抽象代数の歴史

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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784535785458

感想・レビュー・書評

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  • (2011.10.14読了)(2011.10.06借入)
    ガロア理論に興味があって、勉強してみようかなと思っているのですが、この本を読んだら、すこし、手掛かりが得られるかなと思って借りてみたのですが。
    かなり甘い考えでした。多分順序が逆だったのでしょう。ガロア理論ぐらいまでは学んだうえで、この本を読むと、その後の数学の発展がわかるのだろうと推測されます。
    大学の数学の講義の場に大学の数学について知らない人が紛れ込んで、黒板に書かれているものを見ただけでは、多分それが数学だとは気がつかないだろうといわれます。
    そこには、数字や計算のようなものが全くないからです。
    現代数学は、抽象化、一般化、が進んでしまい、公理・定理が具体的にどのようなことを言っているのかをイメージするのが、困難です。
    でも、すぐれた数学者たちは、何らかの具体的なイメージを持ちながら、研究しているのだろうと思います。でも、論文にするときは、具体性をすべて消し去って、無色・無臭にしてしまう、と言われています。
    抽象代数の歴史も、具体的なものから、だんだん抽象化されて、ハミルトンの四元数のように、何か具体的な必要性からではなく、論理的可能性を探求するものへと変わってゆくさまが描かれています。でもそれが、新しい物理を切り開く道具として使えるというのは、何と無不思議です。

    章立ては以下の通りです。
    第1章、古典代数の歴史
    第2章、群論の歴史
    第3章、環論の歴史
    第4章、体論の歴史
    第5章、線形代数の歴史
    第6章、エミー・ネーターと抽象代数の創成
    第7章、抽象代数を歴史的に考える授業の例示
    第8章、大数学者六人の伝記
     アーサー・ケイリー(1821-1895)
     リヒャルト・デデキント(1831-1916)
     エヴァリスト・ガロワ(1811-1832)
     カール・フリードリッヒ・ガウス(1777-1855)
     ウィリアム・ロウワン・ハミルトン(1805-1865)
     エミー・ネーター(1882-1935)

    ●代数(ⅰ頁)
    19世紀より前に発展したこの伝統の中では、「代数」は多項方程式の解法を意味していた。20世紀になると、同じことが群・環・体などの抽象的・公理的な体系の研究を意味するようになった。抽象代数が生まれた大きな要因として、数学者たちが古典的問題を、古典的方法で解くことができなかったことが挙げられる。古典的問題は整数論・幾何学・解析学・多項方程式の可解性及びいろいろな数体系の性質の研究から出てきた。
    ●群(27頁)
    「群」ということばを数学用語として初めて使ったのはガロワである。それは置換の集まりで、乗法に関して閉じているものを意味した。
    ●クロネッカーとデデキント(84頁)
    「自然数は神が造った、それ以外は人が造ったものだ」―クロネッカー
    「自然数は人間精神の自由な創造物だ」―デデキント
    ●19世紀数学への貢献(113頁)
    われわれの基準から見ると19世紀の代数は具体的だった。それはなんらかの形で実数または複素数に結びついていた。19世紀の代数の形成に大きく貢献した数学者のうち、20世紀代数学の方向を定めた人として、例えばガウス、ガロワ、ジョルダン、クロネッカー、デデキント、ヒルベルトなどが挙げられる。彼等の代数の仕事の対象としては二次形式・円分体、体の拡大・置換群・代数体の整数環のイデアル・不変式論などがある。これらの仕事はすべて何らかの形で実数または複素数と結びついていた。
    ●エミー・ネーター(166頁)
    ネーターは、自分のやったことはすべてデデキントの研究の中にある、と言っている。
    ●ガウス(177頁)
    ガウスは1805年に幸せな結婚をしたが、1809年に妻が死んだ一年後に、今度は不幸な結婚をし、その傷は生涯消えなかった。両方の妻との間に三人ずつの子供をもうけた。彼が平和な家庭生活に恵まれたのは1931年にやっと第二の妻が死んだあとだった。この時から彼の若いほうの娘が家事全般を引き受け、「彼の晩年二十四年間の親密な同伴者になった」
    ●大学(200頁)
    大学は科学や人文学を教えるだけの場所ではない。特に小さな大学は学生たちの友情をはぐくみ、その本質的自由性により、若者の人格の形成にとってはかりしれない意味をもつ。

    ☆関連図書(既読)
    「数について」デーデキント著・河野伊三郎訳、岩波文庫、1961.11.16
    「大数学者」小堀憲著、新潮選書、1968..
    「ガロアの生涯」インフェルト著・市井三郎訳、日本評論社、1969..
    「近世数学史談 3版」高木貞治著、共立全書、1970.10.20
    「心は孤独な数学者」藤原正彦著、新潮社、1997.10.30
    「フェルマーの最終定理」サイモン・シン著・青木薫訳、新潮社、2000.01.30
    (2011年10月15日・記)

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