新しい取締役会の運営と経営判断原則〈第2版〉

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  • 中央経済社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784502337314

作品紹介・あらすじ

ガバナンスの要として社外取締役が注目され、幅広く人材が求められる一方、重すぎる法的責任が就任への足枷となっている。訴訟リスクを想定した取締役会の運営を解説する。

感想・レビュー・書評

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  • 上場企業に要求されている改訂コーポレートガバナンス・コードを解説しつつ、取締役会の運営と経営判断原則について解説された書籍。MBOや親子会社間取引などの場面では会社と取締役の利害が対立する。その場合には独立社外取締役が存在価値を見出す点強調して解説されていた。今後あるべき取締役会の運営方法について学びたい人にはお勧めの書籍だ。
    P107
    MBO(マネジメント・バイアウト:経営陣による会社支配権の取得)とともに少数株主のスクィーズアウト(直訳すると“締出し")に用いられる全部取得条項付種類株式の取得に関し、改正法は次のような規定を設けた。
    すなわち、事前備置手続(171条の2)、事後備置手続(173条の2)等を設けるとともに、その取得が法令または定款に違反する場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は差止めを請求することができるものとした(171条の3)。また、全部取得条項付種類株式の取得価格決定の申立ては、取得日の20日前の日から取得日の前日までの間にしなければならないものとし(172条1項)、その申立てをした株主は171条1項の株主総会の決議により定められた取得対価の交付を受けないものとした(173条2項)。
    MBOにおいては、経営陣が会社の株式を買い集めるので、なるべく低い価格で取得したいため意図的に株価を引き下げているとの疑いを招きかねないとされてきた。また、これに伴うスクィーズアウトにさいしても、従来、株式買取請求権または価格決定請求権が確保できないおそれがあると指摘されていた。
    そのため、MBOに関してはとくに「意思決定過程における恣意性の排除」をどう図ったらよいかが論じられてきた。経済産業省・企業価値研究会「企業価値の向上及び公正な手続確保のための経営者によ る企業買収(MBO)に関する報告書」(経済産業省)は、「(社外役員が存在する場合には)当該役員、又は独立した第三者委員会等への諮問(又はこれらの者によるMBOを行う取締役との交渉)、及びその結果なされた判断の尊重」、「意思決定方法に関し、弁護士・アドバイザー等による独立したアドバイスを取得すること及びその名称を明らかにすること」などを提言したことがある。
    経営判断原則の各論的適用場面の1つといってよいであろう。
    P152
    6 取締役会の議長について
    諸外国のCGコードには、取締役会の議長は社外取締役が務めなければならないと明記するものもある。
    日本でも,2017年頃から、取締役会議長に社外取締役を据える上場企業が目立つようになった。それでも、経済産業省によると、東京証券取引所一部・二部上場企業で、会長・社長・CEOの議長兼務は98%を超えている。
    取締役会議長を経営執行のトップ(通常は、社長)が務めるのは、経営判断原則適用上は問題がある。会社と取締役の利益相反的内容の決議事項には経営判断原則の適用はより難しい。まして、それを審議する取締役会の議長が執行者自身でかつ最高経営責任者を兼ねるとなると、会議体における意思決定プロセスの適正さを疑われることにもなりかねないからである。

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著者プロフィール

長谷川俊明法律事務所 代表。
1973年早稲田大学法学部卒業、1977年弁護士登録(第一東京弁護士会)、1978年ワシントン大学法学修士。
1978年-79年サリバン・クロムウェル法律事務所(ニューヨーク)勤務、1979年-80年スローター・アンド・メイ(ロンドン)法律事務所勤務。


現在、長谷川俊明法律事務所代表弁護士。2020年現在、電通取締役(監査等委員・独立社外取締役)を務めている。

「2022年 『アフターコロナの「法的社会」日本 社会・ビジネスの道筋と転換点を読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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