メカニズムデザインで勝つ: ミクロ経済学のビジネス活用

  • 日経BP日本経済新聞出版本部
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  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532358600

作品紹介・あらすじ

メカニズムデザインは、オークションやマッチング理論などを含む、経済学での比較的新しいジャンル。応用例は幅広く、世界を見渡せば、不動産や学校選択など、社会での問題解決やビジネス実務に大きな貢献が期待される分野である。
 本企画は、こういった経済学の知見を、日本でも実務に活かそうと立ち上がったワークショップのアウトプット(書籍化)である。元官僚や、IT関係者、金融マンなど総勢40名ほどで月1回程度で行われている。
 進行は、この分野の第一人者とされ、関連の書籍が数多くある坂井豊貴慶應義塾大学教授が行い、実務での活用例は「オークションで不動産をデザインする」をモットーにする(株)デューデリ&ディールの事例などが紹介される。その間も「オークション参加者がフェイクの数字を申告していたら?」「その事例には汎用性があるのか?」など、細かいツッコミ質問が入り、参加者(読者)の理解を助ける。

感想・レビュー・書評

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  • オークションとマッチング理論の初歩的な入門書。実際に不動産等で活用している方と第一人者の研究者の共著なので入門書だがいろいろ細かなところまで行き届いている感じが好著。
    巻末に推奨図書が充実しているので、
    マーケットデザイン・メカニズムデザイン
    オークション理論
    マッチング理論
    などが気になる方はこの本から入るのはあり。

  • 坂井豊貴と今井さんが主宰しているオークション・ラボというオークションの勉強会の講演録のようなもの。
    単話完結・会話形式で気軽にオークション理論や投票理論について触れることができる。
    さらに興味が出たら深堀できるよう本の紹介もあり、オークション理論入門としてはとても良いと思う。
    オークションに携わらなくても読み物として面白かった。

  • 粟国さんからの寄贈書籍です。

  • メカニズム・デザイン(あるいはマーケット・デザイン・マッチング、オークション理論、マッチング理論)のとっかかりとして最適な一冊。オークションの仕組みと実装に興味のある方々を対象にした「オークション・ラボ」コミュニティでのワークショップをテキスト化した内容。

    自分の運営しているBtoBサイトの本質は「良質なマッチング」にあるのだが、それを論理的に説明するための言語としてこれらの概念に触れておく必要を強く感じた。

    坂井さんの本(僕の本棚では#0406.坂井豊貴)をこれから読み深めてみようと思った。

  • 「多数決を疑う」関連本。坂井さんの本はどれも具体例が豊富でユーモアもあってわかりやすいと思う。特に本書はワークショップの記録なので、会話体で読みやすい。さくさく読むと、メカニズムデザインって何かがわかったような気になった。

    オークション、マッチング、投票などの制度を経済学の理論を用いて最適に設計する、その理論がゲーム理論だったり行動経済学だったり、と理解。

    子供の頃、家族でトランプやUNOをするとき、進んで記録係になっていた。いま思えば、記録係がルール変更を提案できるからだったのかもしれない。1位は何点とか、最後のゲームは倍とか。そしてルールを巡って兄弟喧嘩が勃発するのだ。「よりよい制度を考えること」と「制度の導入をみんなに納得してもらうこと」の2つが揃ってはじめて制度が変わる。実は後者のハードルがけっこう高いよなあ。

  • オークションはあくまでもツール。
    それをどう使うか、どう活かすかは人間次第。
    ボルダールールに代わるマジョリティジャッジメントを試してみたい。
    選挙という形の多数決が、強者の論理で変わらないのなら、草の根から多数決を見直す流れを作らなくちゃ。

  • 次点価格方式と第二価格方式は似ているが違う。
    次点価格方式は、耐戦略性がない。

    プライマリー市場は、オークションに合っている。魚の卸売り、画家が絵を売る、国が国債を売る、など。

    ニュージーランドは周波数オークションを最初に行ったが、設定が悪く失敗した。アメリカはそれを見て、設計を専門家に依頼した。ミルグロムが、同時せり上げオークション方式を考案した。同時にセリ上げ型オークションにかけるが、すべてのせり上げが終わらない限り、どの競りもオープンのまま。
    同時せり上げだと、裁定が起きて同じレベルの価格になる。複数の財を売るのに適している。

    研修医と病院のマッチング=受け入れ保留アルコリズム=全員が希望順に選択して、受け入れ側も選択肢がある。耐戦略性がある。
    研究室選択でも、きちんと希望順がつけられれば機能する。選択側が成績順にすれば、可能。

    受け入れ保留プログラムと、同時競り上げ式オークションは似ている。同時競り上げ式は、持参金付きでプロポーズする受け入れ保留プログラムみたいなもの。一般化受け入れ保留プログラム。

    学生寮の部屋交換。自分たちだけ部屋交換しない配分を強コア配分という。
    トップトレーディングサイクルアルゴリズム(TTCアルゴリズム)=まずサイクルを見つける。次にそれを除いてサイクルを見つける。同じ部屋というサイクルでもよい。強コア配分になっている。
    腎移植マッチングに使える。患者が学生、ドナーが部屋。ドナーを持たない患者は新入生、脳死者の腎臓は空き部屋とみなす。

    クオドラティック投票=選挙の際に、クレジットを各テーマに割り振って、それぞれ平方根の票を得る。

    マジョリティージャッジメント(MJ)=一人一票だと、票割れに弱い。
    評価を7段階程度にして、各候補に絶対評価をつける。2段階だと是認投票になる。平均値ではなく中央値で、どちらが望ましいか、が社会的評価となる。中央値だと、平均値より極端な数値に影響されない。
    戦略的操作への強さを求めると、中央値以外は無視することになる。ボルダールールよりも強い。
    7段階ぐらいがちょうどよい。マジカルナンバー7。選択肢が7つなら比較ができる。

  • 財の効率的な配分を目的としたオークション、マッチングなど制度設計理論であるメカニズムデザイン(マーケットデザインという呼称もな配分を目的としたオークション、マッチングなど制度設計理論であるメカニズムデザイン(この分野はマーケットデザインとも呼ばれ学問的な違いはあるのだろうが、ほぼ近似した内容であると理解している)。

    本書はその分野の研究者である著者と、不動産売買オークションビジネスを長年手掛けているデューデリ&ディール社が共催するオークション・ラボという勉強会の模様を書籍化した一冊であり、メカニカルデザインという学問をどうビジネスに活用するかというヒントに満ちている。

    実際の理論を知ろうとすれば、同じ著者による『マーケットデザイン: 最先端の実用的な経済学』などの方が丁寧であるが、本書は実際にビジネスサイドに人間からオークションの意味合いが語られている点が面白い。中でも印象に残ったのは、不動産のようにプライシングが難しい財の場合、オークションは価格の意思決定プロセスが透明であり売り手にとっての納得感が高まる、というポイントである。通常のプライシングが専門家による調査に基づくものであってもその過程がなかなか一般人には理解しにくい中で、かえってオークションの方が透明性が高い、という着眼点は以外かつ、オークションという制度のメリットを強く示している。

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著者プロフィール

慶應義塾大学教授

「2017年 『大人のための社会科 未来を語るために』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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