盟約の闇: 「核の傘」と日米同盟

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  • 日本評論社
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  • Amazon.co.jp ・本 (305ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784535584068

作品紹介・あらすじ

記者と研究者の両輪で活躍する著者が、国際政治の現場から、健全な日米関係をめざし、核兵器のない世界を創造するために日本自身の安全保障の実態を解き明かす。インタビュー、公文書、先行研究を一体とする「検証」物語。

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  • 「盟約の闇」を照らす作業と今後の日米関係【赤松正雄の読書録ブログ】

     「記録が残っていない」とする日本政府の主張をいったいどう説明したらいいのか―太田昌克共同通信編集委員は、『盟約の闇―核の傘と日米同盟』の中で、苛立ちを抑えつつリアルに語っている。6年前に出版された本でのことだ。5年かけて関係者へのインタビューをしてきた太田さん。今回のいわゆる「密約」問題に関する報告書を、恐らくは一日千秋ならぬ一刻十年の思いで待っていたに違いない。

     広島を記者としての出発の場に与えられた瞬間から、今日までの彼の軌跡は運命づけられたものと思われる。あとがきで、「『唯一の被爆国』として核がなくなる日まで『核廃絶』を求め続けなくてはならない。それが日本人に与えられた歴史的使命と筆者は確信している」と。今回の報告書の注にも数箇所でこの書が引用されている。その取材力と筆力はただものではない。「密約」をめぐる課題を読み解くのにこれ以上の本はなかろう。私が大学を卒業した頃にこの世に生を受けている太田さんはまことに春秋に富んだ俊才だ。核兵器を必要悪とする見方が支配的であった時代に、核抑止力信仰とでもいうべき冷戦思考に、どっぷりとつかった学者に挟まれて、学問をしてきたどこかの誰かとはいささか違う。

     現在を「第二次核時代」と規定し、今、「長らくタブーとされてきた核使用が現実のものとなるおそれがでてきて」おり、「米国に対する十分な抗議すら行えない」小泉政権は「悲しいくらい無策で怠慢だ」と切り捨てた。果たして鳩山政権はどう評価されるか。盟約の闇がようやく照らされたことは事実だろう。ただし、米国に対して無闇に盟約を揺さぶるだけでは、悲しいくらい愚かで有害だ、となりかねない。

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著者プロフィール

太田 昌克(共同通信編集委員、RECNA客員教授)

「2018年 『核の脅威にどう対処すべきか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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