- Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569665603
感想・レビュー・書評
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現在を「なんでこーうなったの?」とか「誰がこんな世の中にした」的な視点で歴史に答えを求めていく、なんか他に読んだことがなかったその視点がおもしろいなぁ~と思った本。
でも私、前後編に分かれてた時代の本の方で読んだので、半分しか読んでません……(-_-;)
とにかくへぇ~、なるほど~だった本。
同じ部屋に神棚と仏壇が並んでてもなんら矛盾を感じない日本人、それは聖徳太子のおかげ!?とか。
それに何が一番なるほどって織田信長の回の戦国時代の基本徴兵システム。
兵士にとって何が一番怖いかって、〝村八分〟だったんでしょうねぇ~。当時の日本人には。
道行く人ほとんど知り合いみたいな田舎に住んでると実感としてよくわかる。
戦場でもほら、そこは知り合い同士だから〝働きぶり〟が見えるわけで、村に帰ってきてもほら、知り合い同士だからずっと顔つき合わして"日常"を送らなきゃいけないわけだし。そりゃ頑張らざるをえないよな~って。うちのあたりじゃ1年に1回のお祭りに参加できなかった青年は、その年々罰金払わなきゃいけないもんな~、今でも。しかもかなりケッコウな額。払わなくても法律で罰せられたり警察に捕まったりするわけじゃないのに払うもんな~。こんな感じだったんだろうな~、戦国時代も。当時はもっと村が社会のすべてだったろうし。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
光源氏という人選には驚きますが、選ばれし12人の男たちがそれぞれ日本人に多大な影響を与えていることが分かります。
古人のやったことを現代的な感覚で置き換えてくれるのが分かりやすいです。 -
〈聖徳太子〉
新道・仏教・儒教のええとこどりをした習合思想を考え出した世界で唯一の思想家。明治時代の西洋文明の流入期、戦後復興期の表面的な民主化にもええとこどりの発想が見られる。現在の日本社会における職縁社会が出来上がっているのは、職場にかわる結束体としての宗教集団がないからで、ええとこどりの習合思想が働いている。つまり大切なのは宗教集団ではなく、自分の属している人間関係であるのは、聖徳太子の習合思想に根源がある。
〈光源氏〉
日本社会では、それぞれ本来の仕事で有能な人間よりも、人間関係の面倒見のいい世話好きや他人の嫌うことを言わない社交上手、つまり光源氏型の人間が周囲に押し上げられ高位につく。動乱期は強力な指導者が必要だが、世の中が安定するとリーダーシップ拒否現象から集団主義的意思決定構造が生まれ、意思決定をしない無能だが上品な人が高位につく。
日本でいう上品な人は、美意識と詩歌の世界に埋没し、他人を不快にしない社交術を心得ている。ヨーロッパでいう貴族とは戦士の末裔や領主で、ノーブルの必須条件は、克己心と用心深さ。中国での上品の必須条件は、知恵と知識である。
ただしジェントルとは庶民的上品さで、マイルドであまり感情を表さない、何を言われても冷静に受け答えし、それでいて他人の意見になびかない、いわゆる中庸を心得た人で、すなわち必須条件は常識と中庸、そして自分の意志を貫き通す強さである。
〈源頼朝〉
源頼朝が伝統的な保守旧勢力との決定的な対立を避け、実質的な二重権力構造を創ったこと、また武家政治を最初に作り、行政権を宗教権から完全に分離したことは、大きな改革と言える。今日に至って大臣よりも事務次官が権力を握る構造が不思議でないルーツを垣間見ることができる。
〈織田信長〉
自分の意のままに動かせる速度と持久力を備えた軍隊の構築に見られる、空間的発想ではなく時間的発想をもとにした戦略戦術の考案。
桶狭間の戦いは例外中の例外、寡兵良く大軍を破ったのがわずか二回に見られる、成功体験を繰り返さない理性。
信長の兵隊は流浪者を銭で雇った弱小兵だか、いつでも戦える利点を活かし、執拗な戦争や兵糧責めといった常識破りの戦術で勝利。戦略でも経営でも、最初に新手法を考えついた人は常識破りだからある意味で卑怯または下品であるが、そこにこそ独創性がある。信長は一度や二度の失敗にへこたれず、最初から失敗と非難を想定して執拗な粘りで相手を閉口させた。
経済面でも楽市楽座により規制緩和を行い、一時的に税収を減らすも自由化して経済を発展させ自分の実入りを増やす政策は、後の米国のレーガノミクスに通ずるものがある。
また古代の律令制が目指したような中央集権制で全国を一律に治める天下布武の思想を強烈に打ち出した功績は、今日がもつ中央集権意識を根付かせたルーツと言える。
〈石田三成〉
人間の行動動機は①性善的なる愛情で動く②下劣な利益で動く③弱さ故に恐怖に追い立てられ動く。この三つの内強い順番は③②①である。そこで石田三成は第一に秀吉のためという大義名分を立て、第二に宇喜多秀家を金銭的スポンサーとして冠にしてみせ、第三に実務者ネットワークで有力大名を乗せ、第四に毛利輝元を象徴として総大将に祭り上げ、関ヶ原の合戦の仕掛けを作った。失敗の要因は、男は正々堂々檜舞台で戦いたいという美意識が、ゲリラ戦術を許さず天下分け目ね合戦シナリオを描いたこと、資金不足、人材不足から中心で主導できなかったことにあり、名作愚演に終わった。ただ偉くない人が企画した事業が実現する日本型プロジェクトメーキングの手法を開発した功績は大きい。
〈徳川家康〉
〈石田梅岩〉
清貧を善とする思想は世界中にあるが、同時に生産活動に勤勉に携わることを説いた思想家は少ない。勤勉に働けば人格修行になるという、勤勉・倹約・知足按分の思想は、日本人が、生産性や経済性を度外視してでも勤勉に働くのは非常に良いことだ、人格が立派であれば生産活動に勤勉に携わるはずだ、丁寧な作りでない商品を製造しているのは人格下劣な奴だ、という考え方に繋がっている。それが日本独特の細部にこだわる美意識や僅かでも付加価値をあげようとする商慣習となった。
この石門心学の影響を受けた日本的資本主義の精神は、人余りモノ不足の社会で生まれた思想で、古き良き日本的伝統を生み出した利点もあるが、国際基準から離れた慣習を生む危険性がある。また石門心学は倹約の美徳を強調し、清貧に甘んじること・贅沢は敵だという発想が生まれた。
〈大久保利通〉
現在の日本には、官僚自身に日本を主導しなければならないという責任感とエリート意識があり、国民にも役人頼りの官僚依存意識がある。大久保利通はドイツから官僚制度を取り入れ、日本の官僚制度の基礎を築き、明治時代の産業発展に大いに寄与した。その反面、現在の日本が抱える問題である、規制の強さや内外格差に象徴される物価高、選択の自由のなさにも繋がっている。
〈渋沢栄一〉
日本の資本主義の先駆者、日本独特の財界の形成に寄与した。それは会社はみんなが資本金を出しあって創設し雇われ経営者が会社を運営する合本主義、すなわち商工会議所(財界)の提唱で資産家や商人に資金を出させ事業を興すべきだとする日本的協調主義が背景にあり、同族で会社を創り、そこであげた収益は株主(個人)に還元するという財閥形態とは異なるものだった。
それゆえ、経営者は事業を伸ばしカネを儲け新規事業を推進することが人生の目標で、それこそ真の社会貢献に繋がるとする原始的な資本主義の発想とは異なり、業界内の調整にあたり業界団体のまとめ役、政府の御意見番になることが経営者の理想とされた。
ただその欠点としてコスト高や内外格差の拡大、官民協調主義による規制や自由競争の弊害は現在も存在している。 -
堺屋さんの本は好きです。
この本は、日本人の考え方の原点が分かりやすく解説されていて面白かったです。
歴史の好きな人やアイデンティティ、日本人論に興味がある人にオススメ。
(芳崎) -
日本人のルーツはここにあったのか、と気づかされた本。自分のアイデンティティを知りたいならば、まず歴史を学べよ、と教えられた気がした。
元官僚である作者らしく、「国づくり」がポイントに置かれているように思った。織田信長の「楽市楽座」といい、徳川時代の首都機能「江戸」構築といい、画期的な仕組みだったのだなあと改めて感じた。 -
彼ら12人が著者によって選ばれた理由には納得がいくようないかないような・・・。聖徳太子などは歴史的事実も疑わしい部分があるし、理論的に述べられると確かに納得できる内容ではあるのだが・・・。松下幸之助がやはり一番興味深く、面白かった。
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日本の独自性はいつ、誰によって、いかにして創り上げられたのかという切り口で、聖徳太子、織田信長、マッカーサー、渋沢栄一、松下幸之助…といった歴史上の12人を取り上げている本です。現在の日本と日本人にどのような影響を与えているかという視点が非常に面白く、所謂教科書に載っている歴史的事件・事実だけではない部分が興味深く書かれていて、“この人がこういう考えだったから今の日本はこうなんだ…”とか、逆もしかりで、いろいろ想像力がかきたてられます。いい影響、悪い影響の両面で書かれているのも面白いです。
なぜ日本人は葬式は仏寺で行い、盆踊りや初詣に行きながら、クリスマスや教会式をあげるのか。そういった日本人独特の宗教観を決定づけたのは聖徳太子である…。歴史の重要人物と今の私たち日本人の接点が見いだせる歴史論評本。 -
本書で取り上げる12人は以下の通り。
聖徳太子/光源氏/源頼朝/織田信長/石田三成/徳川家康/石田梅岩/大久保利通/渋沢栄一/マッカーサー/池田勇人/松下幸之助
中には架空の人(光源氏)や外国人なども混ざっていますが、
日本人の性格や文化や社会の特徴と言われるものが作り上げられていく過程で重要な役割を担っていた人たちばかりです。
日本人は細かいことにうるさいとか、笑ってばかりとか、無宗教とかいろんなことが指摘されますが、それの所以を知っている人はとても少ないと思います。その意味で、知的好奇心を満たしてくれる非常に面白い書籍でした。 -
堺屋太一さんが、日本の文化や慣習(思考や信念、考え方、といった方がいいのかな)がどのように出来上がってきたかを、古くは聖徳太子にさかのぼって、日本の代表的な12人のエピソードを紹介することで振り返る内容です。
なぜ日本は無宗教(厳密に言うとそうではないですが、何でもありなところ)となったのか?
日本人のビジネスマンにいわゆる会社人間が多いのはなぜか?
官僚主導の国になってきたのはなぜなのか?
そんなようなことが人を追いながら描かれています。
今日本は転換期ということをよく言われていますが、またこの12人に加わるような大きな価値転換が来るのかな。
1億人総中流という時代は、もはや終わってしまったようですものね。
日本史総ざらいという意味でもオススメです。
ただ、字が小さくて量が多いので途中でめげそうになりました(笑)