誕生国産スパイ衛星: 独自情報網と日米同盟
- 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版 (2005年5月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
- / ISBN・EAN: 9784532165147
作品紹介・あらすじ
2500億円超の巨費を投じた「情報収集衛星=スパイ衛星」の謎と実像を追う。
感想・レビュー・書評
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情報収集衛星が誕生する過程で、省内、アメリカ、国内メーカー、中国や北朝鮮などの隣国との関係と相対する動きについて綿密に記している。
・情報収集の分野では当時米国が圧倒的な技術力を持っており、自国の衛星を持たない日本は米国からもたらされる情報への依存度が強かった。しかし、北朝鮮の弾道ミサイルの動きについて、米国が必ずしも即時に情報を提供していないことへの懸念が強まり、日本の情報インフラの独立性を担保する目的で情報収集衛星の機運が高まった。
・当時の日本の技術力では要求性能を満たせない懸念があり、姿勢制御のための三軸リアクションホイールが実現できないなど技術的な壁があった。また米国の衛星を購入すれば半額で済むなど費用面での問題もあったが、自国の宇宙技術の向上と、部品をブラックボックス化させないために国産を前提として開発された。
・情報収集衛星は宇宙の平和利用に抵触しないために災害対応も含めた多目的多機能衛星とされた。ただし、そのような一般化を進めることは、政府の調達ガイドラインに抵触し公開入札を適用しなければならない。そのため、情報収集衛星は「総合的な危機管理衛星」であり広い意味で日本の安全を確保する衛星であると解釈することでその、平和利用と調達ガイドラインをすり抜けることができた。
・メーカーでは当初は日本電気が先行して研究していたが、防衛省水増し請求問題により指名停止となっており、三菱電機が開発を受注した。
・省内では当社は外務者や文科省が主導しており、画像分析能力のある防衛省は一歩引いた姿勢をとっていた。しかし、開発が本格化するにつれ防衛省の存在感が増し情報管理の仕組みは防衛省の考え方が浸透していった。
・情報収集衛星は2003年に無事打ち上げられたが、最初期の二機体制では、2004年の中国潜水艦の領海侵入に対して有効な情報を得ることができず、執筆時点では目論見通りの役目を果たしているとは言い難い。これからの機数増による体制強化に期待。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「純国産」「準国産」「米国製」・・・これらを「サイバー防衛」分野に読み替えるとどうなるか、非常に興味深い。さらに、「情報の収集・分析」のインフラ化、宇宙利用の展開など、「サイバー防衛」関連と共通する課題もある。