会計チャージ―決算書の本質を4つの目線でつかむ

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  • 中央経済社
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784502195310

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  • 「数字」は、コミュニケーションツール。コミュニケーションに必要となる、会計やその周辺領域の知識をビジネスパーソンが身につける、これを「会計チャージ」という。「3日で120億円、売上を上げろ、チャレンジ!」こうした馬鹿げた指示で世界を震撼させたあの会社の経営者も本当の意味で経営に必要な数字の意味を理解していなかった。ビジネスマンだけでなく職業会計人にとっても最低限必要な会計知識を本書を通じて身につけることができる。改めて企業会計の実務を学びたい人にはお勧めの書籍だ。
    P151
    ■不正と仮定と引当金
    日本には、引当金に係る包括的ルールがないため、都合よく引当計上され、不正な経理操作が行われることも実際にあります。たとえば、本来関係のないコストやロスまでも引当計上し、翌期以降で過大引当額の取崩益を計上するビッグパスといわれる手法などがあります。
    こうした不正な会計処理が行われないようにするには, 引当計上の妥当性を検証する必要があります。引当計上の根拠となる仮定の性質、仮定の目的適合性と網羅性、使用した仮定の整合性、仮定を裏付ける文書などを検討することになります。
    中でも、公正価値以外で会計上の見積りが必要な、貸倒引当金・製品保証引当金、工事損失引当金、訴訟損失引当金等の引当計上には留意が必要です。
    観察不能な入力数値を使用する独自モデルの場合、会計上の見積りの不確実性が高く、 十分かつ適切な証拠を入手する必要があります。
    P166
    ■ EVAを支えるCAPMの特殊性
    一見正しそうに見えますが、よく考えてください。山ほど仮定が入っています。1つの仮定が崩れるだけで結果に影響が出てしまうわけです。
    実は、EVAを支えるCAPM理論でノーベル賞を受賞した受賞者本人たちが、なんと自らの理論に疑問を投げかけているのです。
    ウィリアム·シャープ氏曰く
    『CAPMはまったく特殊ケースだ』『まったく極端な仮定だ』
    ハリー·マーコヴィッツ氏曰く
    『CAPMは、地球に大気がないとしたならばという仮定のもとで地球上の物体の運動を研究するようなものだ』
    この問題発言は、ピーター·L·バーンスタイン著『アルファを求める男たち~金融理論を投資戦略に進化させた17人の物語』(東洋経済新報社)に登場しますが、ノーベル賞を受賞した本人が「CAPM理論はまったく特殊ケースだ」と暴露しているのは、あまりに衝撃的で、自虐的です。
    にもかかわらず、CAPM理論をベースとした評価手法が現実には幅を利かせています。これは、167ページの図のような『会計直観力』を理解した程度でも何となくわかる、そうした計算ロジックの利便性があるからでしょう。
    一方で、表面上は小難しい計算ロジックを打ち立てているので、内実を知らない人間からすれば「何か正しそうだ」という錯覚が生まれます。しかも、「ノーベル賞受賞者が開発した評価手法」といわれれば、その権威性が安心感を生み出しもします。事実だと思いこませる効果は十分です。
    いずれにしても、1つの指標だけで分析することは何があっても避けなければならないし、みんなが使っているから安心だという錯覚も捨てる必要があります。特に小難しい理論をぶちまけて、あたかも正しいように見せるテクニックには要注意です。

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著者プロフィール

日本公認会計士協会東京会コンピュータ委員長(通算3期)、同・経営・業務・税務の各委員、中小企業基盤整備機構IT 推進アドバイザー、上場会社役員、第三者委員会委員などを歴任。「BIG4」と呼ばれる大手監査法人で金融機関やメーカーなどの法定監査、IT 監査、IPO 支援、M&A 支援などの業務に従事後、独立。3大メガバンク系シンクタンクや自治体などでの講演活動も行う。『会社四季報から始める企業分析 最強の会計力』(東洋経済新報社、共著)、『経営を強くする 会計7つのルール』(ダイヤモンド社、別途翻訳本)、『Excelによる不正発見法 CAATで粉飾・横領はこう見抜く』(中央経済社)ほか、会計分野の著作も上梓。

「2021年 『モダンExcel入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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