世界標準研究を発信した日本人経営学者たち: 日本経営学革新史1976-2000年
- 白桃書房 (2021年4月2日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
- / ISBN・EAN: 9784561161851
作品紹介・あらすじ
近年、大学に職を得るにあたり、査読付き英文雑誌への採択が重要視されるようになった。その影響力を定量化したインパクトファクターに直結し、実績としての評価がされやすいとの認識が広まったためである。
しかしこのために、論文の生産に汲々とし優等生的基準に縛られるあり方に著者は異を唱える。「経営学研究は知的冒険であり、未知の世界への挑戦そのもの」と言い、「試行錯誤を伴う苦労の末、明らかにできた発見物が他の研究者や実務家にどのように評価され、彼らの活動に活かされていくのか」、一喜一憂し、「知的興奮を味あわせてくれるのが経営学研究ではないのか」。
本書は世界的に影響力ある研究を発表した研究者やその共同研究者たちを取材し、試行錯誤の過程を経て、対象とする研究が発表されるまでを物語として再構成し描き出している。そして研究活動が、予定された順序に従い理路整然と行儀よく進んでいくのではなく、同時期あるいは時間的に連続し相互関連しながらより大きな研究成果へと結実していく課程を、「動画」として記述、解説を試みている。
若手研究者だけでなく、日本の経営風土の下に生まれたユニークな研究を学べ、経営学に関心のある一般の方にもお勧め。
感想・レビュー・書評
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東2法経図・6F開架:335.12A/O24s//K
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伊丹さんや野中さんをはじめとする日本発の「世界標準研究」がどのようにしてなされたかについて、丁寧なインタビューを踏まえて、まとめてある。
研究裏話しみたいな感じで、仕上がった本を読むのとは全く違う知的なスリルがあって、とても楽しく読んだ。
といっても、これはたんに裏話しをまとめただけの本ではなく、イノベーティブな研究がどのようなプロセスのなかで生み出されるかというケーススタディのようなもの。
大きくは4つのケースが紹介されて、そこから導き出される洞察をもって、本書は締め括られる。(その後に長いエンドロールで、ユーザー・イノベーションのプロセスの紹介がさなされる)
結論部分を紹介すると、読む楽しみがなくなるので、そこは読んでの楽しみということで。
個人的には、知っている人、会ったことのある人、本で読んだことがある人がときどき出現して、おおおお、あれはそんなにすごい人だったんだ!と驚いてしまったりした。
そして、大学時代に商学部という経営系の学部にいたにもかかわらず、授業はつまんなくて、学校にはほとんどいかなかったのだが、ここにでてくる先生方も授業はつまんなかったらしく、学校には行かなかったとか、もっとイノベーティブな研究、実証を重視した研究、そして授業をよりよいものにしたいと思っていたということに共感した。
その動きがしっかりと実現化したのは、わたしの卒業後。つまり、わたしが授業がつまんなくても、それはわたしのせいではなかったのだ。
そういう意味で、ちょっとスッキリした。