ビザンツ 驚くべき中世帝国

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (497ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560080986

作品紹介・あらすじ

羨望の的となった、輝ける文明の歴史。ローマ帝国の継承者として、1000年にわたって東地中海に栄えたビザンツ帝国。その歴史を、政治・宗教・文化・経済など28のテーマを通して、西欧やイスラームとの関係とともに立体的に解説する。

感想・レビュー・書評

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  • 「西でも東でも無い帝国、ビザンツ。」

    アジアにとってはアジアの西のはてヨーロッパにとってはヨーロッパの東のはてにあるビザンツ帝国は、その微妙な存在感を保ちつつ1000年の繁栄を誇った。古代ローマ帝国の継承者を自負して東ローマ帝国を名乗り、人々の名前も西欧風だ。そのわりにはその衣服は男性女性ともに長衣を用い、ヨーロッパの宮廷衣装などとは違ったらしい。陰謀は日常的に張り巡らされて、長子相続というような観念は確立されておらず、前皇帝を倒して即位する皇帝次第で皇室の交代はしょっちゅうあった。

    同じキリスト教国でありながら西欧の国々からは異端としてどこか突き放してみられ、あまつさえ13世紀には首都コンスタンチノープルは十字軍によって略奪の憂き目をみている。一方イスラム勢力であるトルコからは常にその領土を脅かされ、アジアとヨーロッパの境目に存在し続けたビザンツは必然、ヨーロッパキリスト教世界の防波堤ともなっていた。ビザンツが1000年持ちこたえなかったら今のような「ヨーロッパ」というくくりはなく、そこがビザンツ帝国の最大の歴史的功績であると著者は言う。

    本書は、西のはてで東のはて、もとい、実は西でも東でも無い国ビザンツ帝国の謎を、歴史や文化や経済をより細かい項目やキーワードごとに検証したビザンツ帝国本の決定版ともいうべき一冊。学術書一歩手前くらいのトーンでかつ詳細に「ビザンツ」というなじみの薄い中世帝国の実態を明らかにしてくれる。

  • ビザンツを知る上で重要な事柄をテーマ別に述べている。各テーマは時代順に並べられていてビザンツの歴史を俯瞰するのにも適した内容。また西欧に従来からあった蔑視に基づくビザンツ理解についてその背景を考察し、蔑視が生み出した単純な歴史の理解からは離れたところにある「驚くべき」魅力を備えたビザンツの実態に迫っている。

  • 2m

  • ビザンツ帝国の政治・経済・社会・文化をひと通り学ぶには格好の本であろう。数千年におよぶ帝国の歴史的変容を重要な出来事ごとにピックアップして解説している。

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著者プロフィール

1942年生まれ。初期キリスト教史、ビザンツ女性史を専攻。キングズ・カレッジ・ロンドン(ロンドン大学)の古代末期・ビザンツ学講座名誉教授。皇族女性の活躍を描いた『緋色の女性たち――中世ビザンツ帝国の支配者』は高く評価され、各国で翻訳されている。考古学・美術史にも造詣が深く、現代ビザンツ史研究の第一人者である。

「2022年 『ラヴェンナ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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