移動力と接続性 上:文明3.0の地政学

  • 原書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784562071418

作品紹介・あらすじ

人類は移動によって「進化」してきた。あらたな50年は困難に直面しながらもフレキシブルに多様化し、国境なき人類は文明3.0を迎える。厖大なデータと世界各地で得た見聞をもとに導く未来像。ポスト・コロナの新『「接続性」の地政学』。

感想・レビュー・書評

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  • 著者の主張を簡単にまとめると以下のようになるでしょう。「北」の先進国は日本をはじめ人口が減少している。しかし地球温暖化によってロシアを含め「北」は住むのにより一層適した環境になるだろう。対して「南」は人口過剰と地球温暖化による沿岸部の水没を課題にしている。ゆえに長い目で見れば「南」から「北」への移民は進むし、先進国もそれを受け入れるべきだ、これからは移動の世紀になる、ということになります。

    こう書くとわかるように、主張自体に特に目新しさはないです(どこかで聞いたことがある)。その「平凡な主張」を補強するかのように、これでもかと世界中の事例が紹介されているのですが、事例の参照元が全く記されておらず、主張を裏付けるデータもほとんどなく、個人的には本書全体(下巻も含む)を通じて一貫して不信感を持ちました。現象を一面的にしか見ておらず、しかも自分の都合の良い新聞・雑誌記事だけを抜き出しているのではないかという印象を持ったということです。端的に言えば、著者の議論が荒っぽいのです。またこれは下巻の書評で書こうと思いますが、書いていることに矛盾があり、論理的には「むしろ移動は減るかもしれませんよね?」と思わせる箇所があったことも指摘したいと思います。

  • 典型的なグローバリストの考え方で、数字及び経済的な観点しか見ておらず、保守を完全に間違いと断定している。
    現状の二分化の原因の一つがこうしたポリコレ、全体主義が原因で、破壊工作の多くが左派団体であるにもかかわらず、そうした観点は全く記載されていない。
    ただ本の内容としては人口動態を俯瞰的に世界を観れるという点で優れている。

  • 面白みがある本ではないが、改めて国、国境とはということを考えるきっかけになって。
    そして、意外と知らなかった日本の現状。(記述は少なかったですが)

    読んでよかったなと思えた一冊です。

  • 学生の頃から漠然と海外に移住したいと思っている。主に老後の経済的な不安からの開放が目的であったが、最近の円安の急激な進行により、安い日本が加速しており、今のうちに移住しないと駄目なのではないかと思いはじめている。
    ITの進歩で、どこにいても、今楽しんでいるコンテンツにアクセスできる状態になっており、接続性は確保できるので、移住のハードルはかなり低い世界になってきた。

  • 東2法経図・6F開架:334.4A/Ke67i/1/K

  • ウクライナからの避難民が10日間で150万人を超えた。
    いまの場所に留まり続けることは、間違いなく自らを滅ぼすことになるような人々は、政治難民だけでも何千万人もいるのに、この先、気候難民だけでも、桁がさらに増えた10億人以上が予想されている。
    他国に移住するなんて考えもしていない、私も含め何十億もの人々にとっても、どこかに永住し続けるというのはますます難しくなっている。
    たとえすでに誰もが逃れたいと思うような、すべての要素が満たされた国に住んでいても、大量の移民によって不安定化する未来がないとは断言できない。

    未来を少しでも予測しようと思ったら、最も移動力の高い若者世代の流れを追うことだ。

    「今日の彼らの向かっている方向、暮らし方、明日のどんな社会、政治、経済モデルが主流になり、どんなモデルが失敗するかを示している。今日国民の数が減っている国は、明日衰えるだろう。一方、今日若者が増えている国は、明日繁栄するだろう」

    移動することは、不確実さに対して私たちが出した答えなのだ。
    ただ一度移動するのではなく、常に移動し続けることが普通になる。
    絶えず流動的に、量子のように世界を動き回る存在が、未来の我々なのだ。

    フィリピン人メイドやインド人建設作業員、高給取りのデジタルノマド、パスポートを複数所持する億万長者。
    人が動くと、サプライチェーンも動く。
    労働力や資本は絶えず新たな土地に移り、そのたびに新しい生産性の地理を作り出す。
    移動力こそが、私たちの未来の文明を考察するために必要な視点なのだ。

    機械との競争は「一流生存」の世界で、トップレベルのスキルがない限り、貧しい労働者は、機械化された製造、物流、小売部門で使い捨ての歯車として働かされる。
    例えば、アイロンがけやレストランでの給仕、ゴミトラックの操作などだ。

    当初、多くの政府は、パンデミックのさなかのロックダウンにより、夫婦や恋人が屋内退避を強いられることで出生率の上昇につながるのではと期待したが、見事に裏切られた。
    逆に離婚率は上昇し、少子化がさらに加速した。
    現在、ミレニアル世代とZ世代を合わせると、全世界の人口の64%を占めている。
    だが、この若い世代が夜に送り出している子供の数は、彼ら自身よりも少ない。
    つまり、アルファ世代はZ世代より少なくなる可能性がある。
    その結果、今日の「若い世代」が、将来の人口の大半を占めることになる。

    子供を持たないこと、物を減らすこと、移動力を高めておくこと - これらが、少しでも貯蓄を増やそうと躍起になる若者が心がけていることだ。
    アウトソーシングとオートメーション化は、アメリカの工場労働者を離散させ、アジアの労働者にとって恩恵となったのが、今度打撃を被るのは彼らだろう。

    「現在の雇用創出の原動力となっている要因の多くは、今日の若い世代が労働市場に入る前に消え去っているだろう。彼らが5G通信ネットワークの整備や太陽電池パネルの設置に携わりたいといくら熱望しても、その頃にはすでに作業が完了しているだろう」

    今日の世界的規模の移住の最大の皮肉は、最も深刻な労働力不足を抱えている国ほど、敵対的な反移民政策を打ち出してきたことだ。
    アメリカは、新たな移民の受け入れが5年連続で100万人を超えた後、2019年の新規移民数は突如としてわずか20万人に落ち込んだ。
    今のアメリカが受け入れている移民の数は、現在の労働人口の後を継ぐには不十分で、毎年50万人ずつ受け入れたとしても、2030年のGDPは2020年よりも1兆ドル減少すると言われている。

    いま、世界中の大学で留学生の獲得競争に成功しているのは、カナダだろう。
    なぜなら卒業後も、同国の企業就職への道が開かれているからで、これまで勝者だったアメリカへの留学を希望する学生はますます少なくなっている。

    カナダは、自国のアイデンティティを多文化主義に置き、移民の受け入れに全くためらいを見せない。
    凍土が溶けつつある未開拓の地を耕す作業員や、高齢化した人口には介護士が必要だし、広大な土地の輸送網づくりにもまだまだ人手がいる。
    こうしたこと全てには、自国民だけでは足りないし、ITなど新たな産業の再活性化にも広く人材を求めたい。
    カナダにとって、移民政策はすなわち経済政策なのだ。

    ヨーロッパを旅して回ると、あらゆる土地土地で、多国籍コミュニティが活気づいていることがわかる。
    最も単一民族社会的だと思われていたノルウェーでさえ、タクシー運転手の3人に2人は南アジア系で、インド系の著者は、まさかオスロでヒンドゥー語が通じるとは思わず驚いている。
    イタリアから輸出されるパルメザンチーズの6割は、インドから移住してきたシーク教徒が作っている。
    ドイツでもフランスでも、ワールドカップで優勝に導いたチームのメンバーの大半は移民出身だ。

    ヨーロッパの地方都市の中には、過疎化対策として、移民を呼び寄せ、無料で家を与えているところもあるし、中には村ごと買ってくれと売りに出ているところもあるほどだ。

    もちろん、移民が増えるに連れ、各地で反対運動は増えている。
    いまやバルセロナは世界のスリの中心地となり、イギリスの外国人絡みの犯罪は急増している。
    空き家になった場所はすぐに不法占拠され、ボローニャの街では、ナイジェリア人マフィアに雇われた子どもたちが、亡くなった高齢者の家がないか見張りとして立っている有様だ。

    しかし、どれだけ反感が生まれようと、移住という動きはもう止められない。
    彼らなしには国のインフラは維持できないし、経済を牽引し活性化するのもまた彼らなのだ。
    その意味で、ヨーロッパにはもはや移民問題は存在しない。
    あるのは同化問題で、賢明な国の指導者はそれに気づき、うまく文化的に同化できないか必死に取り組んでいる。
    社会経済政策的に解決が可能なのは、同化への取り組みか、人口減少かと言ったら、間違いなく前者であり、それ以外の答えはない。

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