- Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560092019
感想・レビュー・書評
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翻訳がよかった。
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○わがままで自尊心が強く、無知なのに思い込みが強いエンジェルの一生を描く描く物語。
●エンジェルの振る舞いを不愉快に感じていたが、次第にエンジェルこそが誰よりも不幸であることに気付いて、その生き方の不器用さが憎めなくなってしまった。
P18~19
<<孤独な夜、ぐったりして無気力なエンジェルは、目を閉じて、闇の中に
パラダイス・ハウスを浮かびあがらせるのだった。日に日にそれは
飾りたてられ-柱廊、丸屋根、アーチ形の道、ひと続きの階段がつき-
かつて叔母が仄めかしたものよりもはるかに大きくなっていた。
・・・
この夜は、時間が過ぎていくという感覚もなく過ぎた。母親が店を
閉める音、戸の掛け金を掛ける音、それからゆっくりと階段を
上がってくる音が聞こえる頃には、彼女は月光に照らされたバラの
庭園をさまよっていた。>>
P20
<<エンジェルには特別な友達というものがいたことはなかったし、
たいていの人が非現実的に思えていた。超然としていて虚栄心が
強いという評判のせいで、彼女は人から好かれなかったが、時には
不安になって、自分の立場をよくしたい、と強く思うことがあった。
自分を目立たせたい、思うように対等に人と話したい、と。
だが、自分が誰かと対等だなどと考えたことがなかったので、
人と折り合うためにへりくだることができず、ほかの少女たちが
「人身攻撃」と呼ぶものをしてしまったり、おざなりのお世辞を
言って相手を怒らせたりしていた。>>
P35
<<エンジェルは疲れを知らず、何時間も横たわったまま、自分の
ロマンティックな勝利を計画した。その勝利を邪魔するものは
母親だった。だが、自分の母親を想像の世界で殺す気にはなれず、
それをやるには迷信深すぎた。というのは自分自身の鼻を半
インチ削っていたからで、二つも変更することはできないという
迷信にとらわれていたのである。結局、あらゆる場面で、
デヴェレル夫人が背景を鬱陶しくさまようことになった。
しばらくして、エンジェルは解決策を思いついた。あの人は、
わたしの侍女になればいい、と決めたのだ。ロティ叔母さんが
奥さまの侍女であるように。>>
P50
<<以前は彼女もロティも、エンジェルの超然とした気取りを
誇りにしていた。だが、今ではそれが恐ろしかった。その
影響で、デヴェレル夫人の強い性格が、愚痴っぽくおどおど
したものになっていった。彼女は遠慮がちな物言いや卑屈な
態度をとるようになり、緊張に耐えられなくなると、自分が
どれほど犠牲を払ってきたか、若いころ、いかに身を粉に
して働いたか、不平を並べたてた。エンジェルはそれをすべて
無視した。>>
P84~P85
<<エンジェルは再びソファに腰を下ろした。
・・・
「きみは不思議な子だ」セオは言った。「きみには勇気が
ある。私はきみを尊敬するよ」>>
P111~P112
<<エンジェルは、セオが後ろのほうにいるのに気づいていない
様子だった。突然、何の前触れもなく、みじめさと失意が、
息苦しいほどに彼女を襲った。
・・・
「寒いんだよ」セオはあわてて言って、肩のスカーフを
巻き直してやり、母親とハーマイオニがエンジェルの
涙を見つける前に、急いで玄関ホールの中へエンジェルを
促した。>>
P151
<<デヴェレル夫人は、お茶の時間に這うように自分の部屋に
下がってベッドに入ると、もう二度と起き上がれなく
なってしまった。
エンジェルは、夕食の前に母親のもとへ行き、苛立った
ように寝室をうろうろしながらぶっきらぼうな質問ばかりし、
自分以外の人間が病気にかかったことで腹を立てた。
・・・
デヴェレル夫人は、妹に会うことなく、死んだ。>>
P257
<<金を借りるという発想はエンジェルにはなかった。これまで
そうしてきたように、彼女にとって、金とは稼ぐものだった。
帽子を置くと、エンジェルは深く息を吸い、立ち上がった。
自分の中に力が戻ってくるのを感じた。腕と指の先には
肉体的な強さが、そして心には輝くような自信が蘇ってきた。>>
☆きっかけは本読みHP
読了日:2010/07/20 -
2009.08.01. おーもーしーろーい!ものすごいワガママ娘のワガママっぷり。ここまできたらすごい、と思えるのは、私が本の外の住人だからだろうな。病的な空想癖と虚言癖を持つエンジェルという少女が、作家になり、社交界デビューし、破産していく…というだけの話なんだけど、この娘の語り口が、おぞましいくらい流麗で、気づいたらどんどん読み進めてしまう魔法。オゾン監督で映画化されてるの、見たら印象が違うんだろうなぁ。
2009.07. フランソワ・オゾンが監督してた映画を、ちょっと見てみたかったんだったっけ。 -
強烈なまでの虚構賛美と自己愛を持った、主人公エンジェル。
必死に現実に抵抗する彼女の生涯が、劇的に描かれている。