人が自分をだます理由:自己欺瞞の進化心理学

  • 原書房
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (396ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784562056385

感想・レビュー・書評

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  •  思ったほど、面白くはなかった。
     人類進化に対する興味で読んでみた。『サピエンス全史』(ユヴァル・ノア・ハラリ著)にあるように、言語による脳の進化、「認知革命」を経て、人類の歴史は、全て想像上のお約束に則って成り立っているという説に、本書の言う、人は自らを騙す、自己欺瞞を行っているという話が、さらにホモ・サピエンスの進化の謎を補完してくれると期待したのだが・・・。

     本書の趣旨、検討課題は、

    「わたしたち人類は、隠された動機に基づいて行動できるだけでなく、そうするべく設計されている種である。私たちの脳は私欲のために行動するよう作られている一方で、他者の前では利己的に見えないように努力するのである。そして、わたしたちの脳は他者を惑わせるために「自分自身」すなわち意識にさえ真実を明かさない。自分の醜い動機など知らなければ知らないほど、他者からそれを隠すことが容易になる。」

     この自分の中にある醜い動機を、「脳の中のゾウ」と呼び、見て見ぬふりをしている、あるいはもっと意識の深層に埋没させて行動している様々な事例を列挙している。消費活動もしかり、芸術の存在意義もしかり、慈善活動もそう、医療や教育体制も偽善というか、本来の目的以外のことを求め、それで成り立っている現代社会を嘲笑う。

     が、だから、どうした?というものが多い。
     要は、目からウロコな事例が少なかった。本当に必要なものでなく、自己顕示のための消費などはほとんどの人が知っていることだろう。寄付やボランティアにしても、およそ利他が主眼ではないことはやってる本人も気づいているはず。少なくとも自分は自分の満足の為だと分かってやっている。

     それらを多くの事例を挙げていかに論拠立てて説明できるか。その点だけが目新しい(のか?)という内容だった。

     それらの自己欺瞞をあげつらったところで、人はそれを改めようとはしない、というのも本書の結論だ。
     他人を欺くため、自らも騙す(無意識に)。ルールがあれば、バレないように不正を働く。それが人間だということらしい。 ルールで縛れば縛るほど、人は進化する。

    「言うまでもなく、わたしたちの脳は縮まなかった。それどころか拡大した。そしてそれは規範があったにもかかわらず、ではなく規範があったからこそだった。 」

     だよね。知ってたよ。 なんだかなあ。

  • 「しらずしらずあなたの9割を支配する無意識を科学する」

    我々は奥深いところまで社会的生き物である。
    だれでも一人の時は誠実だが、二人以上になると偽善が始まる。
    無意識に自己欺瞞を行っている。

    話す機能は基本的に見せびらかす行為。自分の持っているリュックサックとその中身を見せびらかして、気に入ってもらうために話す。

    顕示的消費=みせびらかすための消費。ほとんどの消費はこれ。
    エコ自動車を買うのも顕示的消費。プリウスが特徴のある形をしているのは、一目でプリウスとわかるため。
    顕示的利他主義=自分は利他主義の人間であると見せびらかすため。
    「消費資本主義 見せびらかしの進化心理学」
    自分用に買うか見せびらかし用に買うか。

    写真の出現で、絵画は印象派や抽象画ができた。

    手作業でつくられたものは価値がある、という価値観は手作業が大変だと知っているから。
    コンクリートの建築「ブルータリズム」は一般人には無機質であると人気がないが、建築を知っている人はそれを作ることが大変であるがゆえに好む人が多い。

    寄付は気持ちよくさせる。人に見られているときのほうが寄付は多い。

    シグナリングモデル=教育そのものより卒業証書、ダイヤモンドの鑑定書など。

  • 【版元】
    著者:ロビン・ハンソン
    著者:ケヴィン・シムラー
    訳者:大槻敦子

    シリーズ 好評・重版書
    出版年月日 2019/02/27
    ISBN 9784562056385
    判型・頁数 4-6・396ページ
    定価 本体2,700円+税
    http://www.harashobo.co.jp/book/b436802.html

    【簡易目次】
    第1部 なぜ動機を隠すのか
    (動物の行動
    競争
    規範
    不正
    自己欺瞞
    ほか)

    第2部 日常生活のなかの隠れた動機
    (ボディ・ランゲージ
    笑い
    会話
    消費
    芸術
    ほか)

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著者プロフィール

ジョージメイソン大学経済学准教授。オックスフォード大学人類未来研究所研究員。シカゴ大学で物理学と哲学の修士号を取得後、ロッキードとNASAで人工知能研究に従事。カリフォルニア工科大学にて社会科学博士号取得。経済学、物理学、コンピュータ科学、哲学について60の学術論文があり、その論考は約2800の論文に引用されている。著者が運営するブログOvercomingBias.comは800万view以上に達する。

「2018年 『全脳エミュレーションの時代・下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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