経済学の壁:教科書の「前提」を問う

著者 :
  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560094471

作品紹介・あらすじ

新古典派からマルクス経済学、行動経済学から神経経済学まで、「学派」の壁を超えたはじめての経済学入門! 新たな地図で経済学の海へ

感想・レビュー・書評

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  • 経済学の学説を主流派・非主流派問わず概観し、各学説の前提を明らかにしようとする、野心的で意義深い一冊。
    そしてその試みは、一定程度成功している。
    大学で経済学を専攻していた頃、主流派と非主流派の違いを明示的に扱ったテキストがないかなぁと漠然と思っていた自分にとっては、これこそ、という一冊だった。

    惜しむらくは、わかりにくい点もあったこと。その理由はいくつか思い当たる。
    一つは、(限られたページの中で数多の学説を扱うという本書の特性上やむを得ないのだが)一つ一つの学説の説明はかなり端折られていて、初めてその学説に触れる人にはわかりにくいこと。学説によって、説明がわかりやすいものとわかりにくいものがあった。そこには、一人の著者が、限られた時間のなかで膨大な数の文献の内容をまとめていることも影響していると思う。
    もう一つ、主に1章・2章で感じられたことであるが、たくさんの文献が引用されるあまり、全体を貫く骨子がわかりづらく、読みにくさを感じた。パッチワーク感があるといおうか。しかも、どこまでが引用されている文献での主張で、どこからが本書の著者の主張なのかもわかりづらい。この点は、文章の構成あるいは体裁が影響していると思う。例えば、引用文献の主張の前後に1行アキをつくる、字下げをする等の工夫をすれば解消された可能性はある。

    本書の狙いや内容は★4〜★5である一方、上に挙げた「惜しい」点があり、トータルとしては★3.5といったところ。

    とはいえ、冒頭述べたように本書の試みは非常に意義深いと思うし、関心のある読者には刺さる本だと思う。
    読んでよかった、書いてもらえてよかったと思う。

  • 毎年ノーベル経済学賞の発表があるたび、これが経済学なのか。今の先端の経済学はどんな議論をしているのだろうと思うことがしばしば、
    経済学の全体を一般向けに解説した本はありそうでなかった。ただ幅広く押さえようとするために簡単にポイントだけを説明した箇所も多く、どの辺りに差異があるのか、前提の知識がないために分かりづらい点は残った。
    それでも様々なに枝分かれした今の経済学のさわりを俯瞰できた点はよかった。
    本書の中程にあった各国の中央銀行が政策分析の中心としているという「動学的確率的一般均衡」とはどのようなものか。一般向けの解説があれば読んでみたい。

  • とあるセミナーで推奨されていたので手にしてみた。元新聞記者の立場(学者ではない)立場から、経済学の全体感を捉えに行く視点で書かれている。学者になると所属する学派への忖度から、他の学派への正しい理解が期待しづらい事から、客観的な視点で解説を期待した。

    前半は各学派の説明が主で正直退屈。限られた分量の中で膨大な量をまとめるので、個別の議論が薄くなるのはやむを得ないか。後半いくつかハッとした内容あったのでメモ。

    比較制度学:
    制度が誕生した経緯、変化、地域による違いに目を向ける理論。日本の終身雇用制度は、大多数の企業が採用しているため、個々の企業も採用するのが望ましく、社会全体に定着しているため。

    制度的保管性:
    経済システム構成する様々な制度は、相互に保管し合っている。日本企業の株主持ち合い制度は、戦後GHQが発端。株価下落と買い占めを防ぐために企業グループ内で株式を持ちあった。内部昇進制度、長期雇用、企業内組合などと補完しあって安定したが、低成長環境下、改革を妨げる壁になっている。

    新古典派:
    根本のところで日本社会に固有の文脈に適合していないため、世間一般の認識とずれがち。

    ★日本の場合、学会は新古典派、政界はケインズ経済学が根強い。(アベノミクスの金融緩和政策はケインズ制作の一種だった)

  • 図書館で借りた。
    何か聞いたことある言葉はいっぱいだが
    きちんと理解できないから使いこなせない

  • 現代における経済学おさらいの本 学者には書けない全体観・網羅性ではあるが
    ウィキペディアのコピペの印象 論点に深みがないのは「GE盛衰記」の真逆
    経済学について頭の整理には多少役立ったかなという程度 残念 そもそも困難
    1.ケインズvsシュンペーターは短期vs長期ではない
     ケインズは大恐慌という眼前の火事を消火するのが最優先事項と認識
     
    2.
    3.
    4.
    5.

  •  記者の書いた本。中身は経済学史よりの入門書。

     ところで本書のPR文には文句がある。
     《学派の「壁」を越える、初めての知的冒険》
     ……初心者向けに異端派を紹介するコンセプトの本は、既に存在していると思う。

     一段落目《①現代経済学への批判が絶えない。②日本の大学では、標準的な履修コースが普及しているが、学生の間からは数式やグラフばかりで学習する意味を見出せないとの声をよく聞く。③「経済学は役に立たない」と切り捨てるビジネスパーソンも少なくない。》
     ……1文目と2文目が乖離している。2文目は勉強中の学生の愚痴で、3文目は意味不明だ(ビジネスマンが注文をつけるとしたら経営学だし、役職や職種により学問を役立てられる度合いは異なるだろう。なによりビジネスへの応用例は軽くググれば見つかる)。
     1文目の根拠は何?
     
     3段落目《そこで、本書では主流派と異端派の諸学説の原典や基本的な考え方を網羅し、経済学という学問の本質を掘り下げたうえで、経済学との付き合い方を提言する。》
     ……相当ビッグマウス。その試みが300頁の薄さで成功したかは微妙だが、一応、各自確認してほしい。


    【書誌情報】
    『経済学の壁――教科書の「前提」を問う』
    著者 前田裕之
    ジャンル 社会 > 経済
    出版年月日 2022/07/29
    ISBN 9784560094471
    判型・ページ数 4-6・304ページ
    定価 2,420円(本体2,200円+税)

    ◆学派の「壁」を越える、初めての知的冒険
     現代経済学への批判が絶えない。日本の大学では、標準的な履修コース(ミクロ経済学、マクロ経済学、計量経済学)が普及しているが、学生の間からは数式やグラフばかりで学習する意味を見出せないとの声をよく聞く。「経済学は役に立たない」と切り捨てるビジネスパーソンも少なくない。
     経済学とはどんな学問で、根底にはどんな考え方があるのか? 経済学の「前提」をよく理解せずに教科書や入門書を手に取り、経済学を学ぶ意義が分からないまま、消化不良を起こしてしまう人が多いようだ。
     そこで、本書では主流派と異端派の諸学説の原典や基本的な考え方を網羅し、経済学という学問の本質を掘り下げたうえで、経済学との付き合い方を提言する。
     著者は日本経済新聞で、日本銀行や大蔵省をはじめとした経済官庁や銀行などさまざまな業界を取材する一方、岩井克人『経済学の宇宙』を手掛けるなど、ジャーナリズムとアカデミズムを自由に行き来してきた、経済論壇では稀有の存在だ。正統派と異端派の学派の壁を軽やかに飛び越え、一冊で経済学のすべてを描き切った渾身の経済学案内。
    [https://www.hakusuisha.co.jp/book/b607752.html]

    【目次】
     はじめに

    第I章 経済学者の類型
     一 経済学者とエコノミスト
     二 ハード・アカデミズムかソフト・アカデミズムか
     三 エコノミスト・マルクス?

    第II章 経済学とは何か
     一 経済学の二つの「顔」
     二 科学としての経済学
     三 経済モデルという寓話

    第III章 ミクロ経済学の奔流 
     一 古典派経済学
     二 新古典派経済学
     三 ゲーム理論
     四 情報の経済学

    第IV章 マクロ経済学の激動
     一 ケインズ経済学
     二 新古典派総合
     三 マネタリズム
     四 新しい古典派マクロ経済学
     五 ニュー・ケインジアン経済学

    第V章 「異端派」経済学の興亡
     一 マルクス経済学
     二 制度派経済学
     三 ポスト・ケインズ派経済学
     四 レギュラシオン理論
     五 ネオ・シュンペーター派経済学/進化経済学

    第VI章 現代経済学の新潮流
     一 行動経済学
     二 神経経済学
     三 新制度派経済学

    第VII章 経済学の多様性
     一 エコン族の生態
     二 現実との乖離
     三 その付き合い方

     索引
     文献

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著者プロフィール

前田 裕之 (マエダ ヒロユキ) 学習院大学客員研究員、川村学園女子大学非常勤講師

「2023年 『データにのまれる経済学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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