニーの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×