エコノミスト 南の貧困と闘う

  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (462ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492443040

作品紹介・あらすじ

本書は、「なぜ貧困はなくならないのか」という開発経済学における一大テーマを、著者の世銀時代の経験をフルに生かしてわかりやすくひも解く。第1部、第2部では、エコノミストが過去50年間、いかに途上国経済の運営に失敗してきたかをみていく。第3部では、著者の新しい処方箋が語られる。すなわち、「貧しい人々には貧しさから抜け出すインセンティブがないことが多く、政府は貧困の罠から抜け出すインセンティブを提供してあげなくてはならない」のである。「…そして、多くの貧しい国が豊かになりますように」。本書を締めくくるこの著者の言葉と同じ思いを持つ読者に手にとっていただきたい一冊。

感想・レビュー・書評

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  • ▼福島大学附属図書館の貸出状況
    https://www.lib.fukushima-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/TB00025815

  • なぜ貧困はなくならないのか。援助も投資も、債務救済も、貧困から抜け出す万能薬ではない。世銀での実務経験を活かして、一大テーマに取り組んだ魅力的な書。
    (出版社HPより)

    ★☆工学分館の所蔵はこちら→
    https://opac.library.tohoku.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=fromlist&lang=0&amode=11&bibid=TT21373331

  • [more]教育投資の重要性への疑問
    ?人的資本以外への関連投資があるかどうかによる。単なる就学率向上だけでは成長につながらない。

    出生率について
    「望まないのに子供が生まれる」のではない→避妊具配布の無意味

    人口抑制は本当に必要か?
    人口増加率が高い→才能原則
    「アイデア」は共有する人数が増えてもその分ゼロ・コストで共有されうる
    人口増加は新しいアイデアを思いつくよう迫るインセンティブである。
    1台のミシンを100人で使うことはできないが、アイデアは同時に利用可能

    ドナー(援助国)と貧困層の悪質なインセンティブによる悪循環

    補完関係と罠
    個人と社会全体の関係が重要
    同じ社会の他の人が同じような努力をしないと、自分がいくら努力しても意味がなくなってしまう。
    そうすると自分も何もしなくなってしまう。誰もがそうする方が合理的だと思うと誰も努力しなくなる→貧困の罠
    金持ちと貧乏人は互いに嫌い合っている。
    貧困の罠の中でも、「期待」があれば実現する。

    「技術」は素晴らしいが、使うインセンティブがなければたいしたことは起こらない。

    保護主義擁護の問題
    貧しい国が工業製品の輸入を許せば、工業化を始めるチャンスがある前に殺されてしまうと信じられていた。
    工業の発展には学習曲線がある→幼稚産業論
    しかし過去10年で、開かれた国ほど成長するということは明らかになっている。

    政府の行動と成長は、相関関係はあるが因果関係はない

    汚職の多さと成長は明らかに関係がある
    ?但し地方分権的汚職と中央分権的汚職では影響が異なる
    民族多様性が高いと汚職がよりひどい(社会的分断の有無)
    アメリカがなんとか成功しているのは中産階級の多数化に成功したから

    まとめ
    貧困を脱して豊かになるには、ドナー、途上国政府、途上国国民が三位一体となって、インセンティブに反応するという人間の本性を生かすことができれば、経済発展は必然的に起こる。

  • 原題:The Elusive Quest for Growth: Economists’ Adventures and Misadventures, 2001
    著者:William Russell Easterly(1957-)
    訳者:小浜裕久/織井啓介/冨田陽子


    【書誌情報】
    ISBN:9784492443040
    旧ISBN:4492443045
    サイズ:四六判 上製 480頁 C3033
    発行日:2003年07月11日
    定価:3,240円(税込)

     なぜ貧困はなくならないのか。援助も投資も、債務救済も、貧困から抜け出す万能薬ではない。世銀での実務経験を活かして、一大テーマに取り組んだ魅力的な書。
    http://store.toyokeizai.net/books/9784492443040/



    【目次】
    謝辞 [iii]
    目次 [v-xii]

    プロローグ――探索の旅 001
    第1部 なぜ成長が重要なのか 
    1章 貧しい人々を助ける 009

    第2部 うまくいかなかった処方箋 
    2章 投資に対する援助 033
    3章 ソローが与えた衝撃――投資は成長の主因にはならない 065
    4章 教育は成果をもたらしたか 099
    5章 コンドームへの資金援助は必要か 121
    6章 借金はしたが成長はしなかった 141
    7章 債務救済の功罪 171

    第3部 人はインセンティブに反応する 
    8章 規模に対する収穫逓増の物語――知識の波及、技能のマッチング、貧困の罠 199
    9章 創造的破壊――技術の力 239
    10章 不幸な星のもとに 273
    11章 政府は成長を殺すことがある 305
    12章 汚職と成長 339
    13章 分断された人々 359
    14章 結論――ラホールから 403

    訳者あとがき(二〇〇三年五月 小浜裕久) [413-420]
    参考文献 [13-42]
    事項索引 [4-11]
    人名索引 [1-3]

  • 長らく本棚の肥やしとなっていた同書をやっと読破。前編を通して人はインセンティブに反応するという事、そして間違ったインセンティブを与え続けてしまった事を様々な角度から提起していると言える。

    世界銀行、IMFと直接関わった事は無いが、短期間とはいえJICAと接点のあった者として非常にリアルに感じる事のできる話が多かった。その時に感じた違和感がやはり失敗に繋がっていたのだろうと思えた一冊だった。以下、気になったところを忘備録・・と思いきや、備忘録のために明記。今まで忘備録だとずっと思ってきたことを今知る・・(恥)。

    P65 設備や機械の増加が成長の主因だという考え方を”資本原理主義”と呼んでいる。

    P86 現在の富裕国に関し、90%以上の所得が1820年以降に作り出されたのである。それにも関わらず、貧困国が富裕国に追いつくという考え方が経済学の中に長い間染み込んでいる。

    P113 教育とインセンティブ:問題の一つは教育を受けた人々が技術をどのように使っているかにある。政府の介入が多い国では、技術に彩光の収益をもたらすにはロビー活動を働きかける事になる。政府の介入により儲けの機会を作り出す。技術を得た人々は、経済成長に繋がる活動をせず、所得再分配に繋がる活動を指向する。

    P152 ドナー側は財政赤字に関する条件が達成されない事についても無頓着のようである。援助を受けながら財政赤字が低下しない国には意図的にそうしている国が含まれる。プロジェクトが増えれば増えるほど、援助も赤字も増えるだろう。また構造調整融資が、汚職の多い政府と少ない政府をあまり区別しなかった事である。世銀の研究によると、援助はその国の政策選択に影響を与える事ができないという。またドナー側の専門家も、どの国を援助するかを決定するのに、途上国の政策の適切性を評価することができないのである。援助はドナー側の戦略的な利益によって決定されるものであって、途上国の政策選択によっては決まらないと思われる。

    P190 債務救済をしても、援助を悪用する能力にきわめて長けた途上国に援助を与えてしまうだけである。債務救済は、政府の行動が改まらない国には無駄である。

    p223 これまでエコノミストは、比較生産費の違いによって農産物生産をしたり、工業品生産をするパターンが決まると考えてきた。しかし技術獲得の考え方のほうがより現実を説明する。

    P233 貧困の罠に関する収穫逓増の物語は、調整の失敗によって引き起こされるといっているのと同じである。残念ながら、市場だけではこのような調整ができないので、以前として貧困が存在し続ける。

    P235 基本的要因が分かっても、成功のために考えられる全てのインセンティブを与えたとしても、我々には将来どんな経済が待っているか知る由もない。

    P305 良くない政府は不運と同じで成長を阻害する。高インフレ率、為替レートの闇プレミアムが高い事、マイナス実質利子率、多額の歳入不足、自由貿易制限、粗末な公共サービス等は、成長にとって悪いインセンティブを生み出す。

    P331 因果関係と相関関係を間違える話はたくさんある。それらを間違えないためにはどうしたらいいのだろうか。マイナス成長は、政府が投げやりな施策をとる原因となりうるだろうか。

    P365 コモンズの悲劇

    P375 不平等度が高い社会では、少数独裁は大衆教育に反対票を投じるだろう。大衆教育は、大衆の政治参加を育て、エリートから多数派への再配分を求めるかもしれない。他方、比較的平等な社会では、エリート集団は大衆教育に賛成票を投じるだろう。そのような社会では、成長から得られる利益に比べて再配分から得られる利益は小さいので、再配分に賛成票は投じないだろう。

    P382 民族多様性の尺度と内戦の関係

    P387 ドナーは民族の分断を全く認識してこなかった。援助資金が特定の民族集団に偏って役立つ場合があり、そうすると民族間の緊張を高めることについて十分検討しなかった。

  • [購入] 所属するゼミの課題図書で出会った一冊。様々な観点から既存の援助のあり方を批判し、疑問を投げかける。

    教育に関する章の議論の前提の作り方など所々疑問点は残るものの、全体的に様々なデータを用いて理解しやすくまとめられているので国際開発の議論の入門のうちの一冊として役に立つ。援助に懐疑的でない他の著者、推進派(ビッグプッシュ型)やオルタナティブ派の著作にも同時に触れることでバランスを保つことが出来ると感じた。

  • ビックプッシュが必要であると主張するサックスに真っ向から反対する論客として有名なイースタリーの本。すごくリアリティがあって開発経済学に対するモチベーションが湧く一冊だった。

  • 人はインセンティブに反応する。経済成長とインセンティブの関係。

  • 農学研究院・長南史男特任教授おすすめ

    北大所蔵はこちら
    http://opac.lib.hokudai.ac.jp/opac/books-query?mode=2&code=21114731

  • 非常に興味深い内容だった

    貧困をなくすにはどうしたらよいか、ということに焦点を当てつつも、

    彼が立つポジションは、ジェフェリーサックスとは一線を画している


    自分は個人的にボノやサックスの考えが好きでこういう分野に興味を持っただけに、刺激を受けた


    ただ、今回もまた自分の知識や経験が絶対的に足りていないので、

    理解も及ばないし、納得のいく評価もできないでいるが、

    この先またこの本に戻ってくる価値があると思う


    完全に理解ができていないという意味で☆4つ

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