両利きの経営

  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (411ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492534083

感想・レビュー・書評

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  • いやぁ、やっぱり★5つです。

    ビジネスの世界に入って20年ぐらいでいろいろ経営に関する本も読んできたところ、昨今のVUCA時代で昨年出版されていた当初から気になっていたのだがようやく読めました。
    (というより「両利きの組織をつくる」や「じわじわ死ぬ会社 蘇る会社」「シン・ニホン」「コーポレート・トランスフォーメーション」「世界標準の経営理論」などを経て、この本(おおもと)にたどりついた、というような流れ)

    20年ぐらいで、それこそドラッカーだったりD・カーネギーのリーダーシップ本だったり、稲盛さんや松下さんの経営本だったり、もっと昔はソニーの本だったり、そしてシリーズものだと「ビジョナリーカンパニー」シリーズとか、昨今紹介した本だと野中先生の本だとか。(やっぱりそういう意味では複数の企業の栄枯盛衰を分析・考察したビジョナリーカンパニーシリーズは大好き)昨今だとデザインシンキングだったりアート思考DX関連だったりOODAループ思考だったりもする。
    そんな感じでいろいろ読み進め、積み上げてきた中での2020年のビジネスパーソンがぜひ読む本だな、と思うところ、正直である。 周辺本をいくつか読んできていて、あぁやっぱり大本にはたどり着かねばね、と思ったけどやはり読んでよかった。 ほっとした。 (もちろんこれから「コーポレート・トランスフォーメーション」「世界標準の経営理論」も読みます。。)

    あんまりレビューにはなってないですがとにかく読んだほうが(読んでおいたほうが)いいですこの本。

    いつもの抜粋としては下記。(ほんとは入山先生のアツイ解説の部分から引用したかったがやめときます)
    ===========
    P382
     最も成功している企業がイノベーションストリームを構築し、両利きの行動をとっていることはもう明らかなはずだ。深化ユニットでは重視されるのは漸進型イノベーションと絶え間ない改善だが、探索ユニットでは実験と行動を通じた学習である。探索ユニットはスピンアウトせずに、深化ユニットの中核となる資産と組織能力を探索ユニット内で活用する。内部的に矛盾をはらんだ探索ユニットと深化ユニットを共存させるには、包括的で感情に訴える抱負、基本的価値観、幹部チームの強い結束力が必要になる。
     こうした要素がすべて合わさると、探索ユニットは未来を見出す権限を与えられ、幹部チームは一定の尺度で有望な実験を行う選択肢(明日の主流事業への道を開くか、別の事業をさらに追加するか)が持てるようになるのだ。
    ===========

  • 【感想】
    日本的な企業に勤めてる人は読むべきだなって思った本。
    少し幹部層とか経営に携わる人向けかも
    具体的な企業例(Amazon)あってイメージつきやすかった。
    10年後どうなってるかほんとわからんよねって不安を煽られる。
    成熟企業にとって矛盾的な、中核事業を維持しつつイノベーションを起こすという課題について考察し、具体的な組織運営(主に幹部層のやること)を書いた本。

    【学び・気づき】
    ・要は新規事業と既存事業のバランスとってやってこ
    ・企業の生存戦略っぽい。環境適応的な話。(2章で意図的なダーウィン理論との記述)
    ・「採用基準」にも書いてたけど、リーダーとマネージャー違うでええ。
    リーダー:方向を示すことが仕事。列車の方向性を決める
    マネージャー:管理することが仕事。定時で列車運行する。
    ・イノベーションのジレンマ(クリステンセン)は不完全
    組織・幹部がやらなければいけないこと
    ・組織として新規にヒトモノカネを導入する覚悟を持つ
    ・新規と既存はオペレーションが違うので2つを独立する必要
    ・文化醸成(イノベーションをたたえる文化)
    ・探索部隊が深化してきた技術を見渡せ・使いこなせることも重要
    ・経営層は既存事業と新規事業の食い合い(カニバリズム)の仲介を行う必要
    新規事業をやるにあたり
    ・収束して事業案作成の際には結構厳密にマイルストーンを置かなきゃ
    →勉強か専門家に教わる
    ・リーダーは野心的な目標を!
    ・6つの質問で事業案を作成(IBM流)
    1. どのように競争するか、自社の競争優位性は?
    2. どのような顧客セグメントを相手にするか、対象外も含めて
    3. 当社の価値提案は何か、なぜ顧客はその事業を選ぶのか
    4. どのようにもうけを出すのか、どこから利益がでるか
    5. 内部では何を行うのか、どの活動を外注するのか
    6. 時間がたった時にどのように収益性を守れるか、優位性は持続可能か

  • 産業構造の変革に直面している、世界中ほぼすべての会社のための本。どうすれば効率性の向上によって既存の資産と組織能力を「深化・有効活用(exploitation)」しながら、十分に「探索・開拓(exploration)」するための準備ができるか、というテーマを掲げています。クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」を土台にしつつ、違うのはクリステンセンが「探索」組織は「深化」組織と距離を置き、独立で判断スピードを上げていく組織論がイノベーション実現の要諦であると主張しているのに対し、「探索」と「深化」の両立を高い次元でバランスとるマネージメント=「両利きの経営(ambidexterity)」というリーダーシップが必要だとしているところでしょう。冒頭のアマゾンでジェフ・ベソスが繰り返す「探索」と「深化」の繰り返しが圧倒的で、つまりベソスが持っているコンピテンシーを普通の経営者が持てるか?という問いかけに感じてしまいました。まさに「社長はつらいよ!」。IBMとシスコとの違い、コダックと富士フィルムは紙一重にもおもえます。

  • 既存事業の深化と新規事業の探索をどのように両立しイノベーションを起こし生き残るか指南する本。後半の和訳は分かりにくいが事例が圧倒的に豊富。深化により目先の利益にとらわれるサクセストラップ、自社ケイパの活用/非活用×新規/既存市場の2軸で、進化論に基づきイノベーションを整理するイノベーションストリーム、事業段階毎に異なる管理を行う両利き構造は観点のヒントになる。特に飲料容器メーカーボールの構造変化、シアーズのウッドの意思決定は実践的な両利き経営を理解しやすい。

  • 安定している企業だからこそ、新規事業の探索にチャレンジすべきであること。
    また、安定している企業だからこそ、その決裁が経営陣に難しい。

    どちかというと部長級が読むとすぐに活用できる本?

    ‥‥とても難しいことをやらなければならない。
    でもできた企業は落ち込むことなく生き残れている。

    企業において、合理的なマネージャーであれば収益性の悪い、小規模でかつ不確実なローエンド市場に参入することについて、説得力のある論拠を示すことはまずできない←驚きと共に納得

    既存事業の財産は新規事業も活用したかったら活用できる環境にしておくべき

    自発性、実験、スピードが大事

    新しい文化のマインドセット

    サクセストラップ、組織的な調整力、構造上や文化的な惰性に関係

    リーダーに求められること
    新規競合に競争優位に立てるような既存組織の資産や組織能力を突き止める
    深化事業から生じる惰性が新しいスタートアップの勢いを削がないように経営陣が支援し監督する、資源確保とか。リーダーはマイルストーンの達成について説明責任を負う。
    新しいベンチャーを正式に切り離して、成熟事業からの邪魔や支援なしに成功に向けて必要な人材、構造、文化を調整できるようにする

    既存のマネジメントシステムは短絡的結果を求める。目の前の機会をつつがなく実行することであって、新分野を開拓することではない。ブレークスルーを産む思考が重要なリーダーシップ能力として重視されていなかった。
    既存のものにしか眼中になく、破壊的技術もしくは新しい市場やビジネスモデルになかなか気づけないプロセスになっている
    新しい成長事業の選別、実験、資金提供、終了について規律が確立していない
    失敗する新規ベンチャーが多い。起業家的リーダーシップがない、忍耐や持続性も不足していた

    探索と深化が必要であることを正当化する明確な戦略的意図。利用可能な組織能力や資産を明確にすること。
    新しいベンチャーの育成と資金供給に経営陣が関与し、監督し、その芽を詰もうとする人から保護する
    独自に組織構造面で調整を図れるようにする
    共通のビジョン

    リーダーシップ
    心に訴えかける戦略的抱負を示して、幹部チームを巻き込む
    探索と深化の緊張関係
    幹部チームの対立に向き合い、事業間のバランスを図る
    一貫して矛盾
    意思決定の実践に時間をかける

  • イノベーションのジレンマを読んで、大企業は破壊的イノベーションを生み出せないと理解し信じてきたが、それを克服している企業ももちろんあるよというのを紹介している本。

    ただし、既存の企業がイノベーションを生み出すことは、持続的イノベーションと破壊的イノベーション、知の探索と知の深化、右手と左手、水と油と表現できるように、とても難しいものである。

    そもそも、既存事業に求められるのは効率性、生産性、標準化であり、新規事業に求められるのは、調査力、新規発見、他者との差異というように、異なっている。

    既存企業が、既存事業でキャッシュを稼ぎながら、イノベーションを生み出す事業を育てるには、①明確な戦略意図②経営陣の支援と保護③目標などの組織アイデンティティ④独立した事業ユニットやスピンアウトやアウトソーシングするといった体制が必要であると説いている。

    経営はできる。だが、難しい。これを経営者は理解し、実行する必要がある。

  • 過去の成功体験から高度に効率化された組織やシステムを変更できない、いわゆる大企業病(サクセストラップ)に陥る原因と、サクセストラップを回避すべく、探索と深化の両利き経営を実行できるリーダーシップについて解説した良書。本文パート以外にも巻頭の入山さん、巻末の富山さんのレビューが、本書のエッセンスや解釈を鋭く、端的に纏めておりお薦めです。

    両利き経営の成功・失敗例集としても読みごたえあります(ネットフリックス、Amazon、富士フィルム、コダック、シアーズ、IBM、HP、USA Todayなど)。

    クリステンセンの提唱したイノベーションのジレンマでは、破壊的変化に直面すると探索と深化の両立は難しく、探索側のユニットをスピンアウトすることが原則に対し、オーライリーは、強いリーダーシップの下で両者は共存可能であり、そうすべきであるという点が大きく異なっていると感じた(深化側の組織力とシナジーを出しながら探索することが有効的)。

    深化側のと探索側では求められる組織力が異なる。
    ・深化側→予測可能性、安定性、効率性、バラツキの削減とコントロール。同質的で連続性のある組織。
    ・探索側→検索、発見、スピード、自治、柔軟性、バラツキのある環境。多様的で非連続性のある組織。

    両利きの経営のための3つのリーダーシップ
    ①探索と深化が対立することなく、結束可能なビジョンを提供する。
    例USA Today 「いかにネットワークになるか」→既存の新聞事業も新規のオンラインコンテンツ事業もネットワークになるために何をすべきかに置いて結束した。
    ②経営者が深化側の惰性が探索側の勢いを削がないよう、支援、監督する。
    ③探索側の新しい組織を物理的、組織的に切り離なし、自力で成功できる人材、構造、文化を調整する。

    理想論ではなく、現実論として大企業が時代の変化、特に破壊的イノベーションに飲み込まれず生き残るためには、唯一無二の経営論であると思います。右手(深化)も左手(探索)も矛盾せず、対立せず両立させるために、長期ビジョン、深化側の探索側の特徴や求められる組織能力の違いを理解し、経営戦略を立てて行きたい。
    大企業で働く人には是非一読をお勧めしたい。




  • ◯深化がマネジメントの問題だとすれば、探索は基本的にリーダーシップの問題である。(140p)

    ◯必要な調整を展開できるのは、探索ユニットを分離したときに限られ、機能横断型チームやプロジェクトチームではうまくいかないのだ。(306p)

    ★放っておいたら資源は既存事業の深化に向かうので、リーダーシップを持って探索を行わなければならない。探索事業に必要な文化は異なるので分離しつつ、既存事業に潰されないよう、経営陣は支援しなければならない、ということが豊富な事例とともに書いてある。

  • 非常に面白く、実際には幾度となく
    苦しんでる内容で非常に参考になった。
    両利きを実際実行に移すには本書でもあるように
    これまでの組織で成功するまでには至らないことが多い。既存の慣性に打ち勝つには、既存の組織と離れることも必要というのが自分のこれまでの失敗からは心に残った。経営者、上位層の覚悟というか強い意志と我慢が必要だと思う。わかっていてできてないのが多くの日本企業かな。

  • ▶︎まだまだ浸透が足りないので読み直したい。
    =====
    ●知の探索
    自身・自社の既存の認知の範囲を超えて遠くに認知を広げていこうとする行為
    ●知の深化
    自身・自社の持ついて分野の知を継続して深掘りし磨き込んでいく行為
    ●成熟事業の成功要因(深化)
    漸進型の改善、顧客への細心の注意、
    厳密な実行
    ●新規事業の成功要因(探索)
    スピード、柔軟性、ミスへの耐性
    この両方を実現できる「組織能力」を両利きの経営。
    「イノベーションのジレンマ」を克服する解決策が両利きの経営。

    ●イノベーションストリーム
    縦軸:これまで事業してきた既存市場か新規市場か
    横軸:これまで用いてきた組織の力を使うか新しい組織の力が必要か

    ●両利きの経営実現のための3つの強み
    ①探索ユニットが大組織の資源を活用できそれが競争優位つながった場合。単なる資金的なものではなく、技術やブランドなどライバルが獲得に時間を要するもの。
    ②上位層の支援
    ベンチャーは既存事業にとって邪魔な存在や脅威とみなされることが多い。探索事業に資本を振り分ければ必然的に既存事業に再投資して得られる利益よりも知性が増していく。
    →経営層の継続的な支援がない限り探索ユニットは資源不足に。
    資源確保に加え、既存事業とのインターフェース管理・軋轢解消も。
    ③探索ユニットを大組織から分離させる
    古いマインドセットから生じる惰性によって新規事業の成長に必要な焦点がぼやける熱量の低下を招きかねない。 

    ●変化に直面した組織が生き残るにはリーダー相矛盾した2つのことをやる必要がある
    ①継続的な漸進型のイノベーション→ 既存の資産と組織能力を深化すること
    ②既存の資産と組織の力が新規参入者に対する競争優位となる新しい市場や技術を探索すること
    ★既存事業の売上高や利益にならない事みなされ、深化に過剰投資し探索に過小投資する傾向

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