ビジネスに活かす!最新・米軍式意思決定の技術

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  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492532102

作品紹介・あらすじ

欧米企業が続々導入をはかる情報化時代の意思決定法=「ループ意思決定論」を完全解説。

感想・レビュー・書評

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  • ・モリス・ジャノビッツは、その著『プロフェッショナル・ソルジャー』の中で「コンスタブラリー・フォース論」を展開し、戦闘集団論に挑戦した。
    …軍隊は、国家・国民が要請する役割を、それが「いかなる役割」であろうとも、遂行しなければならない。「戦場における勝利のみが軍隊の使命である」(戦闘集団論の主張するように)と軍隊は自ら宣言できないのだ。
    軍隊の役割・機能を決定するのは国家・国民であるから、その時代の国家・国民のニーズによって、それは規定される。戦争が生起すれば、国民は軍隊に対して「戦場における勝利」を最優先するよう命じるであろう。戦争生起の可能性が高い状況においては、軍隊の役割は効果的な抑止力の構築になるであろう。そして、平和時においては、非戦闘活動が期待される。

    ・企業衰退の原因の多くが意思決定の失敗である。

    ・第四の(直感的意思決定法の)前提は、「軍事意思決定は芸術(Art)の領域である」ということだ。前述したように、「分析的意思決定法」は軍事意思決定を「科学」の範疇に入ると考えた。これに対して「直感的意思決定法」は、非論理的とまではいえないが、論理性の薄い「感性の領域」であると見る。

    ・ソ連製のミグ-15は、機動性をはじめ、多くの性能分野でF-86よりも優れていた。にもかかわらず、F-86の対ミグ撃墜率は1対10という驚異的なものであったのだ。
    …しかし、ボイドは、調査・研究をかさねた末、F-86の持つ二つの構造的優位性が決定的な勝因だと結論するに至った。
    第一の勝因は、ミグ-15に比して、F-86はパイロットの視界が広く、敵機を観察し易いことである。F-86の風防はドーム型で、360度見渡すことができるのに対して、ミグ-15は流線型で、後方が見えない。その上、ミグ-15のコクピットは狭く、窮屈であった。つまり、ミグ-15のパイロットは、F-86の飛行位置や態勢を観察し難く、しかもフラストレーションを抱きやすかったのである。
    第二の勝因は、F-86は操作棹の操作が軽いため、方向変換が迅速かつ容易で、したがって小回りがきくことである。F-86の翼の操作は油圧を利用していたので、パイロットは指一本で操作棹を動かすことができた。ミグ-15のいかなる変化にも迅速に対応できる機敏性を保有していたのである。一方、ミグ-15は、機動性、特に旋回能力に卓越していたが、油圧方式ではなかった。

  • John BoydのOODAループの概要説明と、それを軍隊が用いることで、より少ない物量で、より弱者が強者に勝つための論理としての説明、及びビジネスに応用したらどうなるか、というところが記載されていた。



    当方としてはOODAループについてはもう少し深く掘り下げて欲しかったし、物量戦と機動戦では、特に機動戦に特化した、ビジネス利用の話が記載されているかと思ったが、むしろ、双方を時々によって選択して、ビジネスに持ち込むのが有用なのかな?といった所に落とし込まれていたのが、ちょっと残念感。



    あと、自衛官が著者だったせいか、米海兵隊が導入しているWarfighting ドクトリン、について、その有用性に対する理解はしているが、軍における命令、活動行動に関する説明では、在来の指揮命令系統の説明に戻っていたことが、自衛隊の今の機動戦に対する認識の限界なのかもと感じさせられた。



    OODAループって、誰しもが持っている人間の思考パターンをループモデルにしてみただけで、それで個人も集団も単純に説明できるよね、でも、本当は、それを高速化することに意味があって、相手のOODAループに介入し、情報を飽和、混乱させる(欺瞞、待ち伏せ、奇襲)ことで相手の思考ループを飽和、崩壊させる、精神を攻撃対象に入れる、というのが基本概念だよ、というところ、そして、集団に置けるOODAループの運用には統一した強力な概念の個々のループへの埋め込みとシンプルな命令によるループの短縮による精神の高速化で相手の思考速度を上回り続けることが必要なのだ、そのためには中央となるORIENT化できる優秀な人間、組織の育成(ある意味、運も含まれる)が大事といったところも抑えて欲しかったな。



    90年代に流行ったタイムベースの競争戦略がOODAループの利用だとは、ちょっと繋がらないと思ったのだが。ループ型思考の有用性は理解できるのだが、そのルーツがOODAループだとの説明が薄かった。



    批判ばかりになってしまったが、日本人にはほとんど知られていなかったOODAループの有用性を少なくともビジネスの世界にも生かしてほしいと感じさせられる書であった。

  • 2009/10/30 @ Amazon.com

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著者プロフィール

中村好寿一九四三年(昭和一八年)、広島県三次市に生まれる。防衛大学校卒業。防衛大学校助教授、米国国防大学客員研究員、陸上自衛隊東北方面総監部幕僚、ジョージア工科大学客員教授、防衛研究所主任研究員を経て、退官。現在、軍事アナリスト。著書に『抑止力を越えて―2020年の軍事力』『軍事革命(RMA) : が戦争を変える』『ビジネスに活かす! 最新・米軍式意思決定の技術』『「作戦」とは何か : 戦略・戦術を活かす技術』など多数。共訳にクラウス・クノール著『国際関係におけるパワーと経済』。

「2023年 『制限戦争指導論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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