非上場株式の税務(第2版)

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  • 中央経済社
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784502239915

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  • 非上場株式の譲渡に関する課税上の諸問題を個人→法人、個人→個人、法人→法人別など取引先別に解説。複雑な事案についてもわかり易く解説されており、知識の整理ができた。お勧めの書籍だ。
    P125
    法人税法における時価
    法人は経済的合理性を行動規範として活動するものと考えられていますが、同族会社の株式のように市場価格のない株式の「時価」の測定は難しいところです。そこで法人税基本通達及び財産評価基本通達では、「時価」について次のように定義しています。
    法人税基本通達の「時価」・・・その時において譲渡される場合に通常付される価額
    財産評価基本通達の「時価」・・・財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額

    法人税における有価証券の課税上の「時価」は、通常行われる株式取引に係る時価を意味するため「その時において譲渡される場合に通常付される価額」と表現されています。一方、財産評価基本通達は相続又は贈与という一定時点における評価額を「時価」としているため、時価の理論値、「財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額」と表現されています。ネットオークション価格のように決定される価格を意味しているものと思われます。
    ~つまり法人が所有する「取引相場のない株式」の場合の時価は、財産評価基本通達による純資産評価額から評価差額に対する法人税等相当額を控除しないものとしているので、個人課税における「取引相場のない株式」評価とは異なっています。個人における時価よりも高い評価額が時価とされています。ここに法人における時価の特徴がありますので注意が必要です。
    また、この通常要する価額に比して「有利な金額」で株式を発行しても10%程度の差異は認めています(法基通2-3-7)。これについて金子雅実『種類株式』(清文社、平成22年、313頁)及び『法人税基本通達逐条解説(7訂版)』(税務研究会、平成26年)によると、上場会社が第三者割当増資に際して多少ディスカウントすることを容認しつつも、日本証券業協会が「第三者割当増資の取扱いに関する指針」おいて(ママ)一定の条件の下で時価0.9以上の価額であることとしていることを受けて、課税上の配慮を示したものといわれています。
    この考え方は「非上場の同族会社において、株主間の贈与を意図して時価の10%以内の範囲で発行価額を決定するのような(ママ)ケースについてまで、ディスカウントを許容する趣旨ではないと考えられる」金子前掲書、313頁) といわれており重要な留意点です。しかし、理論的な時価と取引価額とに差額が生じることがあっても、その差異が、社会情勢の変化や社会通念上認められる価値変化であれば、課税上、問題とならないと考えられます。
    P169
    寄附金における時価
    法人における販売費及びー般管理費などは、会計上、費用として計上されますが、所得計算上、特定の費用については別段の定めによって損金の額に算入することを制限しています。その1つに寄附金があり、法人税法は寄附金を定義し、寄附金の支出について損金算入を制限しています。そのため法人税法では寄附金として2つのものを定義しています。
    今日では時価と相違すると直ちに寄附金との話が生じますが、寄附金の損金算入が制限されたのは、太平洋戦争が勃発した昭和16年の翌年で戦費調達を目的として法人税率を大幅に引き上げたところ、寄附金が急増し所得金額が減少したので、急遽、昭和17年(1942)の税制改正によって寄附金の損金算入に限度額が導入されたのです。
    法人においても社会的活動を行うので、ある程度の寄附金が生じるのは当然であり、一定額の寄附金については損金算入されるように損金算入制限額が設けられています。

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