おとぎ話の生物学: 森のキノコはなぜ水玉模様なのか?
- PHPエディターズ・グループ (2007年4月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569691855
感想・レビュー・書評
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おとぎ話に出てくる生き物や植物を生物学的視点や、時には民俗学的視点から解説してくれます。分かりやすくてとても面白い。他のおとぎ話、昔話も解説してほしいです。
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おとぎ話に登場する動物、植物、生物学的な事象を「なぜそうなのか」真面目に検証する面白い本。著者の本名は稲垣栄洋先生。あの「生き物の死にざま」で有名な稲垣先生です。面白くないわけがない。多方面にわたる知識をおとぎ話の生物学に全振りしてくれています。個人的に印象に残ったのは、タヌキ汁は臭くて食べられたもんじゃない、というタヌキ汁。確かに、タヌキ汁は臭いと聞いていたのですがこれがアナグマだと話が違う。タヌキもアナグマも収斂進化でよく似た動物であり実はタヌキ汁はアナグマ汁であったのでは、という説明が非常に納得しました。タイトルは異なりますが文庫でも発行されているようです。
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「ファンタスティック生物学」
おとぎ話に登場する植物や動物たちは、伊達に語り継がれてきたのではない。娘の「さっちゃん」の「どうして?」に答える形で、お父さんが彼らの存在の意味を生物学的に解明する十三夜。
おとぎ話に登場する水玉模様のキノコは代表的な毒キノコ・ベニテングダケ。夢見る乙女の幻想の世界はこのキノコの仕業?!哺乳類は体の大きさによって時間の長さが変ることから推定すると、竜宮城から戻ってあっという間に年寄りになった浦島太郎はかの地では身長68メートルの巨人となっていた?!などなど、可愛い娘のさっちゃんの投げかける問いに、著者は至って科学的な考察を加えていきます。
荒唐無稽といえばいえなくもないんだけれど、こういう切口のおとぎ話も興味深いです。何より楽しいのは、これらの疑問を糸口にして、その想像や考察が広がりを持って語られていくところです。
例えば第二夜。『ウサギとカメ』の物語から、カメの勝算にウサギの敗因を医学的見地から推察し、負けたウサギは物語の世界では泣いていることが多いが、そんなウサギの目が赤いのは何故か、と続いていきます。
ここにも実は物語があって、その昔兎には角があり鹿には長い耳があったそうです。鹿に角をうらやましがられた兎は、角と耳とを交換してあげるのですが、角を気に入った鹿が約束を破って角を返してくれず、悔しさに泣き明かした兎は目が真っ赤になってしまったということです。これが「兎に角」そう、「とにかく」という言葉の始まり…なんて具合に続いていきます。あっ、もちろん「生物学」がテーマなので、兎の目が赤い本当の理由もちゃんと説明されていますよ。
おとぎ話を生物学的に検証するという趣旨の本書なのですが、いかに科学的に切り込むとはいっても、要は想像力なんですね。最終的に相当の想像力無くしてはこれだけの考察は成し得ないんじゃないかと思います。
そんな著者の(いや「さっちゃんの」と言うべきか?)想像力に舌を巻いたのが、『エビの腰はなぜ曲がったか』を検証する、第十一夜「世界で一番大きい生き物はなに?」。
「世界で一番大きいと思ってる大蛇が、日陰で休んでいたらものすごい風が吹いてきて、日陰だと思ったのはとてつもなく大きいワシのはばたきだった。自分こそ世界一大きいと思ったワシが海から突き出ていた棒に止まって休んでいたら、それは大きな大きなエビのひげの先だった。そのエビが大きな山のほら穴の中で眠っていると、実はそこは大きな大きな魚の鼻の穴で、魚がくしゃみをするとエビは吹き飛ばされて岩に腰を打ち付け、以来エビの腰は曲がってしまった。」というスケールの大きなほら話。
著者はさっちゃんとほら話の続きを考えていくことにします。
「自分が世界一大きいと思った魚が泳いでいくと、ぼこぼこした岩場がありました。岩場だと思ったのは、イカの足でした」
「イカが歩いていくと、大きなお山がありました。山だと思ったのは、大きなダンゴムシでした」
「ダンゴムシが歩いていくと、大きな手につかまってしまいました。つかまえたのは人間の男の子でした」
さっちゃんの想像力にはまだ先がありました。
「男の子が歩いていると、透明なものがしゃべっていました」
さて、さっちゃんの行き着いたものとは?
気になる方はぜひ本編でどうぞ。
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昔話や御伽噺を生物学的な目で読む一冊。
コレを子供に読み聞かせれば、小憎らしい利発な子に成長すること請け合いです。 -
これは面白い。一読の価値有り。ただ、物知りな人には物足りないかもしれないです。自分は知らないことだらけだったのでずんずん読めました。キノコの凄さよ……
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おとぎ話を生物学的に解説していく本
おとぎ話なんだから
そりゃ不思議なことも矛盾してることもあるよ
って思いながら読みはじめたんだけど
ほんとうに上手に解説してくれて大変おもしろかった
もっといろんなおとぎ話のも読んでみたい -
おとぎ話の内容を歴史的に解説するだけでなく、生物学的なコメントも付け加えている。サメをワニと呼んでいたこと、オオカミの歴史は収穫だった。
・丑寅の方角(北東)は邪気がやってくる鬼門とされ、この方角から騎馬民族に攻められた中国から伝えられたもの。京都では比叡山延暦寺、江戸では上野の寛永寺が建てられた。鬼が牛の角頭に虎皮のパンツをはいているのも、丑虎のイメージに由来する。
・山陰地方では、サメのことをワニと呼んだ。現在でも、山間部ではワニ料理やワニの刺身がある。
・白亜紀末期に、アルカロイドなどの毒を持つ植物が現れ、これと同時に草食恐竜が激減した。
・オオカミは田畑を荒らすシカやイノシシなどの害獣を防いでくれる益獣で、語源は大神。人々は、オオカミを祭った神社に干し魚を供えてオオカミをおびき寄せ、匂いが付いた石を拾って帰った。稲荷神社に油揚げを供えるのも、田畑のネズミを餌とするキツネをおびき寄せるため。江戸時代中期に外国から狂犬病が持ち込まれ、オオカミにも蔓延した。文明開化によって牛や羊を飼うようになると、家畜を襲うオオカミは害獣とみなされるようになった。さらにジステンバー伝染病が持ち込まれたために数が減少し、明治38年に絶滅した。
・植物が蒸散によって水を吸い上げることができる高さは130〜140mで、アメリカ西海岸のセコイアメスギ(レッドウッド)の高さ120mとほぼ一致する。
・マダケは、かつて南九州で見られたのみで、竹林が全国に広がったのは中世後期以降。モウソウチクは、18世紀に琉球から薩摩に伝えられた。 -
この類の本、好きなんだよね。
個人的には浦島太郎についての仮説がいちばん好きだけど、どれも基本的には楽しめた。
あと、娘を持つ父親として、共感できるとこも多々あり。 -
誰もが知っているおとぎ話を生物学の視点から見直していく。
読みやすい