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- Amazon.co.jp ・本 (511ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560047361
感想・レビュー・書評
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1945年8月のとある数日間の物語。冒頭でヒロインの悲劇的な自死という結末が知らされる、という形式の長編小説。ヒロインが生まれたアメリカ南部の名家が、いかに滅びゆくかというところを、家族それぞれの目線で追う。スタイロンの処女長編。
最終章の、ペイトン(ヒロイン)によるラリッた一人称の語りが、まことに痛切で鬼気迫るものがある。これから命を絶とうとする人間の思考は、まことこのようなものなのかも知れないと思わされ、戦慄する。このあたりは処女作とはいえ、『ソフィーの選択』の著者だなと唸らざるを得ない。
ある歴史を抱えた地域社会において、または、ある風土に生きる人間の集合体において、狂気を発動する潜在的可能性が高まることはあり得るのだろう。
本作においてヒロインが狂い死ぬこと、それに至った歴史的、風土的な呪いを言葉で表現することの至難さ。本作はその至難さに挑戦して見事成功していると思う。
またそのうえで500頁(しかも二段組み)の紙数を必要とするだろうことは、頷ける気がする。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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