チェスへの招待 (文庫クセジュ 908)

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (143ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560509081

作品紹介・あらすじ

頭脳のスポーツと称されるチェスは、五世紀のインドに起源をもつ。ネット・チェスが普及した現代までの歴史をたどりつつ、社会や芸術とのつながりや、個性的なプレーヤーたちの逸話を紹介する。ラーセン対スパスキーの名局解説では、ゲームの醍醐味を味わうことができる。わかりやすい手引書。

感想・レビュー・書評

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  • チェスの歴史と逸話、タイトルを巡るプレーヤーの興亡、駒の説明、文学や映画などにおけるチェスの取り扱いなど。チェスの定跡、入門書とは少々趣を異にするのが面白い。

  • 訳の拙さや間違いがたしかにあるにしても内容は興味深かった。しかしこれは単に趣味の合う/合わない問題かもしれない。ちなみに局面図はほとんどない。

  • 急にチェスに目覚めて、手持ちのiPod Touchに無料のゲームをダウンロード。そういえば棚にチェスの本があったな、と突然読み始めたのがこの本。文庫クセジュなので、フランス人対象なのが読んでいてちょっと辛いところ。日本語がこなれていないのも一因か。

    それでいながらも、チェスの魅力は十分伝わってきた。言うまでもないが世界的には将棋よりメジャーな存在。駒の象徴性が語られ、チェスが登場する文学作品も多い。好手や悪手だと!や?がつくのも、妙に人間くさくて面白い。

    小川洋子やツヴァイクにも手が伸びそう。

  • [ 内容 ]
    頭脳のスポーツと称されるチェスは、五世紀のインドに起源をもつ。
    ネット・チェスが普及した現代までの歴史をたどりつつ、社会や芸術とのつながりや、個性的なプレーヤーたちの逸話を紹介する。
    ラーセン対スパスキーの名局解説では、ゲームの醍醐味を味わうことができる。
    わかりやすい手引書。

    [ 目次 ]
    第1章 ゲームの歴史、世界の歴史(起源から19世紀まで;産業革命から1914~18年の第1次世界大戦まで;1918年からこんにちまで)
    第2章 チェスの世界(ゲームのやり方;大衆的活動、プロフェッショナル・スポーツ;簡単なルールのゲーム)
    第3章 チェス、世界のゲーム(チェスを通じての人間;チェスと芸術;チェスを通してみた社会)

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  •  もうチェス関連のブログ等で何人かの方が触れていて賛否両論のようだが、一言で言うと「おもしろいが技術的な入門書ではない」。
     30年ほど前に出た同文庫『チェスの本』に比べれば、成相氏は共訳者や元日本チャンプ鈴木知道氏の助けを得てかなり読みやすい本に仕上げたと言える。しかし、最近躍進目覚ましいフランスの国内チェス事情は日本の手本になる可能性があるとはいえ、一般の読者には縁遠い話である。

     以下、章ごとに見ていこう。


    目次(最下位見出しまで含む)

    まえがき ジョエル・ローティエ(ACP会長)、ジャン=クロード・モワン(FIDEマスター…)
    第1章 ゲームの歴史、世界の歴史
     I 起源から19世紀まで
      1 チェスの起源
      2 中世のアラブとヨーロッパ、地中海のルネサンス
      3 18世紀のフランスと英国-百科全書と産業革命
     II 産業革命から1914~18年の第1次世界大戦まで
      1 19世紀のなかばから1914年までのアングロ・サクソンの優勢
      2 チェスにおけるロマン主義
      3 ドグマ的なリアリズム
     III 1918年からこんにちまで
      1 古いヨーロッパの最後の火
      2 ソビエトの覇権と冷戦

     チェスの起源からその駒やルールの変遷を政治や文化史と照合する試み。ハイパーモダンとシュルレアリスムはたしかに対応していると思うが、明らかにできすぎたシナリオも見られる。しかし、ここは細かい詮索はせずに著者のファンタジーに身をまかせるのが得策だろう。
     どこかで聞いた気もするが、いちばん笑えたのはp.46「このほっそりした虚弱児カルポフは、ボトヴィニクによってすぐに『保育器に』に入れられた」。現代の棋士が出てくる部分では、その背景知識がないとおもしろさは半減するだろう。

     最初から翻訳に触れずにいられない。「まえがき」の訳がひどいのでどうなることかと思ったが、文章の流れは30年前よりずいぶん良くなった。しかし、不十分な主語・代名詞処理、場違いに硬い漢熟語、こなれない表現(p.33「2人の強い対局者の」→「二人の強豪同士の」)等が多く、私の親ほどの世代の学者がこういう日本語で良しとする神経を疑う。
     直訳調から英語とは違う仏語の慣用表現がかいま見えるのは、かえっておもしろいかもしれない。仏棋士St. Amantは聖アマンと訳される場合が多いが、サンタマンとリエゾンで書かれると別人のようだ。まさか著者への敬意ではなかろうが、ドイツ名の発音は少しおかしい。それでもピノー本ほどではない(笑。

    第2章 チェスの世界
     I ゲームのやり方
      1 チェスは儀式である
      2 チェスのいろいろな形
      3 組織による実践
     II 大衆的活動、プロフェッショナル・スポーツ
      1 大衆的活動
      2 プロフェッショナルなスポーツ
      3 ショーとしてのゲーム
     III 簡単なルールのゲーム(ラーセン対スパスキー)

     遅ればせながらゲームとしてチェスを解説するが、ルール説明は散文的で分かりにくい。それを踏まえて棋譜の書き方の説明がてらラーセン対スパスキー戦に挑む大胆な構成だが、この辺りの訳が特に分かりにくいので一般の読者には酷と思われる(例えば、p.94「心配なくg4のビショップで守られているラーセンのクイーン」のような長い修飾)。
     ポジション、マテリアル、オーバープロテクトなる用語も続出するが、巻末の「用語集」を参照すべし。MIやGMIのような略号は英語と異なるので、英語がスタンダードな(しかしFIDEの本部はフランス)日本向けにはどうすべきか迷うところだ。用語はほぼ英語で表記されている。

     本書を手に入れた一般の方のために、明らかな間違いを指摘しておこう。p.83「1万120」は1万の120乗で、「チェスの指し手の数」というより「チェスのありうる局面数」の方が分かりやすいだろう。p.95「g2へ、さらに」はいらない。

    第3章 チェス、世界のゲーム
     I チェスを通じての人間
      1 チェスのゲームと精神分析
      2 チェスのゲームと精神医学
     II チェスと芸術
      1 チェスは文学の素材であるか
       (A) 手ほどきの小説
       (B) 冒険小説
       (C) テーマ小説
       (D) 象徴的な小説
       (E) 謎の小説
       (F) チェスの構造による小説
      2 チェスと造形芸術
      3 映像のチェス
     III チェスを通してみた社会
      1 社会および政治のモデルとしてのチェス
      2 軍隊のモデルとしてのチェス
       (A) 古典的な戦争からこんにちまで
       (B) こんにち
    おわりに
    用語集
    訳者あとがき
    参考文献/邦語参考文献(訳者による)/参考ウェブサイト(訳者による)

     一転してチェスのよもやま話だが、『完全チェス読本』とは趣が異なる。Iはファインの『チェス棋士の心理学』(拙訳中)のエッセンスで、またもやモーフィーの独り言(出典は『地獄の季節』らしい)が引用され、「チェスは延ばされた狂気」で締めくくる(訳が締まらないが)。

     IIで紹介されている芸術作品では、ツヴァイクの小説を私も訳したい。IIIチェスがどれほど社会や軍隊のモデルたり得るかについては、著者は第1章と同じく想像力たくましく、戦争とのパラレルな歴史観は妙に説得力があり、最後は碁まで引き合いに出す。
     ドレスコードまで規定する大会があるのはチェスの昔ながらの高貴なイメージを引きずっているからだろうし(単にスポンサーの都合だったり)、おかげで幼少時にチェスをさせてもらえなかったピノー氏の例もある。実情はホームレスのハスラーからウェブ上のオタクまで幅広い。

     「用語集」、p.134「3年に1回出版」は1年に3回の間違い。「参考ウェブサイト」では、現JCCA(日本通信チェス協会)のURLがまだJPCAのものになっているのが残念だが、和書でもこれほどウェブの現状に触れた本はないだろうし、翻訳を差し引いてもおもしろい本ではある。

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