CFOポリシー〈第3版〉: 財務・非財務戦略による価値創造

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  • 中央経済グループパブリッシング
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784502461514

作品紹介・あらすじ

「CFОは企業価値の番人であれ、企業価値を創造する者であれ」は、真のCFОを定義する言葉。第3版では、ESGの定量化と、インパクト加重会計の項目を大幅に加筆修正。

感想・レビュー・書評

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  • 【読書記録用の個人の感想です】

    「非財務資本をエクイティ・スプレッドと同期化できれば、PBRは大きく上昇して企業価値の最大化が果たせる」

    ■マーカー箇所の要約Memo
    ・大半の投資家は長期的なPBRにESGの価値を折り込むべきと考えており、そこの関連性の説明をしほしいと要望している
    ・企業価値を高める戦略の支柱は①ROEを中長期的に高めること②本源的な価値を高めるための投資を積極的に行うこと③高度な投資採択基準で採択して全て賄った上で、余剰資本及び内部留保の還元を行うこと。これらの価値創造のための財務戦略を管理会計上の指標や施策に落とし込み、事業部の各現場に浸透していくことで有機的に結びつけていけば、全社的な価値向上に向けた変革の一助となる。
    ・「企業価値の評価においてPLやBSなどの会計数値の説明能力が50%までに低下」しており、非財務資本が企業価値に占める割合が増えていることが推察される。
    ・長期の市場付加価値(PBR1倍超えの部分)の評価には、非財務資本の価値も遅延浸透効果も含めて織り込まれている蓋然性が高い。
    ・正のエクイティ・スプレッドが創出する市場付加価値は「非財務資本関連」であるとしているが、企業理念や人材の価値などの非財務情報を重視する企業サイドの視点ともエクイティ・スプレッドは同期化が可能であると考えられる。
    ・エクイティ・スプデッドによる価値創造は、ESGを始めとする非財務資本の価値と市場付加価値創造を経由し、遅延して長期的には整合性がある。
    ・柳モデルは「非財務資本とエクイティ・スプレッドの同期化モデル」
    ・人件費では6-9年遅延して、研究会蓮日では6-12年遅延してPBRを高めるという相関関係
    ・人件費を1割増加させることで、7年後にPBRが2.6%上昇するという示唆
    ・柳モデルを活用した調査でも、人的資本に関する多くの取り組みが企業価値の向上に寄与していることが示唆されている

    ■感想
    人事界隈のバズワードとして「人的資本」が謳われるようになって久しいが、企業価値の観点から落とし込むことで、初めて人的資本の意義が理解できた。
    人的資本の話題に違和感を感じるのは「それが何にどのように繋がるのか」について肌感が持てないところだった。
    「柳モデル」のような非財務指標とエクイティ・スプレッドの同期化モデルのようなロジックがあれば納得できるなと感じた。

    私も含めてですが、財務観点から人的資本を理解できている人事は相当少ないんだろうなというのが所感。
    伊藤先生の「企業価値経営」を併読しているが、人的資本と企業価値の繋がりは捉えられなかったので、この本を読んで企業価値における人的資本の繋がりが理解できたので、「企業価値経営」もより深く読めそう。
    ただ、財務の基本的知識が乏しいので、基本知識をもっとつけなきゃなとも個人的に痛感。避けてきた分野感があったので向き合おう。。。

    非財務指標が長期の市場付加価値に影響するというのは、コア・コンピタンス理論にも通ずるところがあると感じた。コア・コンピタンスのケイパビリティ(企業能力)は知的資本・人的資本等が該当し、その要件が①模倣困難性②顧客価値の創出③他事業への転用性という三点と合致する。
    ケイパビリティ論が出てくる場合、ポジショニング理論も無視できないので、そこも勘案すると「儲かる市場で儲かるポジションニングを確保した企業だから、非財務指標への投資もできるのでは」と感じてしまう部分はどうしてもある。人材にかかる費用(人件費含む)をコストとして捉えるのか、投資として捉えられるのかは「本業が儲かってるか」にもよるよなと正直感じる。
    そうなってくると、キーになるのは「経営者・経営層、もしくは意思決定者が、長期的な企業価値に重きをどの程度置くのか。そしてそこに対しての非財務指標の影響を理解しているか」なのか。
    でも「全体賛成、各論反対」になりがちだよな、こういう話。「儲かってないのに投資できるか」という気持ちは理解できるし、そこに対して納得できる素材をちゃんと提供しなきゃそりゃ動けないよな。

    「人的資本も包含される非財務指標に投資を行うことで企業価値は向上できる」というのは分かったが、投資の中身も大事だよねと思うけど、そこについては「人材の育成」の項目で「本来は研修や育成に関して各社が従業員の属性ごとに方針や目的、それを達成するための施策が整理されているべきである」「人材の採用〜定着〜育成の流れ全体、ひいては企業活動全体の、一貫して施策と効果の繋がりを確認していくべきと言えるだろう」とのみ記載。(人事のHowtoについて書かれている本でないので全然いいんですが、簡単に言うね〜wってちょっと笑った)
    いわゆる「戦略人事」的な動きかなーと思いつつ、その実行においてぶつかるのは「人事のケイパビリティ」の問題。
    企業価値の観点と同時に事業運営の観点も踏まえて人事戦略をどう結びつけるかについてはHRBP(事業部人事的な意味ではなく本来の意味でのHRBP)的な役割も必要だし、ちゃんと投資対効果を得ていくための設計者としてCoEも必要だし。
    「人事の活動の中での人事」になるのか「経営の中での人事」になるのかは、人事担当がどの程度の視野で物事見れているかにもよるし、実際に実装できるのかも人事担当の能力にもよるし。
    やっぱ、ここ闇が深いなぁ。。。

    いつもと違う視点で物事を考えることで、課題感が増えて感じだったんで、読んで良かったです。

  • 2023年3月に、東証からPBRやROEなどの改善要請が、プライム/スタンダード市場の上場会社に出された状況下にあり、資本収益性や成長性に関する説明が求められる企業にとって参考になる考え方が本書に展開されていると思う。
    短期的な施策でPBRを向上させたとしても、将来稼得利益の実現計画が十分に説明できなれば、結果、1倍を適正価格として収斂するのではないかと考える者として、長期的な施策立案のきっかけになる考え方の一つではないかと感じた。
    自社の特長を生かした将来稼得利益とESG関連の取組みを投資家に丁寧に説明することは、必須ではないかと考えた。

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著者プロフィール

エーザイ株式会社常務執行役CFO(最高財務責任者)、早稲田大学大学院会計研究科客員教授
1985年早稲田大学商学部卒業、米国サンダーバード国際経営大学院MBA (withDistinction)取得、京都大学博士(経済学)。銀行支店長、メーカー財務部長、UBS証券Executive Directorなどを経て現職。東京証券取引所上場制度整備懇談会委員、東京証券取引所ディスクロージャー部会委員、日本管理会計学会常務理事も務める。
主な著書に『Corporate Governance and Value Creation in Japan 』(英文、Springer社)、『ROE経営と見えない価値』(編著、中央経済社)、『ROE革命の財務戦略』『管理会計の改善マニュアル』(いずれも中央経済社)、『企業価値向上のための財務会計リテラシー』(共著、日本経済新聞出版社)がある。

「2019年 『ROEを超える企業価値創造』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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