まずデフレをとめよ: 日本経済再生

制作 : 岩田 規久男 
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (273ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532355647

作品紹介・あらすじ

苦境を超えるいまがチャンスだ!「三本の矢」の最大の要は次元の異なる金融緩和。具体的手段と効果、そして副作用脅威論の真偽を徹底解説。

感想・レビュー・書評

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  • いちビジネスマンとして、リフレ派でもなく構造改革派でもない立場で本書を読みました。ですからどちらかに対して積極的に賛成でどちらかに反対というわけではなく、第三者的に離れた位置から本書を読んだという位置づけです。その上での感想です。

    まず、現在(2015年7月)の日本経済を見る限り、この本に書いてあるようなリフレ派の主張は「正しいように」感じました。ただし副作用脅威論は完全には払拭されていない気もします(リフレ派はハイパーインフレーションは起こらないと言っているが、中央銀行が無能だったら起こる可能性もあるはずだし、業界によっては労働力不足が顕著になってきて、需給ギャップは急速に縮小しているように見えます)。

    個人的には第3章「金融政策決定プロセスと金融政策論争の系譜」、および第5章「歴史に学ぶ 大恐慌と昭和恐慌の教える物」が面白かったです。この2つを読むだけで論点がかなりクリアーになります。そのほかの章はピンとこなかったか普通という印象です。

    本書の中で一番印象に残ったリフレ派の主張は、かつての日銀総裁や審議委員による「ゼロ金利下では日銀がこれ以上やれることはない」「構造改革が進まない限り金融政策は効果を持たない」という発言が無責任であるというものです。確かにこれは一理あります。本当になす術がないのであれば、総裁も審議委員も休業して、コンピューターによる自動操縦モードにしたらどうですかということです。コンピューターによる自動操縦モードの方がコスト削減になるし不平不満も言わないしベターかもしれません。

    リフレ派が正しいかどうか、まだ歴史の審判が下ったわけではありませんが、私は中立的な第三者として、今の日銀による取り組みはチャレンジとして高く評価しています。しかし同時に、失敗した場合の被害を甚大なものにしないための注意も十分必要と言うことで、本書を読んでいろいろと考えさせられました。ビジネスマンも面白く読めると思います。

    追記:本書のレビューが「役に立った」人の数と「役に立たなかった」に投票した人の数は、まさにリフレ派と構造改革派の比率をあらわしているのかなと思います。現在、構造改革派ができる小さな抵抗は、本書を「役に立たない」と評価することくらいですね。

  • 【メモ】
    ・リフレ政策の主要な論点を整理している。
    ・版元リンク
    http://www.nikkeibook.com/book_detail/35564/

    【簡易目次】
    第1章 金融政策を大転換せよ(岩田規久男)
    第2章 デフレはどれぐらい日本経済を蝕んでいるのか(岡田靖)
    第3章 金融政策決定プロセスと金融政策論争の系譜(安達誠司)
    第4章 構造問題とデフレーション(野口旭)
    第5章 歴史に学ぶ 大恐慌と昭和恐慌の教えるもの(若田部昌澄)
    第6章 ゼロ金利下でも有効な金融政策(髙橋洋一)
    第7章 日銀の独立性と決定権(野口旭)


    【目次】
    まえがき 001
    0.1 矢は放たれた
    0.2 金融政策を大転換でまずデフレをとめよ!
    0.3 本書の構成
    0.4 日銀新レジームへの期待

    第1章 金融政策を大転換せよ(岩田規久男) 013
    1.1 なぜデフレから脱却することが必要か
    1.2 インフレ目標を設定せよ
    1.3 長期国債買いオペを大増額せよ
    1.4 穏やかなインフレにどのようにして転換するか
    1.5 インフレ目標導入反対論に答える

    第2章 デフレはどれぐらい日本経済を蝕んでいるのか(岡田靖) 047
    2.1 デフレとデノミ――似て非なるもの
    2.2 良いデフレ論と実質所得
    2.3 雇用を蝕むデフレ
    2.4 デフレが支出を冷やす
    2.5 GDPと失業率
    2.6 税収と財政赤字への悪影響
    2.7 デフレが財政破綻を加速
    2.8 なぜデフレのままでは景気は良くならないのか
    2.9 お金はたくさんあるのになぜデフレなのか

    第3章 金融政策決定プロセスと金融政策論争の系譜(安達誠司) 071
    3.1 六つのテーマで読む金融政策論争
    3.2 「翁・岩田論争」と日銀理論
    3.3 論争のパターン
    3.4 ゼロ金利政策下での金融政策論争(1998年04月~2000年02月)
    3.5 ゼロ金利解除をめぐる論争(2000年03月~2001年02月)
    3.6 段階的量的緩和期の金融政策論争(2001年03月~2003年03月)
    3.7 「テイラー・溝口介入」とリフレーション政策の実現(2003年03月~2005年05月)
    3.8 早すぎた出口政策――変わっていなかった日銀(2005年06月~2008年03月)
    3.9 追加緩和を拒否しながらも逐次緩和を迫られた白川体制(2008年03月~2012年10月)
    3.10 調整インフレ論からインフレ目標政策へ

    第4章 構造問題とデフレーション(野口旭) 127
    4.1 「構造改革によって不況を克服できる」という錯覚
    4.2 デフレは「貨幣的現象」であり「実物的現象」ではない
    4.3 デフレの原因は構造問題なのか
    4.4 構造改革と金融政策の正しい割り当て
    4.5 中央銀行の真の役割は「物価の安定」

    第5章 歴史に学ぶ 大恐慌と昭和恐慌の教えるもの(若田部昌澄) 149
    5.1 歴史に学ぶとは?
    5.2 アメリカの大恐慌
    5.3 昭和恐慌――『男子の本懐』の本当の悲劇とは?
    5.4 歴史の教訓

    第6章 ゼロ金利下でも有効な金融政策(髙橋洋一) 213
    6.1 現代のオズの魔法使い
    6.2 プリンストン大学での体験
    6.3 インフレ目標政策こそグローバル・スタンダード
    6.4 インフレ目標政策は有効か
    6.5 通貨発行益の効果
    6.6 物価上昇率は上げられないのか
    6.7 物価連動債を活用せよ
    6.8 弊害なくインフレ目標政策を確実に実施できる政策は何か

    第7章 日銀の独立性と決定権(野口旭) 249
    7.1 中央銀行の独立性と責任
    7.2 ゼロ金利解除で問われた「中央銀行の独立性」の真の意味
    7.3 顧みられなかった「標準的な経済理論」
    7.4 必要な説明責任と結果責任
    7.5 日銀が負うべき責任をどう明確化するか

    参考文献 264

  • 日銀副総裁らによる編著。安倍政権仕様に改訂。日銀の果たすべき役割について述べている。

    わかりやすく歯切れもよい。このあともう少し読み込む。

    国民の根強いデフレ思考は、難しい問題だろう。

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