資本主義を乗りこえる (内山節と語る未来社会のデザイン 2)

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  • 農山漁村文化協会
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  • Amazon.co.jp ・本 (124ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784540201776

作品紹介・あらすじ

際限なく利潤を追求する資本主義経済が暴力的に台頭し、今日の荒廃した世界をつくりだしている。そもそも資本主義とはどのような経済なのか。それは伝統的な経済とどう違うのか。農業や共同体と資本主義の関係は? これらを平明に解き明かしたうえで、おカネに振り回されない、自然や共同体とともにある経済のかたちを構想する。その蓄積を一番もっているのは、農業だ。自然と人間の関係、労働や共同体をめぐる独自の思想を構築してきた哲学者・内山節が、2018年2月に開催された「東北農家の二月セミナー」にて語った新しい経済論。

感想・レビュー・書評

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    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/566694

  • 資本主義の原理では自滅する運命にある。富が集中すると市場は縮小し、悪辣な経営が資本主義的な動きを拡大し、拝金主義が広がることで社会が荒廃する、ため。

    資本主義の対抗勢力が存在することで、資本主義を修正して延命した。

    同じ小売業でも、拡大を目指すスーパーやコンビニと、生業として行う個人商店の2種類が併存する。職人の延長としての経営は存在している。

    自営業は労働時間の計算はしない。働き方改革=効率的でだらだらしない仕事の方法、とは相いれない。

    菜種油は天ぷら油から行燈の灯りまで使える上にカスを肥料として使える。=農業の商品化の始まり。今は農業も単品大量生産で商品生産に組み込まれている。

    北海道の酪農は補助金をもらっても借金が増える構造になっている。大規模商業化に乗れない。
    資本主義的農業=拡大再生産、商人的農業=信用を高める、拡大を望まない

    資本主義は貨幣を増やすこと、に焦点を当てる。方法は問わない。それに徹すると社会は破滅する。企業経営に倫理観を持ち込み、労働運動で企業意識が高まり延命した。
    社会主義の崩壊で、勝利したように見える資本主義は、規制緩和と市場原理主義で破滅に向かっている。

    地域通貨は地域の循環的な経済を作ることが目的だが、拡大すると通貨と変わらなくなるところに矛盾がある。

    ケインズは理想の社会はできないと言っている。いつでも矛盾がある。
    GDPが計算できなくなる=地下経済が発展、中古品の流通、などによる。通常は発展するにつれて地下経済が減少するが、多様化が進んで把握できなくなる。

    100均ではメイドインジャパンの商品が増えている。

  • ポランニーが主張するように「共同体の慣習」によって地域内経済は等価交換ではない。これは地域外経済にも作用する(p.19)。しかし、資本主義化の過程で、様々なものがシステム化していくなかで、この共同体的慣習による経済への作用は効果を薄めていく。

    資本主義の原理として、「カネがカネを殖やす」ことが目的になっており、これが行き過ぎると最終的には資本主義が自信を食い尽くしてしまう。そのアンカーとして、社会主義という対になるイデオロギーがあったが、1991年のソ連崩壊によってそのアンカーが外されたことにより、資本主義は暴走を初めて行くこととなる。

    ケインズは資本主義を「資本主義以上に優れた経済システムを私はみたことがない」と言っており、現状資本主義に勝る経済システムはないように思われる(p.65)。彼は、不況下において、政府が民間の代わりに有効需要を創出する必要性を説き、それがニューディール政策に繋がるので、これをケインズ政策の全てだと思われがちだが、これは彼の理論の半分を理解していることでしかない(p.62)。最も重要視したことは「貨幣愛の社会になってしまうことを食い止めること」にあった(p.63)。そのため、ロシア革命が起こったすぐに、彼はソ連に行きリアルを観察してきた。この時、「必要だったら援助もふくめて温かく見守るべきだ」と述べた。ソ連が目指した社会は「貨幣愛のない社会」だったので、この点においてケインズの思想と合致しているところがあったのだろう(p.67)。

    ポランニー読も。

  • 東2法経図・6F開架:304A/U25u/2/K

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著者プロフィール

内山 節:1950年、東京生まれ。哲学者。1970年代から東京と群馬県上野村を往復して暮らす。NPO法人・森づくりフォーラム代表理事。『かがり火』編集長。東北農家の会、九州農家の会などで講師を務める。立教大学大学院教授、東京大学講師などを歴任。

「2021年 『BIOCITY ビオシティ 88号 ガイアの危機と生命圏(BIO)デザイン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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