貨幣の哲学 新訳版

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560024201

作品紹介・あらすじ

貨幣論の哲学的基礎づけに終始することなく、貨幣を手がかりとして近代社会の構造と文化の核心に迫る。ジンメルの多面的思索が縦横に展開された畢生の大作。その個人全訳成る。

感想・レビュー・書評

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  • ・ ジンメルの信頼論について
     第二章においても,ところどころで信頼についての記述が見られる.レジュメを確認する限り,最初に登場するのは146-からの貨幣の象徴性に対する否定的見解のところである.ここでは,信頼は貨幣の希少性と結びついていることにより貨幣自体に固有の価値があることを示唆している.(147-149) 次に登場するのが159-で述べられている,実体としての貨幣を消滅させる意味での相互作用としての信頼性である.(必ずしも貨幣の実態性に依拠しないという意味)安定的な経済圏においては,相互作用に信頼が生まれ,それは実体としての貨幣を必要としない.170-では二種類の信頼が確認できる.ともに金属貨幣に関係する信頼で,一つは貨幣を発行する政府や価値を確定する人々への信頼であり,もう一つは価値が継続することに対する経済圏への信頼である.こうした「二重の信頼」が貨幣流通を成り立たせると言ってよいだろう.177-は前者の信頼について述べていると思われる.
     以上より,貨幣を巡る信頼は三つに分けることができる.一つは貨幣の希少性としての金属貨幣への信頼である.これ自体は実体貨幣が流通している経済圏においてのみ言及できる限定的なものだろう.二つ目は,貨幣を「もっぱら通用するもの」としての貨幣たらんとさせる政府や人々への信頼である.三つ目は,そのようにして成立した経済圏自体への信頼と言えよう.
     三上(2008)はジンメルの信頼論を整理しているが(下記参照),そこで述べられている信頼は上記の二点目と三点目であり,貨幣の希少性自体に対する信頼は抜け落ちている.逆に言えば,貨幣自体に対する信頼は一時点的なものであり,高度な貨幣経済を成り立たせる他の信頼に比べれば二次的なのかもしれない.しかし,現代においては紙幣や電子マネーを中心とした貨幣経済が成立している一方で金塊の需要は一定程度あるように思われる.恐らく,貨幣経済が破綻した後でも価値を持つと考えるのであろうから,貨幣自体に信頼を置いているのだろう.ジンメルの信頼論には知識と無知の間にある「信頼Vertrauen」とそうした二項対立の彼方にある「信仰Glaube」に分けられる.(三上, 2008, 6)この区分によれば,貨幣自体への信頼は信仰と言えるだろう.

  • 1369夜

  • 原著の難解さもさることながら、翻訳がゴミ。これなら英訳のほうが読みやすい。大家という位置にいると思しき素人に翻訳させてはいけない。というか、これ翻訳を院生に押し付けたとしか思えないぞ。

  • 半泣きになるぐらい難解。
    授業で読んで、あと途中で断念したス。
    …というか、この翻訳、マズすぎない…?

  • いつか買って読みたいのやが、た、高い・・・。
    人があるモノを欲しがるのは、 "モノ"との間に 「距離」があるからだ、というのがこの本の要点とのことです。

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