味の素 「残業ゼロ」改革

著者 :
  • 日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532323059

作品紹介・あらすじ

早く帰れ! そして稼げ!
4年で年間労働時間1800時間を達成した働き方改革のトップランナー。
残業削減にメドをつけ、収益拡大へ舵を切るまでの全貌を徹底解説。

■働き方改革を断行し、4年弱で欧米並みの年間労働1800時間を達成した味の素の改革を描いた解説書。年間労働2000時間の日本的働き方では世界のビッグプレーヤーと渡り合えないとして、トップダウンで働き方改革に心血を注ぐ西井孝明社長、逆風にさらされながらも改革を成し遂げた役員、社員らの奮闘を紹介するとともに、短期間で残業削減を実行できた同社のノウハウを余すところなく盛り込む。

■味の素は、安倍晋三首相が本年3月に視察するなど、働き方改革先進企業として社会的評価が高いが、その全貌を解説した本などはまだない。本書では、社長や幹部から現場まで多くの社員を徹底取材。残業削減を短期に実現した絶好のケーススタディとなっている。取引先が多く、工場などの現業部門を有するメーカーの全社改革は、時短に悩む企業にとって大いに参考になるだろう。改革のプロセスや葛藤を生の声で伝えており、臨場感にあふれるヒューマンストーリーとしても読み応えがある。

■働き方改革法が今年4月に本格施行したが、個々の企業は「ノー残業デー」の設定などありきたりの対策を実施している程度で、思うような効果を上げていない。1年間の猶予を与えられた中小企業も2020年4月より規制の対象となるが、対応は遅れている。なぜ働き方改革が必要なのか、どうすれば社員も納得した改革ができるのか――施行から半年を経て現場で悩む経営層や管理職、一般社員には解決のヒントとなるだろう。

■本書は、多くのアクセス数を集めた、日経電子版「ストーリー・残業なし奮戦記」の連載(19年5月)を核に加筆してまとめたもの。経営層・管理職から女性、若手と幅広い読者が味の素の働き方改革に関心を寄せた。

感想・レビュー・書評

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  • 他社の「働き方改革」事例を知りたく、斜め読み。
    時短は手段。目的化したことで会議がファシリテーターの結論ありきの進行になることがあったという。例えばアイデア出しの会議であれば、事前に各自アイデアを当日までに考えておくといった工夫が必要なはず。考える時間を確保する為に、事務処理の時間を減らす。これが生産性向上に繋がる、ということだろう。

    また、「働き方改革」というワード。新聞に記載される件数が15年から18年で10倍以上になったという。
    日経・朝日・毎日・読売で集計し、15年が200そこら、18年には3,000程とのこと。
    これで連想するのはDX。19年から飛躍的に登場数が増えて、引いては関連商材の認知度も高まると考えていたが、、、コロナで勢いはややストップか。
    当社の注目が高まる追い風が吹いていると思っていただけに、歯痒さは否めない。

  • 製造部も在宅勤務などと聞き、気になっていた「味の素」。改革の過程もきちんと記載してあり参考になった。ペーパーレス、フリーアドレスのよい面がわかった。

    ●残業を減らす、できるはずない壁をつきやぶるには、早い段階で労働実態を正確に把握すること。全員に行い、営業の削減すべきは移動と会議ということがわかった。
    →移動の工夫、書類処理の簡易化、ネット会議システムの導入、サテライトオフィスの開設·活用


    ●残業が減らないのは、残りたいという気持ちがあるから→終業時間を16:30とした。夕方使える時間が増えた。

    ●フリーアドレス、テレワークが進まないのは、ペーパーレスにならないから。紙にすると、てにをは など、細かい作り込みが発生する。共用棚、個人棚を激減させた。捨てていいもの、PDF化できるもの、必要だけど見ないもの(契約書などは外部倉庫へ)、必要なもの。

    ●製造部も、在宅ワークできないか検討。その人しかできない仕事を減らした。

    ●仕事時間を減らすだけではなく、創造的なアイデアが生まれる工夫を怠らない。

    ●長時間労働の是正に取り組むべき理由
    *人材枯渇社会の到来
    *先進国最低レベルの生産性
    *社員の健康管理、メンタルヘルス
    *創造性の向上
    豊かな時代になった今、組織内に多様な人材を抱えることがカギになる。
    *企業の社会的責任
    SDGsも見過ごせない。ジェンダーとは、社会的に作られた男女差のこと。生物が生来持つ性差はセクシュアリティ。

  • 働き方改革、ワークライフバランスという言葉がバズワード化しているがいずれも残業時間を減らすことが目的となっていることが多いのではないか?味の素では生産性の向上やダイバーシティの実現という手段の元、グローバルで戦っていける優秀な人材を獲得することを目的に残業時間の削減にも取り組んでいる。
    これはどの部署にも例外はなく、営業部署や3交代制の製造部署も含む全社的な取り組みとしてトップから明確な指示のもと実施されている。これにより、全部署がコミットしてやっていくという文化を醸成できた。
    残業時間の削減のためにはIT基盤への投資によるリモートワークの推進、紙を使わないことでさらにリモートで働きやすくなるよう促す、加えてフリーアドレス化やキャビネット削減による紙の利用の抑止、労働時間を7時間15分とし終業時間を16時半とすることで早く退社し時間を有効活用するよう促すなどを行ってきた。一方で残業時間すなわちその分の給料が減り会社の本心が労働コスト削減だと従業員が疑心暗鬼に陥る可能性もあったため、給与ベースを1万円あげるといった従業員に還元する施策もとってきた。
    なお、当初は労働時間1750時間を目標としていたものの、現時点1800時間を達成した上で見直したところ当該目標はいったん取り下げ1800時間を維持したまま生産性を向上させることに変更がなされた。これは最上部に記載したとおり、生産性向上ではなく残業時間削減に目標がすり替えられつつあったためだ。
    この成果が出て以降地味な一人あたり生産性の改善は見られたものの、ホームランとなるような商品や施策は出てきていない。イノベーションを起こせるような生産性、ダイバーシティを実現し、それらが出て、かつ、世界トップ10に入ってはじめて味の素の取り組みに対して高評価を下せるようになるのではないか。
    今後の味の素の活躍に目が離せない。

  • バックオフィスの事例が少なく残念だった

  • 従来製造現場で厳しいと言われる在宅勤務や、大胆な残業削減を大企業で実現しているのは珍しい例だ。中途半端な残業削減ではなくやるからには徹底的に実行している点や、あくまで残業削減が目的ではなくグローバル企業になることを目的と定めている点が好ましく思った。仕事は楽しいから好きなだけやりたい人も、知らず知らずのうちに体力や精神がすり減っているので、会社がセーブするのも重要だと知った。

  • 働き方改革で長時間労働を是正すべき理由と、企業の経営課題が明確に示されていた。会社の経営者や管理職など上の立場の人にほど読んでほしいと思える内容だった。

    味の素の残業改革の目的と具体的な方法が書かれている。方法論だけでなく、考え方や戦略など、どんな企業でも見習うべきところばかりだと感じた。

    最後の第八章だけでも、会社の人に読んでもらいたい。あわよくば全部読んでもらいたい。それほど心に響いた内容だった。

  • 残業をゼロにするという改革を掲げ見事に成功した味の素のその成功の舞台裏と今後の課題について書かれた一冊。

    2015年に就任した西井社長の元でGPS機能付きのアプリで就業管理できる「どこでもオフィス」や16時30分を終業時間に設定するなどやランチミーティングなど様々な施策を行い、年間の総実労働時間を200時間削減した同社の施策を本書で知ることができました。
    会議と移動を減らすことために経費精算や会議や商談をスマートフォンやパソコンだけで行えるようしたり、「どこでもオフィス」で出社回数を減らしたりと工夫することで就業時間の削減につなげていることを知りました。
    また、工場勤務者への対応も行い全社員一丸となって残業時間を無くす取り組みを行なっていることや
    取り組みによってグローバル人材を積極的に日本で働かせることができるようになったことも印象に残りました。
    本社ビル3棟分の書類の削減や資料70点主義など社員へも取り組みを直感的に伝えているところも本書の中で印象に残りました。

    同社での本書に書かれている取り組みは少子高齢化や女性の社会進出が進む21世紀型の就労スタイルとして社会が見習うべきものが多くあると感じました。
    同時に経営トップやその側近が本気で取り組むことが末端まで意識が浸透していったということも強く感じました。
    意識改革は成功し、働き方についての考え方は社員へ浸透したこれからの課題である食品会社で世界トップ10入りするための生産性の向上をどのように行なっていくのか同社の行方が楽しみになる一冊でした。

  • 味の素 残業ゼロ改革

    在宅勤務 現場も
    録画で引き継ぎ、
    社長とランチミーティング全管理職

  • 働き方に対する意識が変わり始めたこの時代に、従業員のことを考え、ワークライフバランスを考えた取り組みは素晴らしいと思う。
    それにより生産性も上がりwin winの関係になることが1番の働き方改革だと私も思います。

    全ての経営者にこの考え方を見習って欲しいと思う。

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著者プロフィール

東京・編集局経済解説部編集委員
1964年新潟県生まれ。早稲田大学卒。1988年日本経済新聞社入社。少子高齢化や女性のライフスタイル、企業の人事制度などを主に取材・執筆。2015年法政大学大学院MBA(経営学修士)取得、修士論文のテーマは女性管理職のキャリア意識とその形成要因。女性面編集長を経て現職。

「2019年 『味の素 「残業ゼロ」改革』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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