ヒトの起源を探して: 言語能力と認知能力が現代人類を誕生させた

  • 原書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784562053421

作品紹介・あらすじ

ホモ・サピエンスは他の種族よりも脳の容量は小さいのに、どうして現生人類として繁栄することができたのか。遺伝学や認知心理学の最新研究を取り入れ、脳の構造から解き明かすヒトの進化の分岐点!

感想・レビュー・書評

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  •  人類の長い経験を記す文化的な多様性が無限に広がる中で、今日の人類に何よりも共通しているものが一つあるとするなら、それは象徴的な能力だからである。それは、自分の周囲の世界を体系づけて、精神的表現の言葉に変え、心の中で幾通りにも組み合わせ直すことのできる人間に共通の能力だ。この独特な精神能力のおかげで、私たちは頭の中で別の世界を組み立てることができ、それが人間の大きな特徴である文化的多様性のまさに基礎を形作っている。世の中のほかの生物は、多かれ少なかれ、自然に与えられたままの世界の中で暮らしている。そしてそれらの世界とのかかわり方は、時に驚くほど高度であっても、おおむね直接的である。それとは対照的に、私たち人間はーしばしば残酷な現実が割り込んでくるとはいえーかなりの程度まで脳が作り直した世界の中で暮らしている。(p.14)

     残念なことに、そうやって原則として意見が一致したところで、実際にはほとんど問題は解決されない。なぜなら、骨と歯しかわからない化石の種類にあてはめるのに必要な比較的単純な言葉においてさえ、「人の特性」が本当のところ何であるかという点で意見がまとまらないからだ。(p.131)

     人類史の最初から、世界には一度にたくさんの異なる種類のヒト科が存在しているのが常だった。時に同じ地域にいくつものヒト科が生息していたこともあった。それとは驚くほど対照的に、ひとたび行動面で現代的なホモ・サピエンスがアフリカに出現してからは、世界は急速に一つの人類の単一文化になった。これはきっと私たち自身についての重要な何かを告げているに違いない。故意であろうとなかろうと、私たちはまったく競争を受け入れなかったばかりか、その心の狭さを表現し、押し付けるための独特な能力を身につけていた。これは心に刻みつけておくべきことかもしれない。今でも私たちは精力的に、自分たちにいちばん近い、現存している類縁を絶滅に追い込もうとし続けているのだから。(pp.279-280)

  • 請求記号 469.2/Ta 95

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著者プロフィール

イアン・タッターソル(Ian Tattersall) 
古生物学者。アメリカ自然史博物館人類学部門の名誉学芸員。邦訳書に『ヒトの起源を探して:言語能力と認知能力が現生人類を誕生させた』(原書房)、『サルと人の進化論:なぜサルは人にならないか』(原書房)、『最後のネアンデルタール 別冊日経サイエンス127』(日経サイエンス)。ロブ・デサールとの共著に「ワインの博物誌」、「脳:ビッグバン、行動、信念」がある。ニューヨーク市在住。

「2020年 『ビールの自然誌』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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