- Amazon.co.jp ・本 (411ページ)
- / ISBN・EAN: 9784492534083
感想・レビュー・書評
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産業構造の変革に直面している、世界中ほぼすべての会社のための本。どうすれば効率性の向上によって既存の資産と組織能力を「深化・有効活用(exploitation)」しながら、十分に「探索・開拓(exploration)」するための準備ができるか、というテーマを掲げています。クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」を土台にしつつ、違うのはクリステンセンが「探索」組織は「深化」組織と距離を置き、独立で判断スピードを上げていく組織論がイノベーション実現の要諦であると主張しているのに対し、「探索」と「深化」の両立を高い次元でバランスとるマネージメント=「両利きの経営(ambidexterity)」というリーダーシップが必要だとしているところでしょう。冒頭のアマゾンでジェフ・ベソスが繰り返す「探索」と「深化」の繰り返しが圧倒的で、つまりベソスが持っているコンピテンシーを普通の経営者が持てるか?という問いかけに感じてしまいました。まさに「社長はつらいよ!」。IBMとシスコとの違い、コダックと富士フィルムは紙一重にもおもえます。
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既存事業の深化と新規事業の探索をどのように両立しイノベーションを起こし生き残るか指南する本。後半の和訳は分かりにくいが事例が圧倒的に豊富。深化により目先の利益にとらわれるサクセストラップ、自社ケイパの活用/非活用×新規/既存市場の2軸で、進化論に基づきイノベーションを整理するイノベーションストリーム、事業段階毎に異なる管理を行う両利き構造は観点のヒントになる。特に飲料容器メーカーボールの構造変化、シアーズのウッドの意思決定は実践的な両利き経営を理解しやすい。
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過去の成功体験から高度に効率化された組織やシステムを変更できない、いわゆる大企業病(サクセストラップ)に陥る原因と、サクセストラップを回避すべく、探索と深化の両利き経営を実行できるリーダーシップについて解説した良書。本文パート以外にも巻頭の入山さん、巻末の富山さんのレビューが、本書のエッセンスや解釈を鋭く、端的に纏めておりお薦めです。
両利き経営の成功・失敗例集としても読みごたえあります(ネットフリックス、Amazon、富士フィルム、コダック、シアーズ、IBM、HP、USA Todayなど)。
クリステンセンの提唱したイノベーションのジレンマでは、破壊的変化に直面すると探索と深化の両立は難しく、探索側のユニットをスピンアウトすることが原則に対し、オーライリーは、強いリーダーシップの下で両者は共存可能であり、そうすべきであるという点が大きく異なっていると感じた(深化側の組織力とシナジーを出しながら探索することが有効的)。
深化側のと探索側では求められる組織力が異なる。
・深化側→予測可能性、安定性、効率性、バラツキの削減とコントロール。同質的で連続性のある組織。
・探索側→検索、発見、スピード、自治、柔軟性、バラツキのある環境。多様的で非連続性のある組織。
両利きの経営のための3つのリーダーシップ
①探索と深化が対立することなく、結束可能なビジョンを提供する。
例USA Today 「いかにネットワークになるか」→既存の新聞事業も新規のオンラインコンテンツ事業もネットワークになるために何をすべきかに置いて結束した。
②経営者が深化側の惰性が探索側の勢いを削がないよう、支援、監督する。
③探索側の新しい組織を物理的、組織的に切り離なし、自力で成功できる人材、構造、文化を調整する。
理想論ではなく、現実論として大企業が時代の変化、特に破壊的イノベーションに飲み込まれず生き残るためには、唯一無二の経営論であると思います。右手(深化)も左手(探索)も矛盾せず、対立せず両立させるために、長期ビジョン、深化側の探索側の特徴や求められる組織能力の違いを理解し、経営戦略を立てて行きたい。
大企業で働く人には是非一読をお勧めしたい。
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◯深化がマネジメントの問題だとすれば、探索は基本的にリーダーシップの問題である。(140p)
◯必要な調整を展開できるのは、探索ユニットを分離したときに限られ、機能横断型チームやプロジェクトチームではうまくいかないのだ。(306p)
★放っておいたら資源は既存事業の深化に向かうので、リーダーシップを持って探索を行わなければならない。探索事業に必要な文化は異なるので分離しつつ、既存事業に潰されないよう、経営陣は支援しなければならない、ということが豊富な事例とともに書いてある。 -
非常に面白く、実際には幾度となく
苦しんでる内容で非常に参考になった。
両利きを実際実行に移すには本書でもあるように
これまでの組織で成功するまでには至らないことが多い。既存の慣性に打ち勝つには、既存の組織と離れることも必要というのが自分のこれまでの失敗からは心に残った。経営者、上位層の覚悟というか強い意志と我慢が必要だと思う。わかっていてできてないのが多くの日本企業かな。