岩井克人「欲望の貨幣論」を語る

  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492371244

感想・レビュー・書評

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  • ビットコインは新しい発想ではない、というところから興味を持って読んだ本書。面白かった。
    お金の価値は、お金を発行している国家の信頼があるから、と思ってたけどそうではなくて社会全体の信頼による、というのは驚き。

  • 337.2||Ma

  • 「おカネのおカネとしての価値>おカネのモノとしての価値」(p.34)

    「貨幣の価値は社会が与える」
    この命題の重要性は、いくら強調しても強調しすぎることはありません。事実、古今東西、貨幣に関して少しでも意味のある研究をした人は、すべてこの命題に達しています。たとえば、カール・マルクス。マルクスの『資本論』の冒頭の部分に「価値形態または交換価値」と題された一節があります。俗に「価値形態論」と呼ばれるこの節は、マルクスが書いたもっとも重要な文章の一つです。そして、その「価値形態論」が最終的に達した結論は、まさに上の命題なのです。(p.42)

    「貨幣はレヴェラーズ」です。貨幣は人間に「自由」を与えました。だが、貨幣を基礎とする資本主義社会は、本質的に不安定です。その不安定性を放置しておくと、資本主義社会は、本質的に不安定です。その不安定性を放置しておくと、資本主義社会自体を聞きにおとしいれてしまいます。その行き着く先は、ポピュリズムか全体主義です。(p.118)

     ポリスと資本主義という、全面的に対立しているはずの二つのシステムの間に必然的に存在する「逆説的」な相互依存関係を見いだしてしまったのです。貨幣という媒介物は最高の共同体としてのポリスを維持するために不可欠です。だが、その貨幣が無限の増殖を求める資本主義を必然的に生み出し、ポリスはそれ自体の自足性を内部から掘り崩してしまう。ポリスの存立の可能性を生み出す貨幣それ自体が、ポリスそれ自体を崩壊させる可能性を生み出してしまうという逆説――アリストテレスは、この根源的な逆説から決して目をそらさなかったのです。私は、この「逆説」の発見こそ、人類史上最大の発見の一つだと思っています。(p.141)

     「ロックの貨幣感は知らぬ間に私たちに染み付いているのです。彼が行っていたことは非常にありふれた本能を用いることでした。その本能とは、“貨幣”とは人々の間の取り決めではなく物理的なモノであると簡単に間違えることです。」
     貨幣の本質はモノではなく「取り決め」であるにもかかわらず、人々はどうしても無意識のうちに、手にできる「モノ」の裏付けを求めてしまう……、そうでないと貨幣の根拠を実感できないというわけです。「社会契約説」を考えたロックは、言わば市場における「契約」の根拠をゴールドというモノに求めました。そのロックの示した考え方が、現代の仮想通貨開発者たちにも「呪い」のように暗示をかけ、彼らは無意識のうちに仮想通貨の発行総量を決めてしまったのかもしれない、というわけです。貨幣に対する本質の取り違え……、その不思議さ。(pp.175-176)

  • 貨幣とは、を歴史から考察する
    お金とは、空虚なものですね。なのに人間の命を奪い、救う。神なのか、ただの紙なのか

  • NHKの「欲望の資本主義」に出ていた岩井克人の『欲望の貨幣論』である。「貨幣とは貨幣であるから貨幣である」と見極めて、貨幣の定義は自己循環論法に求められるとの結論に到達する。ビットコインとは何ぞやとか、今流行りのMMTなどにも言及しており、難しい主題ながら、分かりやすい説明がなされていて、分かった様な気にさせてくれる。

  • 現代の経済学を二分して解説 画期的であり判りやすい 革命的過激さ
    ①不均衡経済動学・・・資本主義経済の本質 ケインズ・宇沢弘文など
    ②均衡経済学  ・・・主流派経済学シカゴ学派など
    資本主義経済の本質は不均衡動学だが、周期的に経済危機を起こし、財政・金融の支援を必要とするので、そのままでは受け入れにくい
    体制の経済学としては「平時の均衡」を前面に出して理論体系を組むのが方便だが、これは反正義の在り方。本家の米国以外では衰退しつつある。
    宇沢弘文氏、岩井克人氏とも「正当経済学の不正義」に耐えられず趣旨替えを表明し、経済学会を追われてしまった。「破門」である。
    cf「資本主義と戦った男 宇沢弘文と経済学の世界」佐々木実と読み合わせるべき

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著者プロフィール

丸山 俊一(マルヤマ シュンイチ)
NHKエンタープライズ エグゼクティブ・プロデューサー
1962年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。「欲望の資本主義」「欲望の時代の哲学」などの「欲望」シリーズをはじめ「世界サブカルチャー史 欲望の系譜」「人間ってナンだ?超AI入門」「ネコメンタリー 猫も、杓子も。」「地球タクシー」他、異色の教養番組を企画・制作。
著書『14歳からの資本主義』『14歳からの個人主義』『結論は出さなくていい』他。制作班などとの共著に『欲望の資本主義』『欲望の資本主義2~5』『岩井克人「欲望の貨幣論」を語る』『欲望の民主主義』『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学する』『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学するⅡ』『マルクス・ガブリエル 危機の時代を語る』『マルクス・ガブリエル 新時代に生きる「道徳哲学」』『AI以後』『世界サブカルチャー史 欲望の系譜 アメリカ70~90s「超大国」の憂鬱』他。東京藝術大学客員教授を兼務。

「2022年 『脱成長と欲望の資本主義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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