- Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569697130
作品紹介・あらすじ
「おにぎり食べたい」-日記にそう書き残して孤独死した男性は、数カ月前まで「生活保護」の対象者だった。北九州市で続発する餓死事件。役所が繰り広げる水際作戦。一方で、「怠け者が生活保護を食い物にしている」という報道も後を絶たない。明らかにされるワーキングプアとの根深い関係-。「生活保護年収四〇〇万円相当(四人世帯)>ワーキングプア」という衝撃の事実からあぶり出される真実とは?三五〇〇件以上の相談に応じてきた専門家が、生活保護の現場から格差是正の処方箋を示す。
感想・レビュー・書評
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マイナスイメージを伴う生活保護について、問題点と今後への提言をまとめた良書。偏りのない視点と平易で論理的な文章に好感を持った。現状の被害者は、自ら声を上げられず機会の平等を奪われる子供たちだという指摘に胸が塞がる。広く読まれてほしい。
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内容は、生活保護のケースワーカーの経験があり、現在児童相談所に勤務しながら、「生活保護110番」というボランティアウェブサイトを運営する著者による、生活保護の現場における実態や課題を描いたもの。
マスコミにありがちな一面的な糾弾ではなく、行政職員による自己弁護でもなく、中立公平な視点で現場の状況を説明している。 -
新聞やニュースよりも詳しく実態がわかる。
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貧困に関する支援は生活保障と自立支援。「希望のさいたま方式」..いい響き。ほっとポットの支援活動には拍手です。
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おわりに、に書かれていたことが心に響いた。
困っている人に、ただ自立を促すだけではなく、生活保護という制度を紹介する、まずは気持ちの面で安心、安定してもらう。そこからのスタートだと思う。 -
タイトルとは裏腹に、全然「VS」な話ではない。
現在の生活保護の現場での運用が、貧困に苦しむ若い世代を、引いてはその子ども世代を救えないでいる、という強い問題提起。
ドラッカーの著作から、非営利組織に最も重要なものは『使命』である、と引いている。
生活保護法第1条に立ち返り、生活保護制度の使命は『生活保障』+『自立支援』であると主張する。
そして、ブライトスポットである『さいたま方式』の事例を紹介している。
国民全体が、生活保護制度は保護が必要な人たちの自立を支援するためにある、ということをもっと理解してほしいと思った。 -
生活保護を「入りやすく出やすい」制度にする
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低所得の人々の想像以上に凄惨な生活の様子が伺える。普段の何気ない生活も親に感謝しなければならないと思った一冊。
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生活保護。
その目的は「生活保障」ではなく、「自立支援」ではなければならない。現行では、あげたらあげっ放しで、死ぬまで放し。
ただ、線引が難しいのが、「自己責任」と断じられてしまう場合と「自助努力の認定範囲」。
例えばギャンブル依存症を病気と捉え、その自立支援に税金である生活保護を当て、自立支援をさせるのか。いや、ギャンブル依存症なんてのは個人の嗜好の怠慢で、生活保護なんてまかりならん、となるのか。
極例でもなく、グレーラインが実に複雑だ。
本書後半では、その解決案が提示される。
問題提起として、これらの問題にはやはり先入観がつきまとい、報道のあり方も問われる。
そして、貧困ビジネスの温床になりやすいのも頷ける。
個人だけではなく、国として立ち上がらなければ、解決できないだろうな。短期でみるか中長期で見るか。
50年、100年先の日本を憂う政治家がおらず、目先の既得権益に躍起となる政治屋ばかりでは難しい。
行政や地方自治体の協力や姿勢のありかた、生活保護を受ける人々や、法解釈そのもの、問題点、解決案、とてもよくまとまった一冊でした。 -
2008年11月19日 11:33
格差社会と叫ばれているけれど
実際のところは「格差」ではなく、「貧困」問題なのだという主張をきき
それではその貧困ってどういうものなのだろう、と興味を持った
生活保護の実態とそれを利用する人々の現状
このニホンで餓死するヒトがいる現実
どれも私たちの日々の生活からは程遠く
私自身も「自己責任じゃないのか?」という疑問を持っていたが
ケースワーカーとして働いた経験を持つ筆者が主張する
「貧困家庭の子どもにも『自己責任』といえるのか?」という問いには簡単に答えることが出来ない
読み応えのある本ではあったが
最後の提言で「プチ生活保護のススメ」として
「受給しやすく自立しやすい生活保護制度」を提唱しているが
実際問題はそんなに簡単ではないだろうなぁと思った