- Amazon.co.jp ・本 (380ページ)
- / ISBN・EAN: 9784502288814
作品紹介・あらすじ
会社合併のような事業の拡大を目指す「積極的な」終わらせ方から、破産のような「消極的な」終わらせ方まで。終局時の会社手続のすべてがわかる法務・財務・経理部必携の書。
感想・レビュー・書評
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実務的にトピックスな内容だったので期待して購入・通読してみたが、序盤は当たり前な内容を正確に記述するのみで実務上の悩みや筆者の私見が読めず退屈な内容であった。例えば、合併の場合、申告時点では被合併法人はすでに存在していないので、申告書の提出は合併法人が本店所在地の税務署長に対して提出するのはわかるが(P203)、では地方税はどこに提出したら良いのか?国税とは違った取り扱いをするのではないか?といったマニアックな実務まで触れてくれると退屈しなかったと思う。後半の法的・私的整理を利用した会社再建のあたりから興味深くなったが、もう少し実務経験に基づく臨場感のある解説や私見を記載して欲しかった。読む前は期待していただけに残念な書籍だった。
P156
なお、弁済期が到来していない貨付金であっても、弁済期がいまだ来ていないという期限の利益を債務者に放棄してもらえば、弁済期が到来することになるため、検査役の調査不要の現物出資の対象とすることができます。
このように貸付金を利用した現物出資によるDESは、検査役の調査といった手続的な負担を省いて、貸付金を株式に振り替えることができるため、企業再建に使いやすい手段として利用されています。
なお、 DESは債務超過に陥った会社の再建手法として利用されることが多いため、その毀損した財務内容を債権額にも反映させるべきであって、その貸付金の価額については額面金額(券面額)よりも低い評価額(時価)であるべきと考える見解もあります。
すなわち、貸付金の額面金額(券面)を基準にすれば足りるとする見解(券面額説)のほかに、債務者の毀損した財務内容を反映した債権の評価額(時価)を基準とすべきとする見解(評価額説)です。
しかし、評価額説を採用すると、その評価を行うためのコストや時間を費やすことになります。
機動的な現物出資を実現すべく、検査役による調査という手続的な負担をなくしたにもかかわらず、評価額説を採用してしまうと、結局、 コストや時間を費やすことになります。
そこで、会社法の下では、貸付金のような金銭債権の現物出資については、貸付金の額面金額(券面)を基準にすれば足りるとする券面額説が採用されていると一般的に考えられています(注7)。
(注7)立案担当者による新会社法の解説(別冊商事法務295) 57頁参照
P248
会計処理
株式交換によって債務超過状態で新設された持株会社の会計処理は、新設分割の場合と同様に、資本金0円、資本準備金0円、利益準備金0円となり、その他利益剰余金がマイナスとなります。
この結果、債務超過会社が設立されることになりますが、このような会社の設立も認められており、現実に利用された例もあります。
P271
デメリット
再建型私的整理のデメリットは、当事者間の合意に基づいて債務整理を進めることになるため、対象となる金融機関すべての同意が必要となります。
そのため、金融機関が1社でも反対した場合、再建型私的整理での再建を行うことは困難となりますので事前の調整が重要になってきます。
このような場合、多数決原理に基づいて再建を図ることができる民事再生や会社更生といった法的整理を検討することになります。
このように対象となるすべての金融機関の同意が必要であることから、再建型私的整理ではメインバンクの協力も必要不可欠といえます。そのため、再建型私的整理では、まずはメインバンクに相談を行い、その協力を得ることから始めることになります。
P273
仮に清算型の私的整理を選択したとしても、あくまで当事者間の話合いで債務整理を進めていくため、手続が不透明となり、残余財産の分配も債権者間の平等を害することになりかねません。
とりわけ、現在では、法人破産も低廉な費用で簡易迅速に行うことができるようになったため、会社が破綻した場合、多くの事案で破産といった法的整理が利用されています。
しかし、低康になったとはいえ法人破産するには、それなりの費用がかかるため、その費用すら捻出できない会社が、破綻後に破産といった法的整理すら行わず、そのまま放置されているケースも散見されます。
この場合、その会社は休眠状態に入ることになり、法的な状態としては中途半端なものになります。
そのような状況になると、その会社の取引先についても悪影響が及びます。取引先が保有している当該会社に対する債権についての処理を行うことが難しくなるのです。
法的手続や私的手続など第三者による整理がなされた場合、債権の処理はそれら合意に基づいて行われるため、その処理はスムーズですが、放置されたままだと取引先が償却などを行うことも難しくなるのです。
実務上、清算型私的整理を行うケースはほとんど見られませんが、法的手続を含め整理を行わず放置すると、取引先にも多大な負担を強いることになるのです。
以上のことからも法的・私的のいかんを問わず、整理をすることが取引先への悪影響を最小限にするための方法だといえるでしょう。詳細をみるコメント0件をすべて表示