死の影の谷間 (海外ミステリーBOX)

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  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784566024236

作品紹介・あらすじ

放射能汚染をまぬかれた谷間で、たったひとり生き残ったアン。そこにやってきた見知らぬ男の正体は?-少女の目を通して、核戦争後の恐怖を描く傑作ミステリー。待望の改訳新版!1976年エドガー・アラン・ポー賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 図書館でお借りしました。

    舞台は核戦争後の世界、山間の谷間の村でたった1人生き残った少女アンと防護服を着て現れた科学者ルーミスの物語。

    そうです、主要登場人物はたった2人。
    故にとにかく読みやすく、わかりやすい。

    防護服を来て旅をしてきたルーミスは放射能に汚染されていない村に辿り着く。
    防護服を脱ぎ、久しぶりにクリークで水浴びをするもその水は汚染されていました。

    300レントゲンという放射能を浴びたルーミスは徐々に体調が悪化、そんなルーミスを家に入れ看病をするアン。

    一時は死の淵を彷徨うも奇跡的に快復に向かうルーミスとそれを献身的に支えるアン。

    そんな中、アンはルーミスと生きていく未来さえ想像し始めます。
    乙女だね~。

    しかし、このルーミスがとにかく自分勝手というか、なんともクソなんですよねー。

    体調が悪いとはいえ、あれやこれやと指示を出し、アンを支配し始めるルーミスはついにアンをレイプしようとします。

    何とかアンは森へ逃げるも、生きて行く為には食料が必要で、その為には家に戻り、家畜の世話をし、畑の手入れをする必要があります。

    ルーミスに対する恐怖と生きる為の葛藤。
    10代の少女の揺れ動く心理を彼女の日記を通じて読者は体験することが出来ます。


    <あらすじ>
    核戦争で荒廃した世界で、放射能汚染を免れた小さな谷で暮らす少女アンと、彼女に助けられた男性ルーミスの物語です。ふたりは共同生活を始め、次第に惹かれあっていきますが、ルーミスの態度が次第に冷酷で支配的になり、アンは彼に恐怖を感じるようになります。ルーミスはアンを管理するようになり、彼女の意思を無視してセックスを強要しようとします。アンは銃を持って逃げ出し、森の中で隠れることにします。ルーミスはアンを探し回り、アンは銃で反撃します。アンは自ら生きる為にも、彼を見捨てることができず、彼に食料を与えてやります。ルーミスにより徐々に追い詰められるアンはルーミスを置いて、西へと旅立ちます。

    人間の愛と信仰、嫉妬と猜疑、生きる意味と希望を描いた感動的なドラマです。主人公のアンは、たくましくて賢くて優しい少女で、読者の共感を呼びます。ルーミスは、科学者としての知識とプライドを持ちながらも、自分の欲望と理屈でアンを支配しようとする男で、モラハラの典型とも言えます。ふたりの関係は、最初はのどかで平和だったのに、次第に不穏で緊迫したものに変わっていきます。核戦争後の世界というディストピアな舞台設定も、ふたりの心理状況をより強調しています。

    本の概要

    内容(「BOOK」データベースより)

    放射能汚染をまぬかれた谷間で、たったひとり生き残ったアン。そこにやってきた見知らぬ男の正体は?―少女の目を通して、核戦争後の恐怖を描く傑作ミステリー。待望の改訳新版!1976年エドガー・アラン・ポー賞受賞作。

    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

    オブライエン,ロバート・C.
    1918年、ニューヨーク州ブルックリン生まれの作家。本名ロバート・レズリー・コンリー。1973年に55歳の若さで亡くなる。邦訳作品に『死の影の谷間』(1976年エドガー・アラン・ポー賞受賞・評論社)のほか、『フリスビーおばさんとニムの家ねずみ』(ニューベリー賞受賞・冨山房)がある

    越智/道雄
    翻訳家。明治大学名誉教授。1936年愛媛県今治市生まれ。広島大学文学部英文科でジョイスを研究、同大学大学院文学研究科博士課程でディケンズ、サッカリー、フォークナーを研究。1983年『かわいそうな私の国』(サイマル出版)で日本翻訳家協会出版文化賞、1987年『遠い日の歌が聞こえる』(冨山房)で産経児童文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 登場人物も舞台の広さも最小限なのに、面白さが最大限。
    こんな状況、しかもまだ10代だというのに、主人公がとてつもなく実直で、応援したくなる。

    世界に自分1人が生き残るのと、嫌なヤツと2人きりになるのと、どっちがいいかといえば、私は前者です。

  • 世界の終末での日常と異常。
    面白かった。
    余談だけど装丁の「海外ミステリーBOX」のロゴマーク、場所を移動することはできなかったんだろうか。わざとなのかな

  • 核戦争の後。放射能の影響を受けない谷に暮らす生き残った少女。1970年代の作品だが、現在においても得るべき教訓のある本だと思う。高学年~YA向けの書籍ではあるが、大人にも。

  • 読了。アマゾンプライムで見つけた映画の原作。映画は原作を見てから見ようと思ったので、まだ見終わっていない。でも映画と違うようだ。

    感動がなかったので星は四つだが、とても面白いディストピアものだった。少年少女向けの本らしい。(高校生まで向けか。)それゆえに過激な性描写や人殺しの表現が皆無で良かった。ハンガーゲームもこのジャンルの本なので、少年少女向けは私にとって(今年50のおっさんにとって)実に良いジャンルかも。

    話は世界最終戦争で人類が滅亡したあと。少女が住む谷は、気象の関係で放射能をまったく受けなかった。家族はほかの街を探索にいき、(おそらく)死亡し、かえってこなかった。そんななか、ある男性が放射能防護服を着てこの街にたどり着く。少女は世界に自分ひとりと思っていたところでこの男性の到着だったので、大いに喜び、内心乙女チックな想像もしたりする。しかし猜疑心の強いこの男性は、少女を支配しようとする。そして少女はこの狭い谷のなかで生き延びようとするが・・・。というお話。少女の日記のかたちで話は進む。

    ほとんどこのふたりしか出て来なかったが、世界の終わりを回想したり、外の世界を想像したりするところが、ディストピア的でぞくぞくした。またこの少女の故郷の谷が、ほかとはまったく違った放射能フリーの世界、楽園のような世界なので、少女の空想もアダムとエバの世界のように思えて少女に感情移入できた。

    タイトルは詩篇よりだが、原タイトルはZ for Zachariah。「ザカリアのZ」。訳者後書きにはバプテスマのヨハネの父のザカリアとしているが、預言者のザカリアであったろうと思う。バプテスマのヨハネの父はストーリーと絡まないのでそうおもったが、ザカリア書のザカリアはストーリー的に合うのかと言えば、そうでもない。
    著者はアイリッシュでカトリックの背景がある。それゆえ聖書の知識も曖昧である可能性があり、それゆえのタイトルかも知れない。内容には聖書の辛みがほとんどない。少女は信仰があるようだが、著者の信仰以上には描けなかったのか、まったく信仰的には見えず、聖書も祈りも、ほとんど知らない。(きっと著者と同じなのだろう。)

    その天はキリスト者的にはマイナスであるが、たいしたことではない。他の小説は大いにマイナスなので、むしろ信仰のある少女の生活が読めてGOOD。

    最後のほうでは少女がどんどん追い詰められる。狭い谷のなかでの逃避行だが、ぐんぐん引きつけられて読むのがやめられなかった。

  • クリス・パイン大好きなので出演映画の原作であるところのこちらを購入。試写会に行ったあと、直前に買ってあったこちらを読み始めたんだけど、読むの止まらなくてあっという間に読了してしまった…。
    これほんとに児童書?って思うくらい辛くて怖い話だった…。
    しかも40年以上前の作品なのにまったく古さを感じさせない。それだけ人間は進歩してないってことかと暗澹たる気持ちにもなる。
    昨日試写会の後に解説してくれた松崎さん(だったかしら?)が、「原作者はこの作品を完成させる前に亡くなられたので奥さんと娘さんが完結させた。ネタバレになっちゃうからあんまり言えないけど、それを踏まえて読むと興味深い」的なことを仰っていたんだけど、ほんと興味深い…。
    これどこまでが原作者の方が書かれてた所なのかな…。14章より先までは書いてたのかな…。
    児童書だけど、これ小学生の時に読んでたらトラウマになるわ…。
    読んでよかったとは思うけど心が重いです。

  • 映画「死の谷間」オフィシャルサイト
    http://www.hark3.com/shinotanima/

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    放射能汚染をまぬかれた谷間で、たったひとり生き残ったアン。そこにやってきた見知らぬ男。少女の目を通して、核戦争後の恐怖を描く。●エドガー・アラン・ポー賞受賞
    http://www.hyoronsha.co.jp/whatsnew/detail.php?detailID=1122

  • 図書館で何回も借りて読んでたけど、買いました。とても、とても考えさせられる内容です。アンはナウシカみたい。ワタシにはそー思えます。

  • 決してすっきりする読後感ではない。
    読み進める内に色んなものが次々と怖くなる作品だった。

  • 核戦争後、放射能汚染を逃れた谷間。主人公のアンはたった一人生き残った15歳の少女。畑を耕し、家畜の世話をして何とか冬を乗り越えたある日、遠くから見知らぬ男がやってくる。彼は敵か味方か…この本が震災の一年前に改訳されたこと、今手にとって読んだことに不思議な縁を感じます。(原書は1974年!)これは物語の世界だと思いながらも、防護服、ガイガーカウンター、ガンマ…など今や聞きなれた用語が出てきて、時々ふと現実と重なる部分がありました。アンのもとにやってきた男がどんな行動をとり、アンの生活、未来はどう変化していくのか。物語はアンが書いた日記によって明らかになっていきます。放射能も怖いけれど一番怖いのは極限状態に追いやられた人間の行動。ひたひたと迫る恐怖にドキドキしながらアンの行く末が気になり一息に読みました。若いのに我慢強く、逞しく、賢く、勇気ある少女アンを応援する気持ちでした。

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