教養として知っておきたい 「宗教」で読み解く世界史

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  • 日本実業出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784534058010

感想・レビュー・書評

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  • タイトル通り宗教という切り口から世界史を解説した本
    単なる宗教解説本ではなく宗教に地政学的な要素も絡めながら世界史を紐解いていくスタイルだったのでとても面白かった
    特に1ページ目の「宗教は他者を自己に従属させる機能を内在させる精神侵食のツールです」という一文は考えさせられるものがあると感じた
    筆者の解釈がだいぶ入っている感じはするのでそこだけは注意

  • 筆者の思想、特に韓国や中国へのヘイトが端々に滲み出ている。
    フラットな視点と敬意に欠けていて、あまりいい本だとは思えなかった。

  • 歴史の中でのそれぞれの宗教の位置付けが理解でき、興味深い。

  • 先に読んだ『「民族」で読み解く世界史』と比べて、具体的な出来事の記述が多いため、いきなりこの本から読み始めるとハードルが高いかも。
    『民族』→『世界史概要』→『宗教』の順で、何度か繰り返して読むと理解が深まりそう。本書、他の世界史概要本を読んだ後に再読することに決定!

  • p15 ゾロアスター教(ササン朝ペルシャの国教)はイラン人を有意とする選民主義思想がをもっていたため、中東の多くの部族を統合できず そこでイスラム教

    p77 ウイグル人は宗教や文化の上で、同じトルコ系の中央アジア5カ国と密接な関係を歴史的に持つ(カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン)

    p89 陰陽太極図 道教(台湾)は自然神信仰の多神教 様々な神の中には三国志の英雄 関羽もある

    p99 カーストというのはポルトガル語のカスタ、家柄という意味 カスタは英語のclass


    p110仏教におっける各部区分
    如来 釈迦如来、大日如来、阿弥陀如来、薬師如来
    菩薩 弥勒菩薩、観音菩薩、千手観音
    明王 不動明王、金剛夜叉明王
    天部 梵天、弁天座位、毘沙門天

    菩提 仏の悟り
    薩埵 修行者
    明王 ブッダが姿を変え、人々を救うため、人々を悪から守るために、憤怒の形相で奮闘している姿
    天部 バラモン教などの古代インドの神々

    p120 上座仏教 自分自身での修行を通じてのみ悟りを開ける 厳しい戒律を守る タイ人の男性の大半は一定期間出家し修行をつむ
    日本の仏教大乗仏教

    p129 アンコールワット あんこーるとは都という意味でアンコール・ワットとは都の寺という意味

    p179 ゴシックとはゴート族のという意味 ゴート族とはゲルマン人にこと
    イタリア人らが中世の初期に古代ローマ風のロマネスク様式の建築スタイルを展開したのに対し、中世の後期に、ドイツやフランスなどにおいて、ゲルマン文化を移したゴシック様式が展開された

    p215 オランダの新教徒はゴイセン(物乞い)とよばれたスペイン側が物乞いのようなやすらと侮蔑した 貧しかったわけでなく、むしろビジネスで成功した富裕層

    p220 ブラディメアリー カトリックを復活させる

    p250 東側のエルサレム、アレクサンドリア、アンテイオキア、コンスタンティノープルの4総主教は対等な立場だったが、コンスタンティノープルが事実上やや優位

    p270 アメリカ プロテスタントは共和党支持が多く、カトリックは共和党支持と民主党支持が半々

    p313 イスラム世界全体において スンナ派が多数、シーア派は10% イランに限ればシーア派が90%

  • 本書は単なる宗教的世界史解説、というレベルに留まらない。「宗教地政学」という位置から、各地域の宗教の成り立ちから今日に至るまで、そして宗教を巧みに利用してきた支配者たち、そしてそれらによって翻弄され続けてきた民族の流れまでをわかり易くまとめてある良書。
    宗教史の初学者にも取っ掛かりとして入りやすいのでは。全体としても各章ともコンパクトで、これをサイドリーダーにして教科書とか他に興味の出た分野の本をもっと読み進めることで、より理解が深まりそう。

  • 世界史と各国の関係性を宗教という視点から説明しており、文章も分かりやすくて理解の助けになる。ただし、歴史の流れを宗教面からだけで読み解くのは少々無理があり、内容としては物足りない部分もある。
    どうも著者は中国に対し嫌悪感があるようで、論調に偏りを感じる。その他についても同様に、これはちょっと…と思うところもちらほら。
    学校等で習う世界史では、なぜその出来事が発生したのかは分かりにくいことが多いので、一連の歴史の流れをある程度理解した上で、それを補完する形で読むと理解しやすくなると思う。

  • 世界史を様々な視点で読む著書を定期的に読んでいるところですが、宗教史を続けて読んだこともあり、ちょうどよい一冊を手に取りました。
    著者が「宗教がその勢力をどのように拡散させていったのかを考え、また、安全保障上の戦略として、どのように宗教覇権の攻防が地政学的に展開されたかを考える本」と書いているとおり、宗教を違う視点でとらえ、それを歴史的・地理的にどのように影響を及ぼしたか、ということが分かりやすく示されています。
    まずは、中核的な地域を、中国、インド、ヨーロッパ中部、東西交易路の4箇所とし、そこが周辺にどのような歴史的影響を与えたのかを体系的に描いています。
    例えば、東アジアの場合、コア地域を中国 従属:朝鮮、対抗:日本・ベトナム、対立:チベット・ウイグル、途絶:雲南、分離:台湾のように解説しています。
    このような体系付けは、斬新であり、違う視点で歴史を見ることができます。
    それぞれの国の歴史を辿ることも大切ですが、このように地域は違うものの、そこから導かれた宗教の普遍的な原理を整理している部分は参考になります。

    ▼宗教の教えがどうであるかを考えるための本ではなく、宗教がその勢力をどのように拡散させていったのかを考え、また、安全保障上の戦略として、どのように宗教覇権の攻防が地政学的に展開されたかを考える本
    ▼宗教は他者を自己に従属させる機能を内在させる精神侵食のツールです。そういう意味で、宗教は安全保障に直結する問題です。
    ▼宗教は文明の基盤です。そして、文明は自己と他社を分ける歴史の単位ベクトルです。私たちの日本文明とは何か、それは中国文明とどこが違うのか、こうしたことを考えるときに、宗教は欠かせません。目先の短期的なニュース解説では見えないものがあります。文明史的な長期スパンにおいて、今日の国際情勢を考えることが必要です。われわれは宗教というファクターを通してはじめて、そのような俯瞰的な視野を得ることができます。

    ▼宗教は古今東西、公然性を伴った対外工作と支配のツールとして、政治的に利用された。宗教は安全保障に直結する重要政治課題。日本人の多くが宗教を個人の内心の問題と考える傾向があるが、そのような性善説的な認識では、悪意に満ちた国際社会の中で生き残れない。宗教は対外脅威と結び付きやすく、そこから、見えない形で社会が侵食されていく。

    ▼人間の生き様や現実の社会は必ずしも儒教の掲げる正義には適合しない。そこで、人々は許しや慰めを求めて、仏に祈りを捧げるなどの宗教的救済にすがろうとする。儒教には、この救済という考え方がなく、そこが1つの限界になっている
    ▼古来、日本人は、現代のわれわれが考える以上にリアリズムを大切にする精神性をもつ。日本人独自の信仰である神道は汎神論で、自然のすべてに神が宿ると考える。自然や動物など、われわれの周りに身近に存在する実存を通して神的なものを見る。一神教のように人為的に作り出された絶対神を信用しない
    ▼天皇を中核として伝承されてきた人々の自然への畏敬と感謝の念こそ、神道の本質

    ▼宗教というものは概して、経済の繁栄と政治の不安定化という社会の亀裂の中から誕生するということが一般原理

    ▼宗教に対抗する指導者は滅び、宗教を利用する指導者は栄える。これが歴史や政治の普遍原理

    ▼他宗教への寛容を税というカネと引き換えに認める実利的な規定をもつ宗教はイスラム教だけ。キリスト教てゃキリスト教だけが全人類の唯一普遍の宗教であると主張し、他教を排斥しようとしてきた。パウロ時代から排他的であり、異質な教義を厳しく禁じ、異端狩りは残忍を極めた。キリスト教はユダヤ教のように、ユダヤ人だけが救われるという選民思想をもたないが、すべての人間をキリスト教に改宗させることを目的とし、他の宗教を邪悪とみなす。イスラム教はこうした排他的な性格をもっていなかったのは歴史の事実

    ▼いつの時代でも、宗教というものは、その教義通りに動くとは限らず、時局に応じた現実的な利害によって左右される。それは、宗教が自ら培ってきた、現実のなかで生きていく知恵だった

    ▼この世界を創造した全知全能の根源者を神とするということは、どの宗教も同じ。そもそも、根源者はこの世に存在するものすべてにとって唯一。だからといって、それぞれの宗教の神も一致するとは限らない。
     それぞれの宗教において、神の捉え方はまったく異なる。そして、そこから生ずる神の概念も異なる。また、宗教というものが本質的に概念的存在である限り、概念が異なれば、概念によって指し示される神も自ずと異なる

    <目次>
    はじめに
    序文 宗教地政学
    ■第1部 東アジア—中華秩序の脅威—

    中華の膨張、誰が屈し、誰が屈しなかったのか/
    儒教が覆い隠した属国の哀れ/神道と天皇を中核とした日本文明の独自性/ 華夷秩序に対抗した「帝国」/受難のチベット仏教、宗教は国家の暴虐に打ち勝てるか/新疆ウイグルは中国と異なる文明圏/ 中国と異なるもう1つの独立文明圏、雲南/道教が台湾を新天地としたのはなぜか

    ■第2部 インド・東南アジア—多神教拡散の脅威—

    なぜ、インドは多くの宗教の発祥地となったのか/タイやミャンマーの統一王朝が求めた宗教原理/ スマトラ・ジャワの仏教覇権、その力の源泉/アンコール・ワット、巨大寺院建設の資金源/中国文明に対抗するインド文明の最前線/ ヒンドゥー教とイスラム教の宗教覇権に対抗する小宗教/ムガル帝国のイスラム主義の継承者/イスラム教勢力が狙ったマラッカ海峡の交易利権

    ■第3部 ヨーロッパ —宗教改革がもたらした近代国家の誕生—

    「我が声はペトロの声なり」、教皇の宗教統治構造/宗教改革という名の醜悪なる利権闘争/巨大化する教団を支える資金/ カトリック資金が大航海時代を生んだ/宗教人口の大移動がもたらした社会変動/知られざる北欧の宗教改革/カトリックを国民統合に利用した指導者/ 正教とは何か、宗教君主としてのロシア皇帝/なぜ、スラヴ圏でありながらカトリックなのか/社会を動かす福音派メガチャーチ

    ■第4部 中東・中央アジア・アフリカ—商業利権に立脚するイスラム教—

    カネを払えば許すというイスラム教義/イスラムの野望はヨーロッパへ/十字軍戦争、ジハードの虚/イマームの代理統治を行なうサイイド指導者/ イスラム同胞を見捨てる中央アジア諸国/ユダヤ教というルサンチマン/イスラム教とキリスト教の千年戦争の最前線

  • 東アジア周辺の記述はそれでええんか…という感じではあった

  • とても系統立てて書かれており、理解しやすい内容だった。やはり、それぞれの地域の宗教を知らなければ、背景を深く理解するのは難しいだろう。

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著者プロフィール

1975年、大阪生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。代々木ゼミナール世界史科講師を務め、著作家となる。テレビ、ラジオ、 雑誌、ネットなど各メディアで、時事問題を歴史の視点でわかりやすく解説。
主な著書に『民族と文明で読み解く大アジア史』(講談社)、『「民族」で読み解く世界史』『「王室」で読み解く世界史』『「宗教」で読み解く世界史』『世界「民族」全史』(以上、日本実業出版社)、『経済で読み解く世界史』『朝鮮属国史』(以上、扶桑社)、『世界史で読み解く天皇ブランド』(悟空出版)などがある。

「2023年 『知らないとヤバい民主主義の歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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