ソーシャルメディア四半世紀: 情報資本主義に飲み込まれる時間とコンテンツ
- 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版 (2018年6月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (541ページ)
- / ISBN・EAN: 9784532322182
作品紹介・あらすじ
ウェブ日記、ブログ、口コミサイト、SNS、ソーシャルゲーム――。
かつて夢に見たウェブの進化はどこへ向かったのか?
価格.com、@cosme、はてな、食べログ、GREE、mixi、ピクシブetc..
著名ネット起業家の声から国内ソーシャルメディアの25年間を振り返る!
国内ソーシャルメディア企業の「これまで」を俯瞰し、
「これから」のネット関連ビジネス・社会の羅針盤となる一冊!
◆気鋭の社会学者が2001年から5年おきに計4回、国内主要ネットメディア企業に行った定性調査から
各社のユーザーコンテンツ(UGM)事業の勃興盛衰を詳述したネットの産業史的な色合いもある作品。
◆対象事業者は20社で、価格.com、@cosme、はてな、食べログ、グリー、mixi、ニコニコ動画、ピクシブ、
レストランガイド、みんなの就職、映画生活等を含む。取材対象者は、@コスメ吉松徹郎、グリー田中良和、
はてな近藤淳也、メルカリ山田進太郎ほか著名起業家たち約50人。
◆2001年当初は書き手の自由な書き込みによるウェブ日記、テキストサイトの時代、
ユーザーコミュニティ、口コミサイト、SNSなど規模拡大により、運営方法、収益構造も変わり、
コンテンツの質よりもマネタイズが優先され、大半のサイトの収益源は広告主体となり、
2010年代はプラットフォームビジネス化が進んでいったという経緯が各サイトの栄枯盛衰とともに理解できる。
感想・レビュー・書評
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前史(90年代)年から2018年の、各種ユーザー投稿型サイトの歴史をまとめた本。サブタイトルに「情報資本主義」と示されるように、マネタイズ(収益事業化)が主な視点となっている。
同時代のインタビューや数値が多く引かれ、なるべく当時の当事者の考え方が分かるよう書かれているのが有難い。ただ情報が豊富なのと、マーケティング用語の知識不足とで、自分には消化しきれていない感。資料として参照するのがよさそう。
・1990~2000年代のネットユーザ像は「マニアックな趣味者(p31)」。当時立ち上げられたユーザーサイトはユーザ/運営者双方で、ネット上の情報は本来無償という意識が根強かった。このため収益化を意識しないかスモールビジネスとしての構想を持つ創業者が大半だった。
・2000~2005年にかけ、サイト運営コストの低下とともに、Googleアドセンス(2004年提供開始)により広告の利益化が容易になった。
・2004年以降にユーザーサイトを立ち上げた創業者の動機(p155)を見ると、それ以前の創業者に比べて、自身の個人的な体験に基づく発想ではなくアメリカの最新サービス事例を研究して導入するケースが多い、OSSに学生時代から馴染みがあることが特徴的。
・2005年頃のネットを象徴するキーワードはWeb2.0、情報共有の時代。この時期に広告事業は急成長していたが、それゆえ代理店等にもウェブ広告の正確な理解を持つ人材が少なく、営業に苦労。
・2005~2007年ブログブーム。一方、限られた人にだけ発信するmixiも2010年時点でSNSの雄。
・Twitterは2006年サービス開始、日本では2009年に大きく伸びた。Twitter普及により、Webに発信される情報のリアルタイム性が加速する。
・集客ではなく、ユーザコンテンツ自体の持つ価値をパッケージ化して収益につなげようとする考え方について。これは2001年には主流であったが、2005年頃にもモデルは確立せず、次第に広告での黒字化でよしとする方向へ流れた。しかし2009年頃になると株主の要請で事業多角化が求められたことから、再び上記の考え方が浮上。モノ販売へ関わりと、個人利用者からの収益という戦略につながる。後者と関連する話題として、同時期のソーシャルゲーム(時に課金を伴う)市場急成長がある。
・2010時点でのSNSはオリジナル投稿が前提だった。この後、2013年頃本格化したスマートフォンの普及等も影響して、SNSによるコミュニケーションが質的に変化していく。自ら作成した情報のやりとりではなく、身内とのグルーミング的な内容のものが中心に。具体的にはボタン等による既存の情報シェア、「面白さ」「共感」を重視する価値観。
・サービスの寡占化と広告枠価格の低下が進んだ結果として、2012年以降、ユーザーサイトについてもサービスの淘汰が行われる。演劇ライフ、東京レストランガイド、koebu等。
・2015年頃には商業化が進んだことにより、投稿者側にも経済的対価への期待が生まれ、フェイクニュースや口コミ買収等、ユーザー投稿コンテンツの質の低下に関わる問題が顕在化。
・全時期を概観しての、ユーザーサイトへの投稿の内容・動機の変化。1.無償での投稿→2.モノの交換にまつわる経済的見返りを期待した投稿→3.有償での投稿→モノの売買を前提とした投稿(p435)
・第5部では、未来への課題を下記の4点指摘(p489)。
1.人的ネットワークによる機会格差の拡大
2.人々の注意を奪いすぎる広告とコンテンツのマネジメント
3.メディアにおける収益モデル
4.感情に任せた情報流通の抑制詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
東2法経図・6F開架:007.3A/Sa75s//K
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500ページ以上ある、主にビジネスモデル視点でみたソーシャルメディア史の本。
1ページにしめる文字数も多いので、さすがに読み終わるのに時間がかかった。
よくこんだけの量、しかも日本のソーシャルメディアについてだけをまとめられるなと思った。長い年月かけて調べ上げてきたんだろうことがうかがえた。
全体的に、ソーシャルメディアのビジネスモデルについて語っている箇所が多かったのだけど、やっぱり広告で運営費を賄っているところが多いんだろうなという印象。有料会員というサイトもいくつかあるけど、一番有料会員が多いニコニコ動画が最近は落ち目だしなぁ。
ただし、海外では、オランダのコレスポンデントというネットメディアが得ている収益は100%、有料下記収入と寄付でまかなわれているらしい。すごい。
そういえば、ラジオは1919年までは、メディアではなく、双方向のコミュニケーションだったというのは初めて知った。最初はアマチュア無線みたいな感じだったのかな。アマチュア無線もよく知らないけど。
著者が言うには、インターネット初期に登場したソーシャルメディアに1996年7月に開設された「東京レストランガイド」というサイトがあったらしい。2012年まであったそうだけど、初めて知った。ググっても、このサイトの情報はほとんどでてこないし。ちなみに、URLは「http://www.nihon.net/tokyo」だったらしい。このドメインだけで、初期のインターネットという感じがする(今アクセスしてみたら、何のサイトとしても使われてなかった)。
それと、サイトを見るだけの人のことを、「ROM」と呼ぶことがあるけど、これが「Read Only Member」の略だということを初めて知った。何でROM何だろうと前から疑問だった(逆に、投稿をする人のことは、RAM(Radical Access Member)というらしい)。
後、2010年前後のソーシャルメディアといえば、やっぱりmixiなんだろうなという印象。大学のコンピュータ室に入ったら、結構な数のパソコンがmixiの画面だったのを覚えてる。ただし、自分は招待してくれる人がいなかったので、会員じゃなかった……。
2010年をすぎると、盛り上がってくるのはモバゲーやグリーといったソーシャルゲームなんだろうなという印象。まあ、自分はあまりソーシャルゲームってやったことだないけど。
それと、LINEなどのメッセージングアプリ使用時間が長い小中学生は、勉強時間の長さに関わらず成績が下がる傾向があるらしい。因果関係は分かってないそうだけど、使い方によるんだろうなと思う。勉強ゲームってあるけど、勉強になるLINEのアカウントとかあるといいのかもしれない。
後、グーグル社とアルファベット社の間に、「XXVI」という持ち株会社が2017年にできたということを初めて知った。いったい何のためにそんなややこしいことしてるんだろうか。 -
途中で挫折しましたあぁぁぁぁ。。。
専門用語が多くてなかなか読み進められなかった。
でも、目次でだいたいわかったからいいや。
元々はパソコン通信で技術がある人だけができるコミュニケーションだったものが、だれでもできるようになって、
「ネットはバカとヒマ人のためのもの」に
なった、というつまりそういうことね。
というコレもネット上で書いてる時点で、
あたしも「バカ」で「ヒマ」です(笑)
でも、時代は逆戻りはしないから、
そこは腹をくくって対処していくしかないなと思う。 -
1972年創刊の「ロッキング・オン」から語り始められる現在のGAFAの巨大な存在感に至るまでのソーシャルメディアの25年の歴史です。超苦労しましたが、でもあまりにも面白く富士山を一歩一歩登るようにやっと読了しました。今のタイミングでこの本が出版されたことは絶対必要なことで、読んでおいてよかったぁ!と思っています。なぜなら、四半世紀を超えたソーシャルメディアはさらにこれからAIやIoTなどのテクノロジー進化とGDPRに代表される個人データの考え方、そして中国政府の存在で避けられない政治の問題など、またまた激動していくからです。その論点の端緒は最終章でも触れられていますが「過去を知らぬ者は未来を語れず」でデジタルの世界も知るべき過去があることが数字で、事例で、インタビューで、理論で、たっぷり語られています。知らないことばっか、でした。これからの「ネットワークされた個人主義」の時代を考えるために必読!でも、もう一回読まないとちゃんと理解出来てないかも…勢いでのとりあえずの感想でした!
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大学 Best/2018