東電解体―巨大株式会社の終焉

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  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492395578

作品紹介・あらすじ

なぜ倒産させないのか、誰が責任をとるのか。"株式会社としての東京電力"という視点から明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • 震災以降の東電のありようをドキュメント的に記した本。政財官が一体となって原子力推進をしてきてこうなって、今更路線変更すると別の障害がでるという、沖縄米軍基地と同じ問題にぶつかるなあ。星3つ

  • いまだその行き着く先が知れない東京電力という『巨象』を50年以上株式会社を研究してきた著者が"株式会社としての東京電力"という視点から「21世紀の日本で起こっている不思議な問題」について明らかにする。

    この本も気になったので読んでいました。きっかけはいうなれば『ジャケ買い』でした。僕はエリートでもなんでもない、言ってみれば「チューサン階級」に属する人間だと思っておりますので、彼らの考え、と言うものは知るべくもありませんが、どうしても『国策企業』として巨大化した会社と言うのはどれもこれもが旧日本軍の要になって最終的には自壊していくんだろう、と言う印象を受けました。

    この本の中には東京電力をはじめ、戦後日本の電力会社がどのようにして出来たのか、と言うあらましと、現在では実質的に国有化されておりますが、国有化されたらどうなるか?と言うこと。さらに、なぜ倒産させないのかと言うくだりに関しては『大きすぎて潰せない』と言う一節と資金を提供している銀行のためではないか?と言う言葉がすごく印象に残っております。

    誰が責任を取るのか?なぜ倒産させないのか?司法は介入しないのか?この本で提示されたさまざまな疑問を見つめながら、今後もこの会社の『行く末』を見つめていこうと思っております。

  • 東電救済の問題点を指摘し、解体を推奨する本。

    感情論優先の薄っぺらい東電懲罰論に終始している。
    倫理的に考えて議論の余地がある部分を幾つか取り上げて、その原因を一様に各組織の保身に求めることを繰り返しているが、あまりにも安易。
    おまけに、事実誤認も散見される。

    例えば東電を国が破綻させなかった件を取り上げ、その理由を、銀行と株主を救済するためであると断定し、糾弾している。
    しかし、そもそも東電が債務超過にあるのか否か自体、未曽有の自然災害が起こった際に事業者を免責する原子力損害賠償法第3条1項の解釈次第で変わる。如何に東電憎しと言えど、そういう法律が現に存在している以上、無視するわけにはいかない。これは賠償に関する議論の肝となる部分だが、本書では一切触れない。
    そして著者は、東電を破たん処理用の会社と事業継続用の会社に分離することを提案する。これと、原子力賠償機構を経由して賠償を行う現行案の異なる点は、株主が損失を被る点だけで、結局国民が賠償の原資を担うことに変わりはない。
    つまり、筆者は単に「いい思いをしてきた株主に痛い目にあってほしい」だけのようだが、これが正当性を持つのは懲罰が(広義の)モラルハザードを抑止する場合のみである。よって争点は、今回の原発事故は、東電株主がしっかりしていれば防げる類のものであったか否か、にある。が、やはり、このような議論も一切しない。
    尚、著者は東電の救済スキームを三井住友銀行案(車谷ペーパー)と同一であると考えているようだが、現行案は車谷ペーパーとはかなり異なっている(例えば、車谷ペーパーは東電に免責規定を適用している。現行案では、東電は賠償責任を負っているし、上限もない)。事実誤認を基に鼻息荒く断罪を行っても、得るものは何もない。

    その他、軽薄な言説に溢れているが、きりがないのであえて取り上げない。
    全体の論旨を見ると、単に「東電はけしからんので、東電に関わった奴らは全員罰せよ」という論旨をベースに、持論の「大きな会社は小さく分割せよ」を展開したかっただけのようである。

    私自身は東電およびその他電力会社を解体し、電力自由化を進めるべきと考えている人間なので、「東電解体」という部分だけを見れば著者と想いを同じくする。が、あまりに議論が拙く、飲み屋でのヨタ話未満の本なので、とてもおすすめできない。

  • 一言でいうなら新聞記者の本。

  • 題名から期待して読んだが、他の書籍の引用が多く、論拠が希薄な印象。大企業はみんな分割すればよいという内容であればあまり題名とは関係がないのでは?と思った。

  • 展示期間終了後の配架場所は、開架図書(3階) 請求記号:335.4//O55

  • ソースがいい加減で、自分の取材というより、他所から都合のいい記事を引っ張ってきている。理論武装も中途半端であり、嘘ついてるんじゃないかと疑ってしまう

  • 福島原発事故と東京電力批判に便乗して、従前の巨大株式会社批判を繰り返しているだけ。記述はほぼ切り張り。この著者なら本書よりも他の作品を読んだ方がいい。自分で買った本じゃなくてよかった。

  • 20年ほど前に学生だった私は氏の著書「企業買収」を読んだ。そんなことを思い出した。当時読んだ書物で覚えているということは印象的だったんだろう。ありきたりな東電批判ではなく巨大株式会社の矛盾点を表している。逆にいうと原発事故を利用して自説を展開しているとったら穿ち過ぎか。何はともあれエスタブリッシュにはご退場願おう。という意見には100パーセント同意する。日本という社会の持つ矛盾点、問題点は全てそこに通じる。東条英機、マッカーサー、落合博満、そして東京電力。本質は全て同じだ。

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著者プロフィール

奥村 宏(オクムラ ヒロシ)
会社学研究家
1930年生まれ。新聞記者、研究所員、大学教授を経て、現在は会社学研究家。
著書に、『日本の株式会社』『法人資本主義の運命』『無責任資本主義』『東電解体』『パナソニックは終わるのか』『会社の哲学』(以上、東洋経済新報社)、『会社本位主義は崩れるか』『株式会社に社会的責任はあるか』(以上、岩波書店)、『エンロンの衝撃』『会社はどこへ行く』(以上、NTT出版)、『三菱とは何か』(太田出版)、『会社をどう変えるか』(筑摩書房)、『株のからくり』『経済学は死んだのか』(以上、平凡社)、『会社学入門』『徹底検証 日本の電力会社』(以上、七つ森書館)などがある。

「2015年 『資本主義という病』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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