バウンダーズ: この世で最も邪悪なゲーム

  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569636245

感想・レビュー・書評

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  •  普通の子供だったジェイミーは、公園の建物の中で不審な行為に熱中する男たちを目撃し、彼らの手により見たこともない世界へ飛ばされてしまう。
     わけもわからず“ゲーム”の外に弾き出され、不老不死となり様々な世界をさ迷うことになったジェイミーは、自分のいた世界へ帰るためにさ迷い続ける……。


     図書館本。
     うわ、しょっぱなからキツイわ~。トレーディングカードゲーム(TCG)を知らずに「遊戯王」を途中から見てしまったような感じ。
     そして、翻訳調の良くない面が文体に出てしまっている。具体的な話をしているはずなのに、変に観念的・抽象的に見えてしまい、内容が頭に入ってこない。

     主人公と同じ立場を味わってもらおうというのか、何がなんだかわからないうちに違う世界に場面転換、新しい世界の説明はおざなりでまた別の世界へ……この繰り返しが中盤まで続く。感情移入などする暇はないし、異世界を楽しむこともできない。
     主人公と主役級の2人の性格もあまり良いとは言えず、応援する気が起こらない。
     そして、主人公が死ぬことはないというのが早い段階で明らかにされているため、事件が起きてもハラハラもドキドキもしない。クライマックスも主人公の一人称語りのため、盛り上がりもイマイチ……。
     読書というより、主人公の長~い一人語りをひたすら聞かされるだけである。

     作中のゲーム関係の用語も直訳ルールブックから持ってきたような感じで、ゲーム、それもTCGか、ボードゲーム系ウォーシミュレーション(それもかなり古いタイプ)あたりを知らない人には、用語が意味不明ではないだろうか。
     遊戯王やポケモン等のTCGをやっている子ならついていけそうだが、小・中学生がみんなTCGやってるわけでもないし。ゲーム用語の解説を独自に付けても良かったのでは。

    ※よく見たら1981年に書かれた作品だそうで。ゲームの形式の古さに納得。


    「魔法使いハウルと火の悪魔」は結構読みやすかったが、そのつもりで本書に臨むとえらい目にあう……んじゃないかな。
     もう少し読みやすくするための改訳も希望~。

  • 面白くて一気に読んでしまいました。
    けど、ラストがハッピーエンドと言えるか微妙で、苦さの残る終わり方でした。
    主人公に幸あれ、、、

  • 再読。

    昔、読んだ時は、主人公は永遠に故郷に帰れずさすらい続けるバッドエンドだと思っていたが、今読むと、そこまで絶望感は無かった。
    カニバリズムは覚えてたのにな。

    元ネタがわかって楽しい。これプロメテウスじゃん、とか、TRPGやってるんだな、とか、結局イギリスか~とか。核戦争後の世界を渡るのすごい。本能で恐怖を感じさせる演出が良い。

    奴隷のところも良かった。ドタバタの一部だけど、本心もあったから余計に手酷く痛め付けたというのを見抜かれているのが面白い。鋭いなあ。
    家族だからこそ本気で憎むし冗談で売ろうとする。
    人を金で買った者は、また人を金で買う誘惑に駆られる。
    主人を褒めていたのは、こんなに恵まれてるんだから満足しなきゃ、ましだよね、ラッキーだよねっていう思い込もうとしていることの裏返し。
    すげ~。

    最終的には、ファンタジーを成立させるために主人公が自己犠牲を払ってるってことなんだろうな。モモみたいな話だな。

  • 何年かぶりに再読。やっぱり面白い

  • ある日ジェイミーはゲームをする「あいつら」に捕らえられゲームの世界に飛ばされてしまう。ある一定時間に次の世界に飛ばされ、ジェイミーは多種多様な世界を渡り歩く「故郷に向かう者(バウンダーズ)」となる。同じくバウンダーズの仲間を得たジェイミーは「あいつら」に反撃することになる。
    ゲームのルールを呑み込むのに時間が掛かり、当初読みながらあたふたとしました。主人公ジェイミーの方がすんなり状況を呑み込んで運命を受け容れていくので置いてけぼりを食う感じがしたのです。その感覚はラストまで続くのですが、ラストのジェイミーの決心に至りこの気持ちこそ主題にまつわるものだったのかもと思わされました。ジェイミーの達観しつつもの叫びが胸を打ちます。

  • ゲームで捨てられたバウンダーズは、故郷に帰れるのか??

    【紙の本】金城学院大学図書館の検索はこちら↓
    https://opc.kinjo-u.ac.jp/

  • ジョーンズ作品は何冊か好きで読んでいるのだが、今回は私の期待するものとは全く違うものだった。
    なんと言ったらいいのか、非常に複雑な気持ちなので短絡的に切なく悲しいと感じたということを書いておきたい。考えるとますます沈む。
    話の面白さ、展開、からくりには流石としか言いようがなく非常に面白かった。

  • 最後が本当にせつない。
    こんな終わり方はジョーンズらしくない。
    けど、きらいじゃない。
    時間は取り返しがつかない宝物なんだな。

  •  
    バウンダーズ 〜この世で最も邪悪なゲーム〜

    ストーリー :☆☆☆☆
    世界観   :☆☆☆☆☆
    ビジュアル :☆☆☆
    キャラクター:☆☆☆☆
    読みやすさ :☆☆☆
    オススメ度 :機会があればぜひ読んでみるべし!


    まいったッ!!と言わざるをえません。
    「ハウルの動く城」で有名なダイアナ・ウィン・ジョーンズさんは、
    複数の世界(※3つ以上)をまたぐ話を書かせたら右に出る者はいないと思うのですが
    今作にも例に及ばず、してやられたなという感じです。

    ファンタジー(ハイファンタジー)の基本は、
    主人公がある日、何らかの境界を飛び越えて「あっちの世界」に行き
    そこでいろいろな経験を積んで「こっちの世界」に戻ってくるというものなので、
    物語の中で2つの世界が出てくるのは特に珍しくないのですが、
    ダイアナ・ウィン・ジョーンズの作品は2つではおさまりません。
    「大魔法使いクレストマンシー」シリーズでは7つ、
    そして今作はなんと100以上の世界が存在する「世界」です。

    物語は、主人公の少年、ジェイミーの1人称で語られます。
    自動筆記してくれる機械のマイクに向かって、今までの経験を語っているという設定。
    ひょんなことから、謎の男たちが謎のゲームをしている現場を見てしまい、
    「ランダム要素」として隣接する100以上の世界を旅する(一定時間経つと強制的に移動させられる)ことに
    なったジェイミーは、なんとかもとの「故郷」に戻ろうと奮闘します。
    そのうちに、自分の他にも「故郷に向かう者(バウンダーズ)」がいることを知り、
    仲間とともに「故郷」を目指しますが・・・。

    100以上の世界って!!
    そんなに大風呂敷広げて大丈夫なのかと心配しながら読み進めましたが、そこはダイアナさん、鮮やかにまとめてくれました。



    以下ネタバレ注意!ラストの本文引用もあるので気をつけて!

    この話で特徴的なのは、普通ならハッピーエンドへの道標や強力な力になる「希望」が、
    主人公たちの枷となっていること。(主人公たちはそれを知らされていませんが)
    「希望」を持ち続ける限り、永遠にパラレルワールドを彷徨わなくてはいけない、なんて
    まったくすごいルールです。皮肉すぎる。
    副題の「この世で最も邪悪なゲーム」というのはそういうことか、と読み終わってから分かりますね。

    クライマックス…ジェイミーと仲間たちは、世界をボードゲームにし、自分たちをコマにして遊んでいる
    〈あいつら〉に戦いを挑むのですが、
    あっさりかわされてバラバラに違う世界に飛ばされてしまいます。
    飛ばされたジェイミーは、そこが故郷の数百年後の世界だと気づきます。
    世界を巡り巡っているうちにとてつもない時間が流れ、
    帰りたい「故郷」は永遠に失われてしまったことに、ジェイミーは気づくのでした。

    〈あいつら〉を倒す術を知っている、鎖で繋がれた心優しい大男(プロメテウス)を解放する条件が、
    「希望を持たぬ者」だったため、深い深い絶望から一転、ジェイミーと彼は共に立ち上がります。
    〈あいつら〉と戦うため、数百の世界をもう一度まわり、
    散らばっているたくさんのバウンダーズを引き連れ、最後の衝突。

    戦いの後、みんな自分の来た世界へ帰るのですが、
    ジェイミーだけはこれからも世界を点々とする「バウンダーズ」であり続けることを選びます。
    行われていたゲームのしくみと世界観を説明しないと分かりにくいのですが、
    再び〈あいつら〉が世界をオモチャにしないよう守る番人になるため、という感じです。
    仲間はみな「自分の世界においでよ!」と誘うのですが、
    ジェイミーは笑って「必ず訪ねて行くよ」とだけ言うのでした。

    そして1人その場に残り、〈あいつら〉の持っていた機械のマイクに向けて語る最後の最後は、
    読者へのメッセージ。本当にグッときたので引用しときます。


    —もしみなさんがこの話を読んでも、本当のことだと思わないのであれば、なおさら好都合だ。
     〈あいつら〉に対する防衛手段がもう一つ増えることになるのだから。
     でも、こうしているとどんなに孤独になるかは、きっと誰にもわかってはもらえないだろう……


    このラスト1行で全体がギューーッ!!と締まります。
    また最初っから読んでみるとさらに切ない。
    最後のほうはちょっと走り過ぎじゃないか。説明足らなくないかと感じる部分もありますが、
    このまとまりっぷりで全て許せます(笑)
    世界観をいろいろ考察するのもいいかも。私もまだ考え中です。

  • イギリスで生まれた少年ジェイミーは、弟と妹と暮らす普通の少年だった。「古い要塞」と呼ばれる場所で、不可解なゲームをする“あいつら”に捕らえられ、ゲームの世界に放り投げられてしまうまでは…。鉱山の世界、大神殿の世界、戦場の世界、けだものたちの世界など、ひとつの世界から次の世界へとさまようジェイミーの旅がはじまった。この邪悪なゲームのルールは何か?もとの世界に、自分の家に帰ることはできるのか?ゲームに翻弄されつつも、彼は故郷を失った奇妙な生命体ヘレンと、悪魔ハンター・ヨリスに出会い、同盟を結ぶ。この「バウンダーズ」は、必死でチャンスをつかみ、帰途を見いだす反撃の計画を立てるのだった。

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著者プロフィール

ダイアナ・ウィン・ジョーンズ(Diana Wynne Jones)
1934年8月16日 - 2011年3月26日
イギリスのファンタジー作家で、子ども向けの独創的なファンタジー小説を記す。代表作に『ハウルの動く城』『大魔法使いクレストマンシー』のシリーズがある。
2004年に『魔法使いハウルと火の悪魔』が宮崎駿監督・スタジオジブリ作品「ハウルの動く城」として映画化され、日本でも広く知られるに至る。

ダイアナ・ウィンジョーンズの作品

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