どうやって社員が会社を変えたのか: 企業変革ドキュメンタリー

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532198251

作品紹介・あらすじ

リアルな変革は一筋縄では進まない!
いまこそ明かされる改革のストーリー

◆ストーリーテリングによる企業風土改革
ストーリー(物語力)で個人や組織の問題を解決し、新しいビジョンをつくって変革していく「ストーリーテリング」。本書は、金井教授がストーリーテリングの視点から、閉塞状況にある日本企業を変革するために何が必要かを、柴田氏と長時間議論した成果をもとに編集、その処方箋を説き明かします。
改革のためのストーリーをトップとコアメンバーがどのようにつくり、「ありたい姿」を全社に浸透させ、「変革と戦略」を実行させていくのか、ストーリーテリングの手法と風土改革論からアプローチするユニークな実践的経営書です。

◆すべて実名の臨場感
金井教授が組織変革手法の歴史的転換点として最も重視する、90年代の「名門いすゞの衰退から起死回生への変革ストーリー」を中軸にしながら、変革当事者のトップとコアメンバーが「語り部」として登場。柴田氏がいまに通じる「日本型ビジョナリーカンパニーの法則」を各章のテーマに沿って解説していきます。
金井教授は各章でどう応用できるかの解釈・コメントを加え、さらに他の「組織開発・ストーリーテリング」手法の有効な活用法を説きます。

感想・レビュー・書評

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  • 内発的動機をもつ社員、それを支援する同僚や役員、誠実なコンサルタントが、粘りづよく取り組んだ時の大きな成果に勇気づけられた。

  • 1990年代のいすゞ変革の話。

    ◯チームを教育するアメリカ、個人主義が進む日本
    チームワーク成立に必要なこと。
    1. 目指すものの共有
    2. 相互の信頼関係
    似て比なる気遣い、非効率さが生産性の悪化、余裕のなさを生んでいる。

    ◯柴田さんの生い立ち
    大学卒業後特にやりたいことが無かったところ、たまたま知り合った人から産休の教師の代わりをやらないかと言われ、教師をやる。

    理想の押し付けをしてきたが、「先生はこうなれと言うけど、どうすれば、なれるかは言わない」と言われ、教師の仕事に真剣に向き合うようになる。

    三年で辞め、大学院へ行くため必要な外国語を学ぶためドイツへ留学(コツコツ学ぶのは苦手だが、人と話すのは得意)。

    帰国後大学院で修士を取り、博士一年目にドイツ語需要の高まりを狙ってドイツ語学校を創設。

    受講者同士のコミュニケーションを重視し、フレンドリーな先生を選ぶと、楽しいと評判になり、当時最大の学校にまで成長した。

    起業家精神のまま、様々なことにチャレンジ、 日産の部課長級の教育に関わったところから、人生を賭ける目標が定まり風土改革の道に進んだ。

    ◯いすゞの改革
    いすゞの状況は我々に近く、業績不振の中、縦割りで非協力的な運営がされていた。
    トップダウンでTCQ(総合的品質管理)の推進をトヨタに習って実行。経営者と従業員の信頼も無かったため、やらせが横行して社内は荒廃した。
    加えてデミング賞獲得へ社長の意思へむけ、強引に進んだ。

    改革チームの進言で、社長がデミング賞への挑戦を断念し、業績不振の責任と合わせて退任。後任の関社長は風土改革の先人に立つことを含めたメッセージを発信し、自らも変わることを宣言した。 これは社長の直筆でそれまでの企画部門が作成したものとは一線を画した。

    モットーは
    1. 重点主義(持っているリソース以上に戦線拡大している現状の是正)
    2. 現場第一主義
    3. 自責完遂(決めるのが遅く、責任の所在が曖昧、セクショナリズム)
    4. 壁は自ら破る

    経営陣が改革の先頭に立つことを繰り返し強調。銀行団からのウケも良く、社長自ら現場に出て社員との交流を深めた。

    乗用車部門からの撤退という大きな決断(選択と集中)

    ◯いすゞの歴史
    トラックとディーゼルエンジンを作る国策企業、トヨタ、日産と並ぶ御三家、トラックを運送会社に売れば成長できた。

    ◯仕掛け人、北村さん
    柴田さんの「何が、日産自動車を、買えたか」を読んで興味を持った。
    この本と、社員の活力とアイデアを使った創造的な風土改革を進めるべきという趣旨の直訴状を打ち首覚悟で社長に送った。
    ただし、その前には理解ある役員に同様の趣旨の手紙を送り反応を伺っておいた。

    ◯風土改革プロセス
    ・全社ではなく、やりやすいところから改革を進め、温度差を作ると自動的に波及する。
    ・強豪を利すること以外は隠す必要なし、正しい情報を開示し、皆が自分で判断できるようにする
    ・社長と現場の本音座談会をやり、社内報で内容を開示。
    ・オールいすゞ100人委員会を公式に発足。部長級を集めて始めたが、中堅若手が来るようになってから盛り上がり始めた。「会社からいなくなる人がやっても無駄だから、僕らにやらせろ」というひとが出てきた。
    ・ルールは、出入り自由、事務局はなく運営はそれぞれの委員会任せ。

    ◯議論を進めるときの視点
    1. 儲からない仕事の仕方をしてないか
    2. 1の前提となる社内常識は何か
    3. 今後基づくべき常識や価値観
    4. 3を実現するための具体的行動
    5. 4を行動基準として表せるか

    問題の顕在化と共有に主眼を置いた。

    ◯議論のルール
    1. 本音でやる
    2. 発表は目的にしない
    3. 個人攻撃はなし
    4. 実行に至るまで自主的に議論を継続
    5. 上下関係を気にし過ぎない
    6. 議論の内容を書き留める
    7. 経営幹部はメンバーと同じ視点で話す

    ◯見えてきた問題
    1. 行き過ぎた部分最適によるセクショナリズム
    2. 辻褄合わせが大事にされ、ウソが混ざっていた
    3. やらされ感、言われたことをやればいい

    ◯風土改革を行った人達の変化
    1. 評論家から当事者に変貌
    2. 管理より経営の感覚が身につく
    3. 問題解決より問題発見を重視。問題がわかれば解決しようとする人は出て来る。
    4. 仕事力(話す力)よりも人間力(聞く力)が備わる

    ◯北村さんのスタンス
    ある時までは敵はどんどんなぎ倒していくスタンス。専務に「人間性が今ひとつだから、人から色々言われるんだ。敵を受け入れるくらいの幅でやらんとだめだ」と諭された。

    ◯オフサイトミーティング
    テーマも結論も設けない。まずは時間無制限で自分語りをしてもらう。共感と安心感が生まれ、関係性が変わる。自己認識が深まるとともに未来志向になる。
    役員同士は表面上うまくやっていても、お互いのテリトリーを侵さないよう利害が絡みそうな際どい話は避けている。
    本来会社全体の立場で考えないといけないが、社長を除き自分門の立場で考えてしまう。
    しかし皆実は常識のあるまともな人達で、腹を割って話す機会があれば信頼関係は良くなり、役員がチームとなって動き出す

    ◯スポンサーシップ
    社員の活動を支援する経営者たちの役割が大事。

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著者プロフィール

株式会社スコラ・コンサルト代表
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。大学院在学中にドイツ語語学院を始めた学生起業家のひとり。30代の頃にはNHKテレビ語学番組の講師を務めるなど幅広い経験を持つ。ビジネス教育の会社を設立後、企業風土・体質の改革に独自の手法を考案し実践している。

「2020年 『なぜ、それでも会社は変われないのか 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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