「エンジンのないクルマ」が変える世界: EV(電気自動車)の経営戦略を探る
- 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版 (2009年10月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
- / ISBN・EAN: 9784532490676
作品紹介・あらすじ
2009年、化石燃料を使い内燃機関で動く車から、二次電池と電動モーターで走るクルマの時代に本格的に突入した。自動車関連メーカーはもとより電機、電力から石油、住宅まで多くの企業が、そして社会、国家もこの大変革の影響から無縁ではない。エンジン車の100年に続く、EVが開く新たな100年。テクノロジーマネジメントの観点から新しい時代の幕開けを描く意欲作。
感想・レビュー・書評
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会社の研修部門に在籍していた頃の参考書。
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現在の日本ではハイブリッド車が出まわるようになりましたが、主にトヨタとホンダがその市場を握っています。それ以外のメーカは何を考えているのでしょうか、その一つの答えが電気自動車のようで、この本によれば、日産自動車と三菱自動車がその市場で覇権と取ろうとしているようです。
日産はゴーン改革により、コストを抑制することで利益をだすことには成功したようですが、次世代への技術に対してはどのように考えていたのでしょうか。
トヨタとホンダは当面の技術としてハイブリッドを考えているようですが、日産の場合は電気自動車なのでしょうか。特に、2010年の今年に年間5万台生産という大量生産を予定しているのは驚きでした、また年末に振り返りたいと思います。
以下は気になったポイントです。
・日本企業は、三菱・富士・日産自動車に続いて、トヨタ・ホンダもEV開発を進めている、トヨタは日立、パナソニックと、日産はNECと提携している(p9、81)
・EVでは、内燃機関のエンジンに相当する部分が、電池とモーター、変速機がインバーターの役割で、電池は燃料タンクの役割をする(p47)
・明電舎は資本関係もないメーカであるが、三菱電気自動車のモータとインバータの開発担当をした、大手自動車メーカが内製化、合弁企業設立をしているのと対照的(p48)
・日産自動車は電気自動車の「リーフ」を日米で初年度(2010)に5万台生産を考えている、早期に市場を創造する戦略(p50)
・二次電池(正極、負極、電解液)の歴史において、製品として市場に地位を得ているのは4つ、鉛電池、ニッケルカドミウム電池、20世紀に日本企業が生み出した、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池(p82)
・内燃機関の模倣は難しい、企業内外の微調整力、きめ細かな設計技術、工程管理、熟練技術者のノウハウ等が必要であるから、これが日本の自動車産業の競争優位性を保った(p7)
・急速充電器の規格統一に向けて、EV開発先行3社である、日産・三菱・富士重工と、東京電力が協議を始めたが、電池に関しては話しあわれていない(p91)
・二次電池(リチウムイオン電池)の競争に関しては、日本が起こしたプロダクトイノベーションを、韓国・中国と欧米が追いかける構図(p96)
・1925年に豊田自動織機の創始者である豊田佐吉は、帝国発明協会に蓄電池発明奨励のために100万円を寄付した、これは同社の資本金と同額(p97)
・製品点数はガソリン車のアイが900点程度なのに対して、アイミーブは700点となった、組立工程では2~3割の削減した程度、既存車をベースにしているので大幅に削減されていない(p104)
・内燃機関のエンジン車の部品は、約2~3万点、自動車会社が造るのは30~40%(ほとんどエンジン部品、ボディの中心部)、残りはサプライヤーが供給する、EVになると部品の殆が外製化されることになる、エンジンを内製しないメーカーは車体メーカと呼ばれて別扱い(p108)
・従来の車が1グラム2円程度であるので、現在の200キロの電池:1グラム10円とすると、5分の1程度のコスト低減が必要(p118)
・軽量化を達成るのに重要な技術である高張力鋼(ハイテン)は、日本以外への技術移転は行われていない、日本の鉄鋼メーカのお家芸である(p119)
・三菱アイミーブは10・15モードで160kmの航続距離、日本では1日160km以上走るのは10%以下、アメリカでの30%程度、エアコン使用により2割程度減少する(p140)
・EVの加速感が優れている理由は、モーターのトルク応答性がガソリンエンジン比較で格段に優れていて、遅れが少ないから(p150)
・EV車のマーケティング上のポジショニングは、エンジン車やHV車との差異化を徹底すべき、例えば、ゼロエミッション化、家庭での充電可能、加速感とレスポンス、静けさ等(p155)
・ルノー日産アライアンスは、デンマーク、イスラエル、ポルトガル、モナコ、英国、フランス、スイス、アイルランド、中国、シンガポール、アメリカの4州、日本では神奈川県や横浜市と、ゼロエミッションEVに関するパートナーシップを締結している(p159)
・トヨタはEVよりもPHV(プラグインハイブリッド)を市場に優先投入する考え(p169)
・日産はこの転換期において、ルノーとのアライアンスを強化して、グローバル市場に向けてプラットフォームの共通化、車両の小型化を重点的に進めている(p180) -
「EVは最終的な自動車の到達すべき姿なのである」
電気でうごく未来のクルマ「電気自動車(EV)」の話。その部品であるリチウムイオン電池についても詳しく触れられている。
EVにはその名の通りエンジンがなく、モーターと電池とインバーターで動く。これがかなり重要な事実。
未来にわくわくしつつ、EVがこれまでのクルマとはまったく違うクルマであり、ここで日本が乗り遅れると本当に終わってしまうという危機感も感じた。
【登場企業】日産、三菱自動車、GSユアサ、明電舎 -
ソフトウェアの終焉をもたらしたセールスフォースと同じく、パラダイムシフトがおこるだろう。ただ産業構造が違うため、新興企業にそのチャンスが均等に与えられているかは疑問。そんな開発を行える企業はそもそも新興企業なの?ビッグアイデアはビッグエンタープライズに潰されてしまうのか?
電池の性能を大きく左右する新しい原材料の研究-発見に投資したものが、すべてを握るのか?それともインフラ?ファーストシェアを獲ったもの? -
エンジンは擦り合わせ技術の結晶であり、もしEV時代に突入したらその技術は?それを得意とする日本は?と思い読みました。
これまで自動車メーカーはエンジンを内製化してるからこそ、製造業ヒエラルキーの頂点に立ち、強力な取引関係の地位と莫大な売上高を保持してきた。
しかし、EV時代になると優れた電池を手にする自動車メーカーが優位性を持つ。
バッテリ技術にはこれまでの機械工学的「擦り合わせ」は通用せず、電気化学のイノベーションにより発展する。
電池開発の特徴として、
・突如とした進化(イノベーション)
・段階的進化(20,30年で次のステージ)
これは電池開発がセレンディップであり、開発者の経験と熟練、カンによるところが大きいことによる。
ここまで読むと、既存の自動車メーカーは今後苦境を強いられそうに感じます。
しかし、EV時代にも通用するもう一つの自動車開発のコア・コンピタンスがあると述べられています。
それが、
・「走る、曲がる、止まる」という自動車独自の設計、開発、製造技術
・大量に販売するマーケティング機能
です。
マーケティング研究、基盤研究から設計開発、生産、アフターセールスまでのトータルプロセス、また3万点にも及ぶ部品を関連企業とともにインテグレーションする活動。
これにより自動車はグラム単価2円!に満たない、特売の外国産牛肉並みの値段で、最新のハイテク技術を大量の金属・プラスチックで作り上げ、10万キロ以上故障せずに走るものに仕上がっている。
このように、EVの時代では電池技術がカギを握り、電池メーカーの存在感が大きくなる一方で、既存の自動車メーカーが持つ優位性も確固たるものであるという印象を受けました。
特に最後の単価2円という表現は、非常に驚きがあるフレーズでした。
この本、現在のEVを取り巻く状況~今後のEV時代での構造変化について、重要なポイントを網羅して、それぞれキーパーソンの言葉をもとに詳しく、かつわかりやすく述べてあり、電気自動車の産業構造について学びたい人におススメです。 -
電池も含めたEVの歴史
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トヨタやホンダがハイブリッドを焦って売る理由は旬の時期がすぐ終わってしまうからだ。
ハイブリッドと電気自動車が別モノというのはなるほど。
電気自動車がガソリン車に比べてエコなのはわかるが、災害時など電気の供給に問題がありそうだ。 -
少し日産に偏りすぎな印象。
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まともなことが書いてある.