新石油文明論: 砂漠化と寒冷化で終わるのか

著者 :
  • 農山漁村文化協会
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  • Amazon.co.jp ・本 (170ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784540011405

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  • 文明や環境問題を物理学やエントロピー論から論じる。生態系や経済・貿易政策にも及んでいる。思想や理念といった人によって価値観が異なるものではなく、エントロピーという科学的立場から考察している点は興味深かった。

    地球温暖化CO2論だけでなく、フロンによるオゾン層破壊についても否定している。

    著者が大問題としている砂漠化は、伐採、焼畑・農耕、放牧という人間の行為によるものである。かつてポルトガル人によって砂糖生産のために森林が伐採されたブラジルのノルデステ地方は、現在も砂漠のままであり、同様のことが世界中の熱帯林で進行している。

    現在の砂漠化の原因として、穀物の過剰生産、自由貿易、累積債務を上げる。欧米が余剰穀物を補助金を付けて輸出したため、途上国の農業は壊滅し、放棄された農地は風水害により荒地となって復活できなくなった。自由貿易では貿易商が大儲けし、資産はその出身国に流入し、国の財政も豊かになる。多国籍企業の半分は、アメリカ、日本、ドイツ、スイスの出身。

    生態系(環境)を論じた章では、廃棄物を自然に返すことで社会と自然の循環を結合することを提案している。江戸時代には、油をとるために雑魚をゆでて生じた魚かすを乾燥させた干鰯が水田や畑の肥料として用いられたため、柴刈が廃れて森林の傷みが減った。人糞も農業に利用され、戦後でも西武鉄道が練馬、所沢方面に向けて深夜の貨物列車を運行していた。

    生態系を論じる立場からは賛同するが、一方で衛生面や臭いといった、現代社会が克服してきた問題をどのように解決するかは課題だろう。

  • 最近の温暖化説を受け入れるのではなく、寒冷化説を打ち出すその理由と、砂漠化しない循環理由、石油文明終了の可能性について書かれている。普段何気なく叩き込まれた常識にとらわれている私達は、あまりに違う観点からの見方に驚くはず。楽しめます!
    (大学院の教科書として使用)

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著者プロフィール

1933年東京生まれ。東京都立大学理学部化学科卒業。東京大学大学院物理課程D2修了後、同大助手を経て理化学研究所研究員。定年退職後、94年から名城大学経済学部教授。06年定年退職。05年4月から09年3月まで高千穂大学非常勤講師。
著書に『資源物理学入門』(NHKブックス)、『環境保護運動はどこが間違っているのか?』
(宝島社)、『Co2温暖化説は間違っている』『弱者のための「エントロピー経済学」入門』『「地球生態学」で暮らそう』(ほたる出版)など

「2011年 『原子力に未来はなかった』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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