古代文明の輝き (別冊日経サイエンス210)

制作 : 日経サイエンス編集部 
  • 日本経済新聞出版
5.00
  • (1)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 7
感想 : 1
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (135ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532512101

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 過去に「日経サイエンス」誌にて掲載された古代文明関連の記事を別冊として再編・再録した書。1999年から2015年までに掲載された記事16篇を収載、古代文明にまつわる最新の研究成果を紹介している。
    本書は、「日経サイエンス」誌(米"SCIENTIFIC AMERICAN"誌、一部例外あり)にて掲載された記事を集めた別冊刊である。収録している記事とその概要は以下の通り。

    ・『沈没船のお宝を探せ 海洋考古学の新時代』 2015年5月号掲載
    (原記事:Philip J.Hilts "In Search of Sunken Treasure" January 2015)
    …近年注目されている海洋考古学、その調査の幅を広げている最新ハイテク機器を紹介。
    ・『2000年の眠りから覚めたギリシャの計算機』 2010年3月号掲載
    (原記事:Tony Freeth "Decoding an Anvient Computer" December 2009)
    …「オーパーツ」として著名な「アンティキテラの機械」、そのメカニズムと用法を解説。
    ・『「デルフォイの神託」の秘密』 2004年1月号掲載
    (原記事:John R. Hale, Jelle Zeilinga de Boer, Jeffrey P. Chanton, Henry A. Spiller "Questioning the Delphic Oracle" August 2003)
    …ギリシャ最大の聖地、デルフォイの神託を可能にしていた地質学的要因を分析。
    ・『最古のピラミッドに隠されていたもう一つの墓』 2000年9月号掲載
    (原記事:Karol Mysliwiec "Nowe odkrycia najstarsej piramidzie swiata" SWIAT NAUKI Sierpien 1999)
    …エジプト古王国時代の墓域であるサッカラにて新たに発見された、古王国時代の宰相の墓を紹介。
    ・『蘇った王女ネフェルタリ』 2000年2月号掲載
    (原記事:Neville Agnew, 前川信 "Preserving Nefertari's Legacy" October 1999)
    …経年劣化・観光客による損傷が問題となっていたネフェルタリの墓、考古学者らによるその復元と保全の取り組みを紹介。
    ・『古代エジプトの動物園』 1999年11月号掲載
    (原記事:Karen Polinger Foster "The Earliest Zoos and Gardens" July 1999)
    …古代エジプトや中東の王国にて盛んに作られた動植物園の姿を、当時の様相を描いた遺物と共に紹介。
    ・『嵐の神の物語 マヤの古代都市ホルムル』 2015年3月号掲載
    (原記事:Zech Zorich "The Storm God's Tale" December 2014)
    …マヤの古代都市ホルムルより新たに発見されたフリーズを通して、戦乱期の古代マヤにおける権力構造を考察。
    ・『血と石の神々 テオティワカンの秘密』 2014年11月号掲載
    (原記事:Erik Vance "Gods of Blood and Stone" July 2014)
    …かつて繁栄を極めたアステカの古代都市テオティワカン、その政治体制を巡る論争と急展開を見せる発掘調査の現状を紹介。
    ・『先アステカの大水路網』 2007年1月号掲載
    (原記事:S.Christopher Caran, James A. Neely "Hydraulic Engineering in Prehistoric Mexico" October 2006)
    …先史時代のアステカにて構築された大規模水路網・水管理システムを紹介。
    ・『見えてきたストーンヘンジの物語』 2011年6月号掲載
    (原記事:William Underhill "Putting Stonehenge in Its Place" March 2011)
    …近年関連する遺跡が次々と発見されているストーンヘンジ、その機能を「複数の構造物からなる広大な祭儀の場」という視点から考察。
    ・『エメラルドが古代にたどった道』 2001年5月号掲載
    (原記事:Gaston Giuliani, Mare Chaussidon, Michèle Heuzé "La route des émeraudes anciennes" POUR LA SCIENCE Novembre 2000)
    …古代より装飾品として重宝されてきたエメラルド、同位体分析法によるその産地や交易ルートの調査を紹介。
    ・『幻のダマスカス剣を復元する』 2001年4月号掲載
    (原記事:John D. Verhoeven "The Mystery of Damascus Blades" January 2001)
    …長らく製法が不明であったダマスカス剣、内部構造分析に基づく復元の取り組みを紹介。
    ・『トルコの遺跡にみる9000年前の男と女』 2004年5月号掲載
    (原記事:Ian Hodder "Women and men at Çatalhöyük" January 2004)
    …古代母権制と絡めて語られることの多いトルコのチャタルフユック遺跡、実際の発掘結果に基づいて男女の社会的性差を考察。
    ・『バーチャル考古学 シミュレーションで迫る古代社会』 2006年1月号掲載
    (原記事:Tomothy A. Kohler, George J. Gumerman, Robert G. Reynolds Shubin "Simulating Ancient Societies" July 2005)
    …バーチャル空間における文明・社会シミュレーション研究の様相を、古代プエブロ族消失を巡る調査を通して紹介。
    ・『星座の起源』 2007年2月号掲載
    (原記事:Bradley E.Schaefer "The Origin of the Greek Constellations" November 2006)
    …古代メソポタミアに始まる(ギリシャの)星座、歳差運動の計算などに基づきその起源と成立時代を考察。
    ・『北斗七星と東洋の星座』 宮島一彦 2007年2月号掲載
    …東洋圏で主流だった古代中国の星座、その様相を紹介。

    個人的には「オーパーツ」として有名なアンティキテラの機械・ダマスカス剣についての記事があると耳にしたので手に取ったのだが、実際に読むと他の記事も面白いものが多くあって参考になった。特に興味深かったのが『先アステカの大水路網』で、2500年前に造られた「化石化した用水路」(テコアトル)や湧水源の周囲に造られた段々畑における灌漑農業の存在を知って驚いた。これらの機構は有名なローマの水路網にも決して引けを取らず、「世界の先史時代の建造物の中でも最も優れたものの1つに数えられる」という著者の評も当然であると感じた。
    他にもストーンヘンジの記事など、昔の知識で止まっていた古代遺産についての情報を新たに知ることが出来たのは大きな収穫であった。こういった最新の研究動向・成果についての情報は何もしていなくても入ってくるものではないので、定期的にチェックする必要があるなと改めて思った。

全1件中 1 - 1件を表示
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×