- Amazon.co.jp ・本 (404ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569575865
作品紹介・あらすじ
八世紀中頃の黄金発見に端を発する奥州動乱と、中央政界の血腥い権力抗争を描く大河ロマン。本篇は全三部構成の第一部であり、奈良朝を震撼させた「橘奈良麻呂の乱」を中心に描く。▼蝦夷の若者・丸子嶋足は、黄金を土産に帰京する陸奥守・百済敬福の従者となり、平城京に上る。朝廷の野心から陸奥国を守るための上京であり、敬福の後押しもあって兵衛府に仕えることになった。やがて、八年の歳月が過ぎ、番長に出世していた嶋足のもとに、同じ蝦夷の若者・物部天鈴が現れる。天鈴は嶋足を衛士府の少尉・坂上苅田麻呂(田村麻呂の父)と引き合わせ、苅田麻呂に採り立てられるよう仕向けた。一方、中央政界は、橘諸兄の死後、その子・奈良麻呂と藤原仲麻呂との対立が激化。奈良麻呂派による仲麻呂打倒の策謀が進行する中、嶋足はそれを未然に防ぐべく、渦中に身を投じていくのであった……。▼奥州動乱前夜の若き蝦夷たちの躍動と葛藤を、壮大なスケールで描く。
感想・レビュー・書評
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人間って汚い。自分もそうだけど、どこまで人間て汚いのかと嫌になった。
なんのために?が重要。
嶋足はいいやつだけど、流されやすいし染まりやすい。すごいわかる。
天鈴が、一体何者なのか。キレすぎ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
全5巻にもかかわらず、1巻だけでも充分に見せ所が用意されており満足感が高いです。現代にも通じるような感情の機微、揺れが丁寧に描かれているところがお気に入り。
それぞれの策略が蠢く中、誰を信じるのか。それが生死や一族の盛衰にまで関わることがこの時代の恐ろしさ。2巻もすぐに手にとって読みたくなる臨場感です。
登場人物が多いせいか前半少し読み進みにくいですが、後半には慣れてしまいます。 -
へたれ嶋足なかなか。しかし最後は全成に私の心は持っていかれたようです…ww
鮮麻呂と多麻呂の今後が楽しみで仕方がありません\(^o^)/ -
陸奥の黄金を握り陰から歴史をあやつる物部氏、というトンデモ設定。だが面白い。天鈴サイコー。
『火怨』や『炎立つ』と違って陸奥での活躍はほとんどなく、都での政争に首をつっこんでいく話がメインです。 -
人種問題は昔からあったかも。
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蝦夷と朝廷との何世紀にもわたる民族対立を描く。
朝廷からの侵略を防ごうと、丸子嶋足や物部天鈴、伊治鮮麻呂らが、朝廷の中で暗躍する。
橘奈良麻呂の変など、権力闘争での葛藤を蝦夷を絡めて展開していくのが面白い。 -
高橋先生特異の東北蝦夷のお話
昔、藤原の郷に遊びに行ったことある
さて、話は大好きな奈良時代
奈良麻呂の乱に至るリアルな戦い
続日本紀に書かれているのと同じ展開
(当たり前だったな)
主人公は何に拘って大望を失うやら -
「炎立つ」にすっかり魅せられたので時代を遡って本シリーズに突入。
第1巻はひたすら朝廷の政争に終始していますが、文明が未成熟なせいか、やり方がいちいちえげつない。但し蝦夷や物部氏を中心に個性溢れる魅力的な人物が続々登場しており、嫌気を覚えることなく先の展開を楽しみに読み進めることができました。
既にこの時代から日本の政治家は政より権力争いに執心していたとは。ちょうど読んでいる最中に希望の党が結成された現代との類似性が、何とも情けなくて可笑しいです。
名前が似ていて区別がつかなくなるという恐ろしい噂の「麻呂麻呂地獄」も、巻頭の人物紹介欄の助けを借りながら何とかクリアできそうかな。 -
8世紀中頃の黄金発見に端を発する奥州動乱と中央政権の血生臭い権力抗争を描く大河ロマン第1弾。
これまで奈良時代を舞台にした作品を読んだことがなかったので、人物等もなじみがなかったのですが、主人公の丸子嶋足をはじめ、権力に固執する藤原一族など、一人一人が生き生きと描かれ、あっという間に奈良時代の歴史舞台に入り込んでしまいました。
武士ではなく貴族の時代にあれほどまでの権力闘争が繰り広げられていたことに、正直衝撃を受けました。
陸奥の平和を目指して、躍動と葛藤を重ねていく若き蝦夷たちのこれからに期待が高まりました。
この1巻でも十分一つの作品として読むことができますが、やはり蝦夷たちの生きざまを見届けたいと思わずにはいられず、すぐに2巻に進んでしまいました。
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なんというか、非常に作者らしい物語だった。
奈良時代の歴史的出来事を蝦夷の側から描く歴史小説。
東北を舞台とした歴史小説を数多く描いている作者のいわば十八番の舞台だ。
作者にはこれより先に『火怨』という蝦夷の英雄アテルイを描いた作品があるのだけど、今回はその一世代前の時代。
作中には火怨で登場した人物たちの若き姿があって、ちょっと懐かしい。
奈良時代中期以降、政治的には橘奈良麻呂の変、恵美押勝の乱、道鏡皇位事件と波乱が続いて、小説の舞台装置としてはかなり面白い。
その中で蝦夷との関係がどう描かれるか、作者の腕の見せ所だろう。
シリーズ1冊目の本作では、橘奈良麻呂の変が舞台になっている。
ただ本巻では、事件の周辺での探り合いが主で、あまり派手な展開もなく、主人公の嶋足の活躍もあまりなく、正直なところちょっともの足らなかった。
まあ、そこは歴史的事実との関係で仕方ないのかもしれないけれど。
もうすこし、陰から事態を動かしたり敵を出し抜いたりするような、爽快感が欲しいところ。
次巻に期待したい。