ある首斬り役人の日記

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560029268

作品紹介・あらすじ

生涯に361人を刑場の露と消えさせたニュルンベルクの刑吏フランツ親方の克明な日記。犯罪学のみならず中世・近世の社会史や風俗学にとっても貴重な資料。西独の泰斗による解説2篇を付す。

感想・レビュー・書評

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  • ゲームのPentimentで死刑描写が凝っていたので勉強のために購入

  • 新婚の妻が夫は殺人鬼だと思い込んでいた。しかし、実は夫は殺人鬼を処刑する死刑執行人で、それを新妻に打ち明けることができず、真実が暴かれたとき夫は自殺してしまう というガストン・ルルーの短編(『金の斧』)がありましたが、その処刑人は、フライブルクの死刑執行人でした。

    本書のフランツ・シュミット(フランツ親方)はフライブルクからは少し離れた所のニュルンベルクの死刑執行人として実在した人物で、ニュルンベルクのみならず、その近隣一帯で任務に携わっていた。
    彼は、1573年から自分が手を下した死刑、体罰を逐一記録に残しています。
    刑吏としての彼の仕事は、処刑だけに留まらず皮剥ぎ人、便壷の清掃、ハンセン氏病者の駆逐、野犬の撲殺、売春婦の管理などで、一般市民は刑吏とのいかなる接触でも名誉を失うことになる。
    ヨーロッパでは多くは世襲制のこの職業に就いていた人間は忌み嫌われていても刑の忠実な執行人であり、社会に不可欠な存在として認知されていたのだ。

    本書は、そのフランツ親方の記した死刑執行の日記、体罰執行の日記 が二部構成で記されており、つらつらと読んでいるだけで、当時の犯罪や刑罰、時代背景のみならず、捕えられた犯罪者の処刑という最期までのひとりひとりの人生をも浮かび上がらせる。
    当時の人は名前のほかに別名が存在し、その別名たるや、
    「阿呆の耳」「大きな鉤針」「ちびの白樺」など、実にバイタリティにとんでいてその人となりにも思いを馳せることができた。
    死刑に処せられる罪名は、殺人、窃盗、放火、暴行などであるが、嬰児殺しも多く見られる。
    複数殺人、近親殺人など重罪には車裂きの刑、
    泥棒たちには主に絞首刑、
    嬰児殺しには溺死刑
    近親相姦などには火刑
    殺人は斬首刑が執行されているようだが、斬首と絞首では斬首の方が名誉ある死とされ、処刑人のお慈悲で斬首刑になった場合は罪人は涙ながらに感謝したそうである。

    それにしてもフランツ親方は、その日記の記述からして几帳面で真面目、職務に忠実な人間であったようで、361人を処刑したのち、退職後は、在職中行った合法的な罪人の死体の腑分けによって知識を蓄え外科医として活躍したらしい。
    ある刑吏の刑執行覚書が、資料的側面だけではなく、実にヒューマニックな罪人個人の履歴書然と成り立っていることに驚いてしまう。

  • 基本は淡々と罪状と処刑方法を述べているだけの日記なのに、1603年9月14日の日記にだけ、斬首後も7-8分も首が石の上であちらこちらを向いて舌を動かし口を開けた事が書いてあって不思議。

  • 322.34/Sch

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