グローバル投資のための地政学入門

  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492733387

作品紹介・あらすじ

英国EU離脱、米国大統領選、中国経済の減速、テロの多発、マイナス金利・・・・・・
為替、原油、株価、金利はどうなるのか?

世界各国の複雑な地政学リスクを、市場への影響を中心にわかりやすく解説!

感想・レビュー・書評

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  • 基本的な地政学の考え方をサクッと紹介し、アメリカの大統領選や中東勢力によるテロ、イギリスのEU離脱の背景を構造的に説明してくれている。海外の政治の動きにあまり関心がなかった自分にとっては、新しい要素が多く面白かった。2016年9月に出版されているが、その時点でトランプとヒラリーがかなり接戦になるであろうと予想してたのが印象的。

  • 今年になって興味を持ち始めった「地政学」と、投資という言葉に惹かれて、図書館の新着コーナーに置いてあるこの本を見つけました。

    投資をするためには、米国・欧州・中国が今後どのように振舞うかを予想することは重要なことですが、この本では、地政学的な観点から行っています。

    この本は、つい最近、次期米国大統領としてトランプ氏が決まる前に発刊されていますが、トランプの発言等は計算されつくされたものであり、それについて解説しています。例として、メキシコ国境に壁をつくると言っていますが、これをメキシコに金を出させるとしているので、メキシコが反対すれば壁を作る必要は無い、ということを解説していました。なるほど!

    この本においても、世界史の近代以降の歴史を、ざっくりと復習できる良い機会が得られました。

    以下は気になったポイントです。

    ・オスマン帝国の最盛期は、スレイマン1世(1520-1566)の時代で、その支配地域は、古代ローマ帝国の最盛期の4分の3を占めた(p41)

    ・ISにとっては、異教徒が自分たちの都合で決めた国境線を守る必然性はない、アラブ人からすると、スンニ派主体のISは主流派に属する(p42)

    ・近代国家の概念は、文化・社会的に似通った欧州キリスト教国のみを対象としていたが、18世紀に、ロシアと米国、19世紀には中南米諸国が国家として認められた。1856年にクリミア戦争に勝利したオスマン帝国が、第二次世界大戦後には、アジア・アフリカ諸国が国家承認を受けている(p43)

    ・米国は大統領を取り巻くチームが政権を担うというイメージ、政府主要ポストの多くが交代する。この点は日本と異なる(p49)

    ・米国では議会の権限が強い、大統領は議会に法案を提出できる権利も、予算案を提出する権利もない。すべての法案は議員立法(p52)

    ・1960年以降、共和党が議会において有利である。白人、高学歴、高齢、高収入に合致する共和党支持者の方が、ヒスパニック、若年層が多い民主党支持者よりも、投票率が高いから(p58)

    ・大統領が条約締結権限を行使するが、そのためには、上院の助言と承認(出席議員の3分の2の賛成)が求められるので、条約が批准できないケースが起きる。(p60)

    ・共和党はWASPを支持基盤とするが、米国社会ではWASP優位が崩れつつある。ただし、選挙においてヒスパニックの投票率は低いので、政治力は強くない(p64)

    ・米国発の政党は、フェデラリスト党と民主共和党、1800年に民主共和党が政権政党となり、フェデラリスト党は敗北、その後消滅した。民主共和党から分派した民主党が、1828年に政権に就いた(p66)

    ・トランプが大統領の場合、民主党によって選出されたイエレンは任期の切れる2018前に再任しないと予想される(p79)中間層を中心に減税する代わりに、1)富裕層の税額控除等の廃止、軽減、2)海外にため込まれた2.5兆ドルの企業利益の国内還流、3)企業の税制回避行為に対する規制が行われる(p80)

    ・米国には日本の戸籍、住民票にあたるものがないので、選挙権は18歳以上で、有権者登録を行ったものに限られる。米国市民は各居住地で登録の上、有権者資格を得る。登録の際、支持政党(無所属登録も可能)を申告するため、予備選挙や党員集会に参加可能(p83)

    ・2014年の連邦議会選挙では、白人、大学院卒、65歳以上、年収15万ドル以上の人の投票率が高い(’p83)

    ・トランプは共和党の中では、ヒスパニックに人気がある。選挙に行くのは、メキシコからの合法的な移民だから(p84)

    ・トランプはマスコミから過去の言動が食い違っていることを指摘されると、「自分はビジネスマンなので、環境が変われば、考えが変わるのは当然だ。そうでなければビジネスは成功しない」と反論している(p84)

    ・2002年の一般教書演説では、北朝鮮・イラン・イラクを悪の枢軸と呼び、その後に、シリア・リビア・キューバを追加(p100)

    ・米国が世界の治安を維持する手段として、1)軍事力のハイテク化、2)金融政策の有効化がある(p113)

    ・米国の大統領がだれになろうとも、孤立主義の回帰に変わりはないだろう(p129)

    ・神聖ローマ帝国の領邦国家は、1)大領邦の、オーストリア・プロイセン、2)中領邦の、バイエルン・ザクセン・マインツ、3)小領邦に分類される、1701年にベルリンを首都とするプロイセン王国が成立、1871年のドイツ帝国成立で、ようやく中央集権国家が築かれた(p137)

    ・英国がEUから離脱した最大の理由は、EUが独仏を中心とする大陸欧州連合だから、1961,1967年に英国が加盟を申請したが、フランスドゴール大統領が二度とも拒否した(p142)

    ・2004年に東欧10か国が一斉加盟し、西欧同盟が東欧を含む、大欧州同盟となった(p143)

    ・英国とEUは2年間の離脱交渉を行う、この期間は、無期限で延長可能である。交渉期間中は、英国はEU加盟国として、今と同じ権利と義務を有する。英国の国民投票は、法的拘束力を持たない(p149)

    ・882年に東スラブ人の国として、キエフを首都とするキエフ大公国(ルーシ)が成立した、ウクライナの首都キエフがロシアの国としてのルーツである、1240年にモンゴル帝国がキエフを占領した。スラブ人がロシアを支配するのは15世紀以降(p154)

    ・中国の軍トップである、党中央軍事委員会主席は、大変重要なポスト、建国後66年で、六人(毛沢東、華国鋒、鄧小平、江沢民、胡錦濤、習近平)しかいない(p171)

    ・日銀は当座預金を3段階に分けた、1)基礎残高、0.1%の金利、全体の70-80%、2)マクロ加算残高、金利ゼロ、3)政策金利残高、全体の10-20%で、マイナス金利(-0.1%)(p189)

    ・トランプ、クリントンのどちらが大統領になっても、フォローとなる業種は、インフラ関連、逆の業種は、製薬・多国籍企業である(p214)

    ・トランプが勝利した場合の日本に与える影響は、1)米国株の上昇が抑制、2)円高、3)TPP不承認により貿易活性化が期待できない、4)在日米軍の費用分担増加、5)中国と米国の関係悪化を余波を受けるリスク(p215)

    2016年11月19日作成

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著者プロフィール

一橋大学大学院経営管理研究科特任教授、一橋大学大学院フィンテック研究フォーラム代表。
一橋大学大学院修了、博士(経営法)。シティグループ証券取締役副会長、経済産業省企業価値研究会委員、内閣官房経済部市場動向研究会委員、北京大学日本研究センター特約研究員、慶應義塾大学講師などを歴任。
2006~2010年日経アナリストランキング日本株ストラテジスト部門5年連続1位。

「2020年 『金融が解る 世界の歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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