- Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560082782
感想・レビュー・書評
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外国映画の熱烈なファンというわけでもない(観るのも年に1本くらいだし)けれど、それでも観ていると、俳優さんの上手い下手というのはなんとなくわかる。やっぱりハリウッド映画が物量で押してくるから、アメリカ人の俳優さんが目につくのだけれど、育ちの良さを(演技上)感じさせられ、ノーブルな知性がある演技を見せる俳優さんというのは、気になってプロフィールを見てみると、イギリス人ということが多い。しかも、「演技派」と呼ばれる俳優さんは英国王立演劇学校(Royal Academy of Dramatic Arts、略称RADA)の卒業生であることがままある。ヴィヴィアン・リーもアンソニー・ホプキンスも卒業生だし、今なら、『007 スカイフォール』でQ役を演じたベン・ウィショーが各方面で引く手あまた。そういった名門演劇学校で長く名教師とうたわれたかたの書かれた本ということで、名優を作るもとはどんなものだろうと、門外漢ながら読んでみた。原題は“Words into Action -- Finding the Life of the Play”。
演技や演出といった、実際の演劇のメソッドについて述べた本かと思ったが、邦訳の副題に「戯曲の読み方がわかる20のレッスン」とあるように、言葉の演劇内での働きについて書かれた解説エッセイといったほうが正確だと思う。題材はブレヒト、ベケットにチェーホフ、シェイクスピアを基本に、近現代の演劇のタイトルがじゃんじゃん出てくる。脚注で紹介されている作品も多いけれど、ついて行けずに涙目になることしばしば。『ハムレット』と『マクベス』を読んでいれば、かろうじてよたよたついて行ける感じ。
原題にもあるとおり、言葉を演技に落とし込むときの心構えを諄々と説いているので、「身体が先に動く」という俳優の存在はあまり視野に入っていない。そこをコントロールするのが言葉であり、知性であるという姿勢が貫かれている。この本を読んでいて絶えず思ったのは、RADAの生徒になれるだけでも幸運と才能がある(と思う)のに、教師専任ではなく、実際の舞台経験豊富な百戦錬磨の教師陣にしごかれ、しかも芽が出るとしたら、それはとんでもなく確率が低いのではないかということ。理解力の面で、生徒にかかる負荷が半端ではない。RADAはおそらく、その人の中に隠れた、まだ見ぬ才能を丹念に育てる学校というよりは、中途半端な才能をじゃんじゃんふるい落としていく学校なのだろう。その結果、ものすごい才能を持ち、仕上がりも抜群の人材が残るので、周囲からは「育成が手厚い」と見られることが多いのではないか。これは、サッカー界でFCバルセロナが「選手育成が手厚い」といわれるのと同じ理屈だと思う。
演劇にどっぷりつかっている人ではないと置いていかれてしまう部分も多いけれど、文学的な修辞や韻文・散文についての章には、演劇的なメソッドを使って演説していたチャーチルなども取り上げられていて、「ふむふむ」というところも多かった。とりあえず西洋演劇(とりわけイギリス演劇)では『ハムレット』と『マクベス』は基本だということが痛いほどわかったので、そちらを読んでおいたほうがストレスが減ると思いますよ(たぶん)。ふー、ちょっと疲れた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
私も演劇を少々かじっていたので、この本を手にとってみました。主に演じる人についても取り上げているが、基本的な事から演技に深みを出す小技までを細かく書いている。演劇に興味がない人物でも、一度読めばどの様に舞台が作られていくのかを面白く知ることができる一冊だ。
(外国語学部 外国語学科)